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お預け


りんごを握りつぶす
くだけた果肉が指の間より飛び出す

電球を握りつぶす
くだけたガラスの破片が指の腹を切る

女の高い鼻をへし折る
くだけた鼻っ柱がぶらさがる

男の反り返った背骨をへし折る
寝たきりになったかどうかはわからない

空の雲をつかみたくなる
伸ばした手は空(くう)をつかむだけだ

地の塩をつかみたくなる
なめれば気絶するほどしょっぱい

自分の影を踏みたくなる
どこまでも逃げていく

他人の影を踏みたくなる
日が暮れてお預けになる








by nambara14 | 2015-07-28 13:41 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)


シンボリックな鬱屈にとらわれて飲めない酒をあおると
たちまち抗しようのない睡魔に襲われベッドに倒れ込んだ
落ち込んでいくベクトルのいくつもの成分が入れ替わり立ち代り
悪夢を生み出したとしても夢見る者にはどうしようもない
するとひとりの女の顔が鮮明に浮かび上がってきて
長い髪をかきあげて上目遣いにこちらを見るので
からだに触ろうとしたところで目が覚めた
その女は女優顔で男を惹きつけずにはおかない雰囲気を持ち
幼い娘を育てながら自分の才覚を伸ばしていたが
精神の不安定が他人と長く付き合うことを難しくしていた
彼女への思いは隠しておいたしなにひとつ秘密も作らなかったのに
なぜ夢に現れてきてこちらを誘おうとしたのだろうか
ほとんどの夢は忘れてしまうのにその夢はなかなか忘れられない
こちらの気持ちの中で彼女は復活しこちらを悩まし続ける
もちろん彼女にはなんの責任も関わりもなく別々の時間が過ぎていく
もしこちらが夢をひきちぎれば彼女の心は痛むだろうか
もし彼女に連絡をとろうと動きはじめればどんな未来が待っているだろうか
避けられない夢の記憶が理不尽にこちらを戸惑わせる



by nambara14 | 2015-07-24 19:22 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)

新聞


新聞をすみずみまで読んでざわついた気持ちを
立ち上がって歩き回って伸びをして落ち着かせる
ほとんど自分の身の回りには関係がないからといって
読み捨てにもできないほどには新聞記事が心に引っかかる
一つ一つの事件に眉をひそめ責任追及の激しさに気持ちがふさぐ
新聞をめくるたびに世界中の不幸が見渡せるような気がするが
新聞紙を畳んで捨て置けばすべての騒乱も畳まれて廃棄されるような気がする
毎日 新聞を開くたびに気持ちは新たな動揺に遭遇するが
閉じるたびに膨大な記事が忘却され捨て去られる
まれには記事を切り抜いたりコピーすることがあっても
雑然とした情報のよせあつめのような人間の脳には
突き詰めたり問い詰めたりせずに処分するのが似合うのかのしれない
中途半端や未消化や勘違いを織り交ぜながら
真面目半分面白半分に日々を生きる中で
ときには電撃のように自分を目覚めさせることがあっても
ひと呼吸おいてからしか言動には移さないと決めてある



by nambara14 | 2015-07-24 16:39 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)

どら焼き


皮のふっくらした感触を口が覚えている
粒餡のほどよい甘さを舌が記憶している
いろいろなどら焼きがあるけれど
かぐわしい香りに引き寄せられ
茶褐色と黄色の色合いを食べる前によく見て
唾液があふれてきそうになるのをこらえて
はい、いただきまーす!


by nambara14 | 2015-07-10 13:57 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)

徒手空拳


わたしはなにも持たずに歩いている
Tシャツとショートパンツとサンダル姿で
ペットボトルからときどき水を飲むだけで
それなのに歩くにつれ体がだんだん重たくなってきた
体重が増えるはずがないから
重力が大きくなったのだろうか?
それとも見えないなにかがとりついたのだろうか?
あるいは憂いや患いが重たい固まりになったのだろうか?
無理をして走り出す
すべてを振り切るために全速力で走る
目の前に突然大きな崖があらわれて激突した体が宙を舞う
何度も激しくバウンドしてなにがなんだかわからなくなる
しばらくして気が付くと木の枝に引っかかっている
思わず「トシュクウケン」とつぶやくと体がふわりと地上に落下する
立ち上がろうとするがすぐには立ち上がれない
余分なものはすべてそぎ落としたいと心で念じてみるが
いったいどうなっているのか確かめようもない
ダメージが見えてくるまで少しの間様子を見るしかなさそうだ



by nambara14 | 2015-07-10 13:38 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)

空耳


1 2 3・・・と数えているうちにどこかでわからなくなる
数えなおしてもまたどこかで迷ってしまう
ストップウォッチを眺めていれば決して数え間違うことはない
指で脈拍を数えるたびに数を見失うので血圧計にまかせる
認知症の予防になると言われて
100 97 94・・・と三つおきに数えてみれば
あたまは混乱し自信を失ってめまいがしはじめる
夢の中でもカチカチという音が聞こえて
目が覚めるたびに「今何時?」と聞きたくなるが
「そうね だいたいねえ」と聞こえたような気がしたのは
空耳だったのだろうか?
脈が跳んでも 音程が外れても 足元がふらついても
まあまあ順調ならそれでいいんじゃないとかねえ?





by nambara14 | 2015-07-10 11:11 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)

それなのに



穏やかで やさしく 理知的で 行動力もある
公平で 無私で 偏見はなく 常に社会のためを思っている
限られた時間を 最大限有効に使って 個人の領分と
公の領分とを じょうずにバランスさせている
きわめて謙虚で 争いを好まず 正義感にあふれている
老若男女への愛情は深く 他人の感情を傷つけないように気を配る
恵まれないひとびとや重い病のひとびとへの思いやりを忘れない


by nambara14 | 2015-07-10 10:02 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)

ボ-ルパーク


スリーボール ツーストライク 梅雨空の ボールパークに エール木霊す

ツーアウト 満塁九回裏 逆転の エラー暴投 本塁激突

故障者の リスト満杯 肩肘と 膝と足首 満身創痍



by nambara14 | 2015-07-10 09:32 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

ウォルナット


クルミ餡 漉し餡粒餡 夢想餡

ふっくらと パン屋の前で 雨宿り

千万の 堪忍袋の 緒が切れた



by nambara14 | 2015-07-09 12:42 | 五七五系短詩 | Comments(0)

上書き


書いては消し 消しては書く
削っては彫り 彫っては削る
昨日の顔を洗って 今日の顔を始める
思いもよらない 出来事に出遭う一日
明日がまっさらだという保証はない
見え消しで 消し残った過去が
居づらそうに 顔をしかめるので
即刻 上書きにしてやる

 

by nambara14 | 2015-07-08 16:24 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)