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【お知らせ】

 

 このたび、本年4月1日付けで、洪水企画より、詩集「ゴシップ・フェンス」を刊行いたしましたのでお知らせいたします。

 この詩集は、私が洪水企画から出版した4冊目の詩集です。

 絶対芸術、絶対言語といった観点から、自立した言葉の世界をとことん追求した詩集です。

 一見風変わりで難解な詩篇が並んでいるように見えるかもしれませんが、読み進むうちに読者の感覚にしっくりくることを確信しています。 

 どうぞご覧ください。

 お問い合わせは、洪水企画の池田康代表、または私(南原充士)あてお気軽にどうぞ。


                                       平成24年3月7日

                                          南原充士


【お知らせ】_f0037553_18235736.jpg

# by nambara14 | 2012-03-07 14:25 | 詩集「ゴシップ・フェンス」 | Comments(0)

曇りの日の翌日


      曇りの日の翌日



曇り空からほとんど日差しが漏れることのなかった日から
冷たい雨の降り続く日へと移ればこの雨がいつやむのかが気にかかる
季節外れと言えば軽くやり過ごせる気がしてそうつぶやいてはみる
明日の天気予報を確かめてみれば雨は残るが気温は上がると

傘の群れを眺めればみな黙々と先を急ぐ中で
ひときわ赤い傘を差し原色の服を着た二人連れが声高に話すのが
画面から抜け出して前面にクロースアップされてくる
陰気な空模様など吹き飛ばせうつむいてとぼとぼなんてつまらない

そのそばを自転車が通り過ぎかすかにはねがあがれば
こんちくしょうとばかりに唇をとがらせて睨みつける
あんちくしょうめがおろしたてのスカートに泥をかけた
自転車は見えなくなるが残像はなかなか消えない

毎日がショータイムだから天気なんて問題じゃない
雨降りゃ濡れて晴れりゃ焼ける曇りも風もあられや雹も
弱気を出しちゃあ付け込まれるから空元気だっていいんだよ
くすんだ背景を押しやって前へ前へと飛び出してくる贋天使
# by nambara14 | 2012-03-05 14:16 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

雪の日の翌日


      雪の日の翌日


雪が降った日の翌日の都会の道には
消え残る雪が片隅に固められている
早足で歩いていく大人たちをしり目に

子供たちは 雪で作ったボールを投げあったり
アイスホッケーの真似をしたり
雪を踏みつけたりしている

ひさしぶりに河口に行ってみると
かもめのカップルがのんびりと
流れにたゆたい もぐったり 浮いたりしている

うすぐもりの空から零れ落ちる日差しが
耐え続けた季節の終わりを
たしかに告げるときには

草が芽吹き 小鳥が飛んできて
花の露を吸い 公園に連れられてくる犬も
飛び回り 飼い主も引きずられて走り出す
# by nambara14 | 2012-03-01 15:08 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

歌前


    歌 前


疑え すべてを
歌う前に ひとつの
憎しみを 捨てて

肯え すべてを
たった ひとつの
喜びを 見つけて

浦島 すべての過去を
呼び出す前に ひとつの
思い出を捨てて

やすらえ すべてのひとよ
甘い汁と苦いしずくを
拭い去ったあとで 


# by nambara14 | 2012-02-08 13:13 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

同朋



    同 朋


コントラバスを弾いているひとは
深い胸を抱いている
フルートを吹いているひとは
強い風を起こしている

楽団が作り出す音は
遠い意志を再現している
聴くひとは生まれくる瞬間に
めいめいで立ち会っている

流れ行く雲が虹の橋を渡る
きらめく光がプリズムを通り抜ける
空から降ってくるぬくもりを感じる
黙って目の前に流れる時間を見る

なにかを感じ合おうとする
内的な欲求が引き寄せあう
まったく相容れないと思った同士が
今同朋のように居合わせている



# by nambara14 | 2012-01-28 10:43 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)