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<   2016年 08月 ( 15 )   > この月の画像一覧

台風


台風の 推定位置は 事後確定

予報円 大きくなったり それたりす

近づけば うなる雨風 籠り聞く

遠ざかる 進路を見れば 安心よ

蒸し暑い 青空だけど 仰ぎ見る





by nambara14 | 2016-08-29 16:43 | 五七五系短詩 | Comments(0)

民間療法


体の力を抜いて軽く手をぶらぶらさせる
目をつぶって十数え 目を開いて十数える
なにかを思いそうになったら首を左右に振る
気持ちがめげそうになったら空手のまねをする
なにかが見えそうになったら目をつぶり
それでも見えそうになったら眠り込む

しょぼくれた老人として目がさめて
鏡を見たら若者だったなどということはない
家族そろって団欒の最中に停電して
電気がついたときにはだれかがいなくなっている
悲しい思いがぶりかえすが
いなくなったひとは蘇らない
最後に電話で話した声はろれつがまわらなかった

さまざまな断片が無造作に投げ捨てられている庭に
雑草が茂り無人の古い家は塵埃がこびりついている
すべては失われたと叫んでも
害を加えるものほどはびこって
空洞をびっしりと埋めてしまう
自分がいなくなることは自分には重大だが
巨大すぎる宇宙の中では芥子粒ほどの重さもない

世界はだれも必要とせず
なぜ生まれてきたかはわからない
あらゆる存在は玉石混交で
あるときは地上にさらされ時には洪水に流され
海中深く沈んでついに浮かび上がらないこともある

体の力を抜いて軽くジャンプする
体をそらし回し横に倒して最後は深呼吸
なにかを思いそうになったら思うに任せ
なにかが見えそうになったら見えるに任せる
腹が減れば食べ眠くなれば寝る
それでもどうしようもなく落ち込んでしまったら
あきらめて時間が経つのを待つ




by nambara14 | 2016-08-29 11:22 | 新作詩歌(平成28年) | Comments(0)

淡々


蝉落ちて 身じろぐ身をば 放ちやる

迷いいる 台風の道 辿るごと

静心 なくてある身に 暮れる夏 

刻々と 首は切られて 落ちる花 

涙など 見ぜずに夏は 別れ行く


by nambara14 | 2016-08-27 20:41 | 五七五系短詩 | Comments(0)

夏の影(追悼)


雷の とどろく時に 息絶えし 縁者の夏は 燃えつきて去る

蝉しぐれ 木々の枝より 響くとき ひとつの影が 天へと昇る

悲しみに 思い至れば 影深く 言葉もなくて わが手に取る手

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  義父、仲島賢一、平成28年8月20日、逝去。享年89歳。




by nambara14 | 2016-08-20 20:03 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)


      ディラン・トマス小詩集について



 英語の詩をそれほど多く読んだわけではないが、若いころいくつかの英語の詩集を手に取ったなかでは、ディラン・トマスが心に残っていた。

 何十年も経って、最近ふとしたことから、ディラン・トマスの詩を翻訳してみようと思い立った。

 彼は1914年生まれで1953年没とあるから、活躍したのはずいぶん前のことになる。

 しかし、今読んでも「現代詩」のようなインパクトを感じることができる。

 言葉の使い方が独特でイメージもとらえにくいので、翻訳するのは容易ではないが、不思議な魅力があるから、挑戦してみたくなるのだろう。

 とりあえず既刊詩篇のうちから16篇訳してみたが、今後も折に触れて訳してみようと考えている。


―――――――――――――――――――――――――――――――


ディラン・トマス 小詩集


           南原充士 訳


   目 次


.プロローグ

2. 緑のヒューズを通って花を咲かせる力が
3.
十月の風が傷めつけるときはとりわけ ...
4. 愛の最初の熱狂から疫病へ
5. はじめに
6. おれは眠りと仲良くなった
7. おれは自分の起源の夢を見た
8. 複雑なイメージの中でおれは
9. あなたはおれの父親になってくれませんか?

10.じっと待て、カッコーの月のこれら古代の分よ
11. その文書に署名をした手は

12.そして死に支配させはしない

13.祈祷者の会話

14.十月の詩

15.安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで

16.エレジー

.

――――――――――――――――――――――――――――――――――

(注)上記の詩篇の並べ方については、An Aldine PaperbackのMiscellany Oneを参考にした。


  お読みになった方がいらっしゃったら、ぜひ感想やご意見をお寄せいただきたい。

 よろしくお願いいたします。


なお、ディラン・トマスについては、こちらをご覧ください。

 →ディラン・トマス


     

 


by nambara14 | 2016-08-19 17:48 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)



      プロローグ


                 ディラン・トマス

                     南原充士 訳


神が疾走させてきた夏の終わりに

急流のサーモン色の太陽のもとで

いま速度をゆるめていくこの日

チッチという声と果実の絡まり合う

危険な岩々の上の

海に揺られるわが家で

森の躍動する足元の

泡、笛、ひれ、羽軸

あの魚売り女の十字架のある

泡の浮くヒトデの砂のそばには

カモメ、ワカバト、ザルガイ、カタツムリ

カラスのように真っ暗なあちらのほうには

日没のネットに跪く雲にタックルされる人々

天国の近くにいる鵞鳥、突き刺している少年たち、

七つの海について語るサギそして貝たち

高くて乾いた藁の茎のように

宗教的な風をつかまえる塔のある

九つの日の夜の都市から離れてある永遠の水域

騒がしい中だけれどもおれは

きみたち異国人のために歌う

(歌は燃えるようで装飾的な行為であるが

世界の変わり目にある森の

鳥たちの火よ

わが白鳥のために音を広がらせよ)

海にさらされた葉っぱから

それは木の葉のように舞い落ち たちまち

真夏の夜へと砕けて不死のものとなる

海の方ではサケが日光のかけらを飲んだ

そしておれがいかに脊椎を持った人間であるかをきみたちに知らせるために

おれがいろいろな形をしたものをたたき切ると

愚かな白鳥が軽く波立つ湾のたそがれを青くしてしまう

さらにこの星が誇るものはと言えば、吠えられた鳥、

生まれた海、裂かれた人、祝福された血

聞け:おれがトランペットで場所を知らせるから

魚からにぎやかな丘まで!見よ:

洪水が始まるから

愛情の限りを尽くして

おれは大きな音を立てる箱舟を造る

恐怖の噴水の頂点から

読み取れる怒りが、おやまあ、

融けて山のようになって

傷で動けず

羊のように白いうつろな農場を流れすぎる


わが腕の中にあるウェールズでは

ほー、そこで、城を警備している

おまえ 歌の王者ふくろうよ

月光のようにひらひらした走りや跳躍

小さな谷はシカを囲い殺した!

ハロー、測量された丘の上で

おお、ほーほー鳴く、ウェールズのうやうやしいミヤマガラスと

同じぐらい黒い色をしたわが首輪のついた鳩が

森の称賛を求めてくうくう鳴く

その巣からブルーノートを月の光にかざして

ダイシャクシギの群れへと送る

ほー、騒がしい一族よ、

おしゃべりなケープの上の嘴には

悲しみを伴ったアガペー、

ヘイ、馬の背の丘には、警官を

追い払う野兎!それは

この狐の灯の中で

おれが打ったり叩き切ったりするときに

わが洪水用の舟がカンカン立てる音を聞く
(わが騒ぎといかさまのためのアンヴィルの衝突、

舌のあるホコリタケの上のこの調べ)

だが神の造ったでこぼこした土地の上の

仲良しの動物たち

(神の獣性に敬礼!)

しーっ、イノシシの背の森で安らかに眠る獣たち!

乾草の山のあるうつろな農場が

大量の水流の中で

コッコと鳴き しがみつく

そして小屋の屋根では雄鶏とカラスの戦争だ!

ひれのある、皮のある、羽のある隣人たちの王国よ

来たれ、湾にあるわがパッチワークの箱舟と月の光を飲み込むノアへと

皮とうろこと毛とともに

羊と教会の おぼれた荘重な鐘だけが

日が沈むとき貧しい平和を騒がせる

そして暗闇がすべての聖なる野を覆う

それからおれたちだけで馬に乗って出かけよう

ウェールズの星のもとに

叫べ、多くの箱舟よ!

冠水した土地を通って

それらの愛する人々を一緒に乗せて

それらは丘から丘へと木の島のように移動するだろう

ハロー、笛を持った舳先のようなかたちのわが鳩よ!

あ ほい、老いた海洋生物のような足をもった狐よ、

オスのシジュウカラとびまん性軸索損傷のネズミよ!

おれの箱舟は太陽のもとで歌う

神が疾走させてきた夏の終わりに

そして洪水が今花盛りだ






Prologue


- Poem by Dylan Thomas


This day winding down now
At God speeded summer's end
In the torrent salmon sun,
In my seashaken house
On a breakneck of rocks
Tangled with chirrup and fruit,
Froth, flute, fin, and quill
At a wood's dancing hoof,
By scummed, starfish sands
With their fishwife cross
Gulls, pipers, cockles, and snails,
Out there, crow black, men
Tackled with clouds, who kneel
To the sunset nets,
Geese nearly in heaven, boys
Stabbing, and herons, and shells
That speak seven seas,
Eternal waters away
From the cities of nine
Days' night whose towers will catch
In the religious wind
Like stalks of tall, dry straw,
At poor peace I sing
To you strangers (though song
Is a burning and crested act,
The fire of birds in
The world's turning wood,
For my swan, splay sounds),
Out of these seathumbed leaves
That will fly and fall
Like leaves of trees and as soon
Crumble and undie
Into the dogdayed night.
Seaward the salmon, sucked sun slips,
And the dumb swans drub blue
My dabbed bay's dusk, as I hack
This rumpus of shapes
For you to know
How I, a spining man,
Glory also this star, bird
Roared, sea born, man torn, blood blest.
Hark: I trumpet the place,
From fish to jumping hill! Look:
I build my bellowing ark
To the best of my love
As the flood begins,
Out of the fountainhead
Of fear, rage read, manalive,
Molten and mountainous to stream
Over the wound asleep
Sheep white hollow farms

To Wales in my arms.
Hoo, there, in castle keep,
You king singsong owls, who moonbeam
The flickering runs and dive
The dingle furred deer dead!
Huloo, on plumbed bryns,
O my ruffled ring dove
in the hooting, nearly dark
With Welsh and reverent rook,
Coo rooning the woods' praise,
who moons her blue notes from her nest
Down to the curlew herd!
Ho, hullaballoing clan
Agape, with woe
In your beaks, on the gabbing capes!
Heigh, on horseback hill, jack
Whisking hare! who
Hears, there, this fox light, my flood ship's
Clangour as I hew and smite

(A clash ofanvils for my
Hubbub and fiddle, this tune
On a toungued puffball)
But animals thick as theives
On God's rough tumbling grounds
(Hail to His beasthood!).
Beasts who sleep good and thin,
Hist, in hogback woods! The haystacked
Hollow farms in a throng
Of waters cluck and cling,
And barnroofs cockcrow war!
O kingdom of neighbors finned
Felled and quilled, flash to my patch
Work ark and the moonshine
Drinking Noah of the bay,
With pelt, and scale, and fleece:
Only the drowned deep bells
Of sheep and churches noise
Poor peace as the sun sets
And dark shoals every holy field.
We will ride out alone then,
Under the stars of Wales,
Cry, multitudes of arks! Across
The water lidded lands,
Manned with their loves they'll move
Like wooden islands, hill to hill.
Hulloo, my prowed dove with a flute!
Ahoy, old, sea-legged fox,
Tom tit and Dai mouse!
My ark sings in the sun
At God speeded summer's end
And the flood flowers now.


by nambara14 | 2016-08-19 16:03 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)



エレジー


             ディラン・トマス

                 南原充士 訳 

 

死ぬにはプライドが高すぎたかれが一文無しで盲目になって死んだ

最悪のやり方をかれは変えようとはしなかった

かれの小さなプライドの中では勇敢だった 冷たくて親切な男


その最悪の日に、おお、とわに、草の下に、愛のうちに、

ついに最後の交差した丘の上にかれが軽やかに横たわることを

そしてそこで成長することを祈る


多くの人々の中では若いほうだったが、決して迷ってしまうこともなく

その死後数えきれないほどの日数が経過した

結局かれは母の胸にあこがれていたということではあったのだが

どちらが休息でどちらが埃だったのだろう、そしてやさしい大地において

盲目にして呪われた 死の最悪の正義

かれにはいかなる休息も与えられないが、父親を与えられそして発見されるだろう


おれは、部屋の中、かれの盲目のベッドのそばにしゃがんで祈った、

静まり返った家で、正午の一分前に、

夜に、そして光の中で。死者の川が


おれがつかんだかれの哀れな手に静脈のように流れた

そしてかれの見えない目を通しておれは海のルーツの方を見た

(苦悩に満ちた四分の三盲目の老人

あのお方とかれは決して決しておれの心から出ていくことはないだろうと

叫ぶほどおれはプライドが高くはない

かれの骨全体が泣く、痛み以外は貧しく

かれは純真だったので、死ぬことを恐れた

かれは神を嫌ったが、かれという人間は単純だった

燃えるようなプライドを持った勇敢で親切な老人だった

その家の家具はかれのものだった、かれが所有していたかれの本

赤ん坊のころでさえかれは泣かなかった

ましてや今は泣くことはなかった、かれの秘密の傷のことを除いては

かれの目から最後の光が滑り出て

ここで大空の光にとけこむのをおれは見た

老人はおれとともにいる、はたしておれはどこに行くのか

悪の世界が雪のように降ってきた

息子の目の牧草地を歩きながら

かれは死ぬときに泣いた、


息もせず世界が消え失せてしまうときの球体の最後の音を

最後に恐れながら、

泣くにはプライドが高すぎ、涙をたしかめるには弱すぎて、

そして盲目と死というふたつの夜の間にはさまって

おお、かれが死ななければならないという最も深い傷

最悪の日に、おお、かれはその目の涙を隠すことができた、

泣くにはプライドが高すぎて

おれが死ぬまでかれはおれのそばを離れることはないだろう)


Elegy


- Poem by Dylan Thomas


Too proud to die; broken and blind he died
The darkest way, and did not turn away,
A cold kind man brave in his narrow pride

On that darkest day, Oh, forever may
He lie lightly, at last, on the last, crossed
Hill, under the grass, in love, and there grow

Young among the long flocks, and never lie lost
Or still all the numberless days of his death, though
Above all he longed for his mother's breast

Which was rest and dust, and in the kind ground
The darkest justice of death, blind and unblessed.
Let him find no rest but be fathered and found,

I prayed in the crouching room, by his blind bed,
In the muted house, one minute before
Noon, and night, and light. the rivers of the dead

Veined his poor hand I held, and I saw
Through his unseeing eyes to the roots of the sea.
(An old tormented man three-quarters blind,

I am not too proud to cry that He and he
Will never never go out of my mind.
All his bones crying, and poor in all but pain,

Being innocent, he dreaded that he died
Hating his God, but what he was was plain:
An old kind man brave in his burning pride.

The sticks of the house were his; his books he owned.
Even as a baby he had never cried;
Nor did he now, save to his secret wound.

Out of his eyes I saw the last light glide.
Here among the light of the lording sky
An old man is with me where I go

Walking in the meadows of his son's eye
On whom a world of ills came down like snow.
He cried as he died, fearing at last the spheres'

Last sound, the world going out without a breath:
Too proud to cry, too frail to check the tears,
And caught between two nights, blindness and death.


O deepest wound of all that he should die
On that darkest day. oh, he could hide
The tears out of his eyes, too proud to cry.

Until I die he will not leave my side.)


by nambara14 | 2016-08-16 10:52 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)


安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで


                ディラン・トマス

                   南原充士 訳


安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで

老人は一日の終わりに燃え盛り大騒ぎすべきだ

消えてゆく光に対して怒り狂おう


賢い人々はその最期を迎えるとき暗闇が正しいことを知っているが

かれらの言葉は雷光を発しなかったのだから かれらは

安らかな夜 穏やかな眠りにはつかない


最期の波が寄せてくるとき いかに明るいかと叫ぶ善良な人々

弱々しいしぐさのかれらでも緑の湾の中で踊れたかもしれない

消えてゆく光に対して怒り狂おう


飛び行く太陽をつかまえて歌った荒々しい人々は

遅ればせながら 飛行途中の太陽を悲しませたことを知る

安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで


今はの際に失われつつある視力で見る厳かな人々

盲目だってすい星のように燃えて陽気でありうる

消えてゆく光に対して怒り狂おう


そして、あなた、わが父よ、そんな悲しみの極みにあって、

あなたの激しい涙でおれを呪い祝福してくれることを願う

安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで

消えてゆく光に対して怒り狂おう


Do Not Go Gentle Into That Good Night


- Poem by Dylan Thomas


Do not go gentle into that good night,
Old age should burn and rave at close of day;
Rage, rage against the dying of the light.

Though wise men at their end know dark is right,
Because their words had forked no lightning they
Do not go gentle into that good night.

Good men, the last wave by, crying how bright
Their frail deeds might have danced in a green bay,
Rage, rage against the dying of the light.

Wild men who caught and sang the sun in flight,
And learn, too late, they grieved it on its way,
Do not go gentle into that good night.

Grave men, near death, who see with blinding sight
Blind eyes could blaze like meteors and be gay,
Rage, rage against the dying of the light.

And you, my father, there on that sad height,
Curse, bless, me now with your fierce tears, I pray.
Do not go gentle into that good night.
Rage, rage against the dying of the light.


by nambara14 | 2016-08-15 10:46 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)


 十月の詩

              

                ディラン・トマス

                  南原充士 訳


それは天国へのわが30回目の年だった

目覚めると港や隣の森から声が聞こえ

ムール貝が群れ サギが

司祭のように岸辺に降り立った

祈れる水やカモメとミヤマガラスの声

そしてヨットが網を張った壁に当たる音が

朝の合図だった

おれはと言えばその時

まだ眠っている街へと歩いていったのだった


おれの誕生日は

農場や白馬の上をおれの名前を掲げて飛ぶ水鳥と

翼をもった木の鳥で始まった

そして雨の多い秋の中

おれは立ち上がり

過ぎ去った日々の驟雨の中を出歩いた

おれが境界線を越える道を辿ったとき

高潮が来てサギが潜った

そして街の門は街が目覚めたとき閉められた


逆巻く雲の中の元気なヒバリと

囀るブラックバードに縁どられる道端の茂みと

十月の太陽

いかにも夏らしい

丘の肩

ここにはお気に入りの気候があった そして

朝 突然甘い声の歌手たちがやってくる

おれがさまよい そしておれの下方のはるかな森の中で 雨を絞り出す

風が冷たく吹くのに耳を傾けたことのあるこの場所へと


小さくなる港と海の上に降る薄暗い雨は

靄の中から角を出したカタツムリほどの大きさの教会を

そしてフクロウのように茶色い城を濡らした

だが春と夏のすべての庭は楽しい物語の中で花咲いていた

境界線の向こうまでそしてヒバリでいっぱいの雲の下で

そこでこそおれは

わが誕生日を驚きに満ちたものにできたのだった

ただ天候が変わりつつあったのだが


それは愉快な国から去っていった

そして違う空気と青空に変わった空から

ふたたび不思議な夏が流れ落ちてきた

林檎と

梨と赤いスグリの

そしておれは天気の変わり目にはっきりと

子供が忘れていた朝を見た

そのときかれは母といっしょに

太陽光の寓話と

緑のチャペルの伝説の中を歩いて行った

そしてかれの涙がおれの頬を燃やしかれの心臓がおれの心臓に入り込んだとい

言い古された幼年期という野原

それらは森や川や海だった

そこでは 死者が耳を傾ける夏に

子供が かれの本当の喜びを 木々や石や潮流の魚にささやいたのだった

そしてその神秘が

水や囀る鳥たちの中でなお生き続けて歌うのだった

そしてそこでこそおれはわが誕生日を驚きに満ちたものにできたのだった

ただ天候が変わろうとしていたのだったが。そして

随分前に亡くなった子供が

太陽の日差しの中で燃えながら歌ったのだった

それは天国へのわが30回目の年だった

そこはそのとき夏の真昼だった

ただ下に広がる街では木々の葉が十月の血の色をしていたのだったが

おお、年の改まるとき この高い丘の上で

わが心の真実がいまなお歌われ続けることを!



Poem In October


- Poem by Dylan Thomas


It was my thirtieth year to heaven
Woke to my hearing from harbour and neighbour wood
And the mussel pooled and the heron
Priested shore
The morning beckon
With water praying and call of seagull and rook
And the knock of sailing boats on the net webbed wall
Myself to set foot
That second
In the still sleeping town and set forth.

My birthday began with the water-
Birds and the birds of the winged trees flying my name
Above the farms and the white horses
And I rose
In rainy autumn
And walked abroad in a shower of all my days.
High tide and the heron dived when I took the road
Over the border
And the gates
Of the town closed as the town awoke.

A springful of larks in a rolling
Cloud and the roadside bushes brimming with whistling
Blackbirds and the sun of October
Summery
On the hill's shoulder,
Here were fond climates and sweet singers suddenly
Come in the morning where I wandered and listened
To the rain wringing
Wind blow cold
In the wood faraway under me.

Pale rain over the dwindling harbour
And over the sea wet church the size of a snail
With its horns through mist and the castle
Brown as owls
But all the gardens
Of spring and summer were blooming in the tall tales
Beyond the border and under the lark full cloud.
There could I marvel
My birthday
Away but the weather turned around.

It turned away from the blithe country
And down the other air and the blue altered sky
Streamed again a wonder of summer
With apples
Pears and red currants
And I saw in the turning so clearly a child's
Forgotten mornings when he walked with his mother
Through the parables
Of sun light
And the legends of the green chapels

And the twice told fields of infancy
That his tears burned my cheeks and his heart moved in mine.
These were the woods the river and sea
Where a boy
In the listening
Summertime of the dead whispered the truth of his joy
To the trees and the stones and the fish in the tide.
And the mystery
Sang alive
Still in the water and singingbirds.

And there could I marvel my birthday
Away but the weather turned around. And the true
Joy of the long dead child sang burning
In the sun.
It was my thirtieth
Year to heaven stood there then in the summer noon
Though the town below lay leaved with October blood.
O may my heart's truth
Still be sung
On this high hill in a year's turning.


by nambara14 | 2016-08-14 00:10 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)

最近の詩集評(10)

小網恵子詩集『野のひかり』。「野の空気や光は身体を心をやわらかくしてくれる」。植物への強い愛着は生きることの難しさの裏返しかもしれない。ひととの交流も木や花や公園や湿原など植物とのかかわりで描かれることが多い。静かな観察から時折熱い思いが漏れてくるが、とりわけ「林檎煮」は傑作だ。

小松弘愛詩集『眼のない手を合わせて』。何気ない日常や個人的な思い出などが豊富な人生経験と英知を通して簡潔で親しみやすい詩篇として結実している。「眼のない手」(わたしの手)を「眼のある手」(,千手観音の手)の前に合わせる敬虔な姿勢と柔らかな言葉の陰に謙虚さと優しさと強い意志がある。


坂多瑩子詩集『こんなもん』。日常にひそむ恐怖感や悪意や滑稽さなどをさまざまなひとや動植物や事物を用いたコントのように描いてみせる手腕は一級品だ。巧みなブラックユーモアに思わず笑ってしまうが、同時に、多くの人や物との関わりにおいて生じる複雑怪奇な人間心理に気付いてはっとさせられる。


現代詩文庫『広瀬大志詩集』。詩集〈喉笛城〉、〈髑髏譜〉、〈激しい黒〉など、恐怖に満ちた詩集を刊行し続けて、今や「広瀬ワールド」は現代詩の世界で確固たる存在となっている。生を肯定したいがために、あえて死や不吉で不気味な表現に拘っているのだろうか。散文「ぬきてらしる」には特に惹かれた。


中村不二夫『辻井喬論』。詩人・作家の辻井喬の詩や小説を丹念に読み込むとともに、経営者堤清二としての活動をひっくるめて論じた詩人論。膨大な作品と資料と取材をもとに、個人的な交流も踏まえ、深い敬意と親愛をこめて書きあげられた労作。客観的なアプローチに徹した執筆姿勢には好感が持てる。


長嶋南子『花は散るもの 人は死ぬもの』。21人の物故女性詩人論。与謝野晶子から氷見敦子まで、女性詩人像が詩の引用とともに怖いぐらいにくっきりと鋭くしかもおもしろく共感をこめて描かれている。男は気取るが、女は身を飾るのが身上でもいざとなれば皮ふを剥いで内臓をさらけだせるものらしい。


秋川久紫『昭和歌謡選集』。「恋のフーガ」等20の昭和の歌謡曲を取り上げ、詞・曲及び歌手・作詞家・作曲家について論じた労作。秋川による替歌の掲載は著作権の壁に阻まれたようだが、昭和歌謡曲へのオマージュと分析が平成の文化や社会の状況を打つための契機を与えるという意図は果たされている。


広瀬大志『ぬきてらしる』。穀象をめぐる八つの物語。1862年にアメリカからイギリスに送ったトウモロコシの中にいたコクゾウムシが日本にもやってくる。内外の著名な同時代人や著者の先祖(?)を登場させた奇想天外の物語。あまりのおもしろさとたしかなポエジーに完全に脱帽。まれにみる傑作だ。


山田兼士詩集『月光の背中』。Ⅰ飛鳥・大和に想を得た詩篇、Ⅱ俳回文日詩Ⅲ詩論詩、Ⅳ追悼詩その他。アカデミックなボードレール等の研究者は、軽妙洒脱な詩人でもある。幅広い教養や深い思索をひけらかすことなく、ウィットやユーモアや抒情性に富んだ親しみやすい表現で他者との内なる対話を試みる。

瀬崎祐詩集『片耳の、芒』。明るくて旅情に満ちた水彩画を描く画家でもある詩人。詩集では、絵とは逆に、不条理極まりない人間を究極まで追い詰め、恐ろしいまでの絶望や悲しみや救いがたさや諦念がモノクロームで描かれる。生きることの痛切さが淡い水墨画のように美しく浮かんできて涙がこぼれる。

伊藤浩子詩集『未知への逸脱のために』。フィクションの技法がたしかな現実観察を踏まえて多様なイメージや人物や言葉や知識や教養を自在に操って独自の詩物語を作り出す。ロゴスとエロスを融合した濃密でエレガントな言葉の醍醐味に読者は舌鼓を打つ。著者は言葉のグルメでありかつ言葉のシェフだ。

阿蘇豊詩集『とほく とほい 知らない場所で』。マレーシアとベトナムで日本語教師として暮らした七年間の経験がベースとなった詩集だが、異文化との接触による違和感が誇張されることもなく、日常生活に根差した確かな観察と思いと言葉が差し出される。特に「クラウン・シャイネス」は素敵な作品だ。

武西良和著『詩でつづるふるさとの記憶』。『わかやま新報』に連載した記事のまとめ。詩とその添え書きと写真で構成。地元和歌山の様々な景色や土地やできごとを詩情深くつづった内容は、郷土愛に溢れていると共に、万葉集や英詩など幅広い教養を持つ著者の洞察力に満ちたエスプリに裏打ちされている。


原田道子著『詩の未来記』。独自の視点と表現へのこだわりを持って詩と詩論を書き続けてきた著者の渾身の評論集。言葉と人間社会への関心の強さと豊富な知識や経験が、歴史的な視野の中でさまざまな事象へ向かうとき、詩は新たな意味を求められる。尊敬する先人との対話や広範囲にわたる研究の成果そして丹念に引用された詩作品が、本書の言説を厚みのあるものとし、未来への示唆を与えるものとしている。



尾久守侑詩集『国境とJK』。街や教室で見かけた女性たちとのリアルとヴァーチャルの境目の、少年少女向けの漫画か小説に見られるような、淡い恋心を描いた詩篇が多いが、著者は医師らしく、病院における検査や治療の場面から巧みに独自の雰囲気に満ちた詩空間が作られている詩篇もある。あいまいでとらえきれない生の感覚がやや寂しく切なそうに表現されている胸きゅんの詩集だ。


ジェフリー・アングルス詩集『わたしの日付変更線』。英語と日本語、過去と現在と未来、アメリカと日本等マージナルな時空での自我の分裂感覚が、運命的な言葉である日本語と出会って、「意味と抒情」を兼ね備えた新たな日本語詩として結実した。44歳にしての実母との出会いも強い陰影を与えている。


神原芳之詩集『青山記』。Ⅰは、戦争に係る悲しみや痛みに満ちた詩篇、Ⅱは、様々な花に託して人生への思いをしみじみと述べた詩篇、Ⅲは、多くの人生経験をもとに物語風に描かれた詩篇。おだやかな筆致ながら、人間存在や歴史への透徹した眼力が、深い感慨を込めた詩作品となって読者の心を揺さぶる。




by nambara14 | 2016-08-11 18:38 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)