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ソネット 45


       W.シェークスピア


ほかの二つ、つまり軽い空気と浄める火は

わたしがどこにいようと あなたとともにある

第一はわたしの思考、第二はわたしの欲望だ

これらは迅速な動きによって行ったり来たりする、

なぜなら よりすばやいこれらの要素が

わたしの愛のあなたへの軽やかな使者として行ってしまうと

四つの要素でできているわたしの命は 二つの要素だけになり

メランコリーに押しつぶされて死にそうになる、

それらの敏捷な使いがあなたの許から戻ってきて

あなたがすこぶる健やかだったという報告を聞くと

彼らがすぐまた使いとして出発するのだとしても

わたしの命の構成要素が健康を回復するその時までは、

これを聞くとわたしは嬉しくなる、だがたちまちその喜びは失せてしまう

わたしはかれらをまた使いに出すので、すぐさま悲しくなるからだ。


Sonnet XLV


     W. Shakespeare

      

The other two, slight air and purging fire,

Are both with thee, wherever I abide;

The first my thought, the other my desire,

These present-absent with swift motion slide.

For when these quicker elements are gone

In tender embassy of love to thee,

My life, being made of four, with two alone

Sinks down to death, oppressed with melancholy;

Until life's composition be recured

By those swift messengers return'd from thee,

Who even but now come back again, assured

Of thy fair health, recounting it to me:

This told, I joy; but then no longer glad,

I send them back again and straight grow sad.



by nambara14 | 2019-02-24 16:36 | 翻訳詩(シェークスピア) | Comments(0)


ソネット 44


W. シェークスピア


もしわたしの体が思考でできていたなら

傷つくような長距離もわたしの旅を妨げることはないだろう

それだったら このはるか離れた場所からあなたのいるところまで

いくら遠くてもわたしは行くことができるだろうし

わたしの足があなたのいるところから最も離れた場所にいたとしても

敏捷な思考はそれが行きたいと思ったところへ

海を跳び越え山を跳び越えてたちまち到着することができるからだ

だが、ああ!わたしは はるか遠くに行ってしまったあなたのもとへ

跳んでいける思考ではないのだと思うと

その思考はわたしを死に至らせる

実際わたしは土と水とでできているので

わたしは時の気まぐれに従って苦しむしかない

そんなに鈍臭い要素からわたしはなにも受け取ることはなく

ただわたしたちふたりの悲しみの印である涙がこぼれるだけだ



Sonnet XLIV


        W. Shakespeare


If the dull substance of my fleshwere thought,

Injurious distance should not stopmy way;

For then despite of space I wouldbe brought,

From limits far remote, wherethou dost stay.

No matter then although my footdid stand

Upon the farthest earth removedfrom thee;

For nimble thought can jump bothsea and land

As soon as think the place wherehe would be.

But ah! thought kills me that Iam not thought,

To leap large lengths of mileswhen thou art gone,

But that, so much of earth andwater wrought,

I must attend time's leisure withmy moan,

Receiving nought by elements so slow

But heavy tears, badges of either's woe.



by nambara14 | 2019-02-18 12:58 | 翻訳詩(シェークスピア) | Comments(0)


ソネット 43


W. シェークスピア


わたしが眠っているときわたしの目は最もよく見える

なぜなら昼間はずっとさほど注目されない物ばかりを見るからだ

だがわたしが眠るとき夢の中でそれらはあなたを見る

そして闇の中で輝き闇を明るく照らす

そしてあなたの影は周りの影たちを明るく照らす

あなたの影は眠れる目の中でかくも明るく輝くが

あなたの実体は 晴れた昼に それにもまして明るいあなたの光によって

どんなにか幸福な様子を示すだろう

深夜にあなたの美しく不完全な影は

深い眠りの中で眠れる目にとどまるが

日の光の中であなたを見ることによって

わたしの目はまあどんなにか祝福されるだろう

わたしがあなたを見るまではあらゆる昼は夜のように見え

そして夢があなたをわたしに示すとき夜は明るい昼のように見える



Sonnet XLIII


      W.Shakespeare


When most I wink,then do mine eyes best see,

For all the daythey view things unrespected;

But when I sleep,in dreams they look on thee,

And darkly bright,are bright in dark directed.

Then thou, whoseshadow shadows doth make bright,

How would thyshadow's form form happy show

To the clear day withthy much clearer light,

When to unseeingeyes thy shade shines so!

How would, I say,mine eyes be blessed made

By looking on theein the living day,

When in dead nightthy fair imperfect shade

Through heavysleep on sightless eyes doth stay!

All days are nights to see till I see thee,

And nights bright days when dreams do show thee me.



by nambara14 | 2019-02-12 20:00 | 翻訳詩(シェークスピア) | Comments(0)

最近の詩集評(14)


吉田博哉詩集『残夢録』。生と死のはざまで生きる人間の諸相を独特の語り口で生き生きと描いた現代の説話文学。切なさと滑稽さとエロスと暴力とがないまぜになり、仮構と現実が一体となって読者に迫ってくる。死への恐怖も巧まざるユーモアによって一抹の救いを見出すようだ。見事な出来栄えの詩集だ。

山田兼士詩集『羽の音が告げたこと』。今詩に最も広く深く取り組んでいる著者のディアローグを意識した詩篇は、自分との対話、文学作品との対話、音楽や美術との対話で構成され、あふれる詩想がさまざまな詩形に結実している。特に「喜びも悲しみも安乗崎」の美しい叙景と家族愛が読者の心に強く迫る。

細田傳造詩集『みちゆき』。自在な語り口はますます芸域を広げて読者を惹きつける。普通はタブー視される領域にまで言葉が入り込むのでアウトロー的な爽快感がある。家族も愛も性も犯罪も戦争も生死も噺家のように語られる。「フンコロガシ」など凄みに満ちている。意外性に富んだみちゆきが魅力だ。

甲田四郎詩集『大森南五丁目行』。大森で和菓子の店を営みながら詩を書き続けてきた著者。父や母や妻や息子のこと、疎開のこと、お客のこと、商店街のこと、原発のことなど、これまでに自分が感じたことや考えを率直に綴っている。年齢とともに体が動かなくなり店を閉めた今、新しい日が始まったのだ。

壱岐梢詩集『ここに』。ジュニア・ポエム双書の一冊だが、内容は子供向けだけでなく大人の立場で書かれた詩も多い。詩集全体にわたって繊細な感性がノスタルジックな詩空間を作り上げるが、特に母が亡くなったことを書いたタイトルポエムは金柑に寄せられた悲しみが見事に表現されていて感動的だ。

平野晴子詩集『花の散る里』。亡くなった夫との思い出はこんなにも重く切ないものかと読む者の心も息苦しくなるようなインパクトの強い詩篇が並ぶ。暴力的な表現はどうしようもない悲しみを紛らすための意匠でもあるだろう。詩を書くことを通してその心の痛みが少しでも安らぐことを祈るばかりである。

谷川俊太郎詩集『普通の人々』は、普通の人々を描いているが、まったく普通じゃない内容だ。人名をたくさん使って様々な人物を登場させる手法はありそうであまりない意外性があって「やられた!」と感じた。それにしても言葉がどんどん詩になってしまう天性は本人にとって戸惑いであるかもしれないね。

秋川久紫詩集『フラグメント 奇貨から群夢まで』。経済、会計、IT用語が美術や音楽と融合し、スイーツによって馥郁たる香りを放つ詩篇。著者のダンディズムと矜持そして効率性偏重の世相に頑固なまでに抵抗する姿勢がアフォリズムやセリフの形式での超絶技巧の詩群に結実した。装幀も一級の美術品だ。 山田兼士詩集『孫の手詩集』。ここまで孫への愛情を素直に表現することは意外と勇気がいる。誕生から一歳になるまでの孫ハルの成長を、祖父の立場からまたハルの立場に立って孫の手の写真を添えて描き出した21篇。俊太郎やユゴーや光晴の詩と呼応した視線の広がりが家族愛に更なる魅力を加えている。

くろこようこ詩集『ようこ つれづれ』。静かに世界を観察する画家の視線は、対象物の色彩と形を正確にとらえ、心象風景と重なっていく。どこか虚しさの漂う情景描写の中に自らのゆらめく思いが水割りグラスに水中花となって咲いてる。何があっても生きるしかないという人間の心情が確かに感じ取れる。

結城文詩集『ミューズの微笑』。ヨーロッパへの旅を通じて感じたことを丁寧な情景描写によって書き留めた詩篇。海陸空にまたがる自然描写は美しく、特にアイスランドで見たオーロラはローマ神話や北欧神話を連想させる。過剰な表現を抑えた著者の深い陶酔の思いがミューズの微笑となって読者に伝わる

by nambara14 | 2019-02-11 19:54 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)


ソネット 42


        W. シェークスピア 


あなたが彼女を手に入れたことはわたしにとって唯一の悲しみとまでは言えないが

それでもわたしが彼女を真剣に愛していたということは言える

彼女があなたを手に入れたことは悲しみの極みであり

愛を失ったことはもっと痛切なことだ、

愛の罪びとたちよ、わたしはこうしてあなたたちを許そう

あなたはわたしが彼女を愛するがゆえに彼女を愛し

そして彼女は わたしのためにあなたを愛し

わたしのためにわたしの友に自らを受け入れさせることで わたしを苛む、

わたしがあなたを失ったとすれば わたしの損失はわたしの恋人の利得となるだろう

わたしが彼女を失うことで わたしの友はその損失を見出した

二人は互いを見出し、わたしは二人とも失う

そして二人はわたしのためにわたしに苦しみを与える、

だがここには喜びもあるのだ、わたしの友とわたしは一体だ

甘い追従!そして彼女はただわたしだけを愛する。


Sonnet XLII


        W. Shakespeare


Thatthou hast her it is not all my grief,

Andyet it may be said I loved her dearly;

Thatshe hath thee is of my wailing chief,

Aloss in love that touches me more nearly.

Lovingoffenders thus I will excuse ye:

Thoudost love her, because thou know'st I love her;

Andfor my sake even so doth she abuse me,

Sufferingmy friend for my sake to approve her.

If Ilose thee, my loss is my love's gain,

Andlosing her, my friend hath found that loss;

Bothfind each other, and I lose both twain,

Andboth for my sake lay on me this cross:

But here's the joy; my friend and I are one;

Sweet flattery! then she loves but me alone.



by nambara14 | 2019-02-04 19:47 | 翻訳詩(シェークスピア) | Comments(0)