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よいお年を!


           みなさまよいお年を!


 今年一年、「きままな詩歌の森」をご愛読くださったみなさまありがとうございます。

 詩作はてさぐりでするものという思いを強めながら、書き続けています。
次はどんな作品が生まれるのか自分でも予想できないところにスリルがありますね。

 今年は、自分にとって試練の年でした。
 健康に重大な問題が見つかったり、身内がなくなったり、怪我をして入院したりと相次ぐ不幸が重なって、窮地に陥ることが一再ならずありましたが、なんとか立ち直ってきました。

 詩をはじめとする文学の意味や役割についても自分に問い直す契機となりましたが、答えは簡単に見つかりません。

 ただ、どんな苦しみの中でも、文学をやめられないということだけは再確認しました。

 同時に、不幸を嘆いているだけでは未来は開けないこと、楽しみや面白みを見つけいかなければ生きていけないことにも気づきました。

 来年も、自分なりに命懸けで文学にかかわっていこうという決意を新たにしていますので、みなさまどうぞよろしくお願いいたします。

 どうぞよいお年をお迎えくださいね!

                                    平成24年12月31日


                                        南原充士
by nambara14 | 2012-12-31 18:59 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

好きです


    好きです


どうも苦手なひとがいる
職場で席がとなりだから
避けるわけにも行かず
毎日会社に行くのが憂鬱だ
ちょっとした連絡の言葉さえ
耳に障るし
こちらを見る視線は
爬虫類のように見える
キーボードを叩く音さえ
神経を苛立たせる

ある日 いつも見かける占い師に
思い切って相談した
そのアドバイスに従って
その夜 家に帰って
嫌いだと思わないようにしようと思った
翌朝 なにも変わりはなかったが
毎日 同じように思っていると
ふと好きだと思ったらどうかなって
思うようになった
そうして日にちが経つと
好きですって
言葉に出してみたらどうかなって
思うようになった
寝て起きて
会社に行って
好きですと心でつぶやき
家に帰ると
好きですと言葉に出した

ある日
となりのひとが風邪で休んだ
好きとか嫌いとかから離れて過ごした
次の日 そのひとは出勤した
時折咳き込んだので
だいじょうぶですかって
はじめて普通に声をかけた
そのひとは
軽く頷いただけだったが
こちらは妙に感情が動いた
好きですとそっと心で言ってみた
好きですと小声で言いそうになったので
あわてて口を押さえた
好きですって
言うか言わないかくらいの
あいまいなところで
ひとに接するのが
いいんじゃないかなって
その日家に帰って 
思いながら
好きですって
思わず言ってしまった
自分に戸惑った
by nambara14 | 2012-12-31 18:24 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

雨の日



       雨の日


冷たい雨が降る中を歩いて駅まで行き
吹き抜けのホームで少し待ってから
めずらしく空いている電車に乗った
若い母親に抱っこされた女の子が
降ろされて座席に立って外を見ながら
よくわからない言葉を叫ぶ
ちょっと離れた座席に
父親らしい男が傘を二本かかえて
無表情に座っている
見るともなしに見ると
女の子は母親似で顔立ちが整っていて
動きがはげしく騒がしい
母は女の子がなにを言っても
愛おしそうに顔を見つめる
なかなか愛くるしい若い母親だ
鷹揚そうに見える父親だって
家の中では冗談を言ったり
娘と風呂に入りたがるかもしれない
妻につきまとうかもしれない
すましているからといって
淡白だという保証はない
大きな川をすぎたあたりで電車は地下へ入る
雨模様は変わらないようだ
これからすることを確かめながら
手帳にメモし始めると
斜め向かいの席の学生風の女性が
携帯でしばらく話し続けているのに気づく
待ち合わせ場所や時間の確認をしているらしい
そろそろ降りる駅が近づいてきたので
席を立ってドアの前まで行く
電車を降りて歩き出すと
さきほど乗り合わせたひとたちのことは
忘れてしまうはずだが
数時間後に用を足して
家に帰ってきてからも記憶が消えない
折しも親類から悲しい知らせが届いたが
雨が降り続く空の下で
無数のひとびとがなにかを濡らしながら
おたがいに無関係に
まったく別々に日々を過ごしているとしても
なにかの拍子で
影響しあうこともあるのかもしれないし
わけもなく澱のようなものが
心の底に積もることだってあるのかもしれない
おそらく明日になれば
雑然とした景色の中に
向き合うべき場所が見えてくるだろう
見届けなければならないひとびとの顔も
ぼんやりとかもしれないが
浮かび上がってくるだろう
こういうことが相次いで起こっても
だれを責めることもできないと
自分に言い聞かせることで
なんとかやり過ごさなければならないのだろう
by nambara14 | 2012-12-30 23:54 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

最近の詩集評(2)

 

             最近の詩集評(2)


倉田良成詩集「横浜エスキス」。エッセイ風の趣のある詩集。赤煉瓦倉庫、チャイナタウン、港、博物館、美術館、ジャズ祭など横浜の各所をノスタルジックに描きつつ、著者の自伝的な回想や街やひとびとの喧騒をリアルに交え、さらに幻想に満ちた古今東西の文学や音楽や絵画を重ねる手腕は、いわば魔術師の手さばきと言える。倉田良成は、まさに現代の神話作家だ。

疋田龍乃介詩集「歯車vs丙午」。不条理劇のようだが、観客を有無を言わせず引き込むのは、登場人物や大道具や舞台設定が意外な演技とセリフを際立たせるからだろう。豆腐も犬も蛇もミツバチも義母も灯籠も、怪談めきながら、語呂合わせや言葉遊びの快感で観客を虜にする。斬新で饒舌な文体が魅力だ。

秋田律子詩集「詩人のポートレート」。中也を書いた詩が冒頭にある。中也のことは知らなくてもその詩とポートレートに惹かれる。ひどい人だったといううわさもあるのに。太宰治を取り上げた詩が次にきて、それ以後は著者が自らを見つめた詩篇が並ぶ。詩と詩人の関係は常に謎めいたものかもしれない。

浜江順子詩集「闇の割れ目で」。忌まわしい死を直視する胆力は決して沈着冷静を意味しない。あわてふためきながら、人間の生死の総体を、性や生理や不安や不条理に満ちた宇宙や時空で、ジタバタしたり啖呵を切ったりしながら、透徹した眼力と筆力で痛快に描いてみせた、魅力溢れるホラー・エロス詩篇。

芳賀章内詩集「宙吊りの都市」。大震災の爪跡を癒し充実させるための歴史的現在。「人間の歴史は人間の歴史をもって超克しよう」とする立場から宙吊りの現状に向かい合う強靭な精神が、息詰まるような詩篇群となって現出している。「歴史のなかに芳賀章内はあり/ししゅふぉすのように/笑っている」。

紀の﨑茜短詩集「ちきゅうぼし」。「お日様が/ぽろんと//腰かけている」(切株)。少年詩という位置づけの短詩が並んでいる。言葉をひねくり回すことなく、実に素直に言葉を差し出している。技巧に走った詩が多く見られる中では新鮮に感じられる。77歳という覚悟の年、詩を書きたい思いが強まる。

福原恒雄詩集「土偏(つちへん)」。「その時のことくずれてしまった地球の足跡ほどの残土に/ちょぼちょぼっとだれのものでもないみどりが芽ぐんで光る」(「時に 芽生えて」より)。大震災に向き合い、失った言葉を探し堀り起こし拭い並べようとする中で、土を強く意識する人間。痛切さが胸に迫る。

南川優子詩集「ポフウエル氏の生活 百編」。地球規模で縦横無尽に言葉とイメージの離れ業を繰り広げる。跳躍、ひねり、宙返りなど体操のような爽快感がある。自由自在に繰り出される語彙が幾重にも絡まり合ってユーモアと意外性に富んだ時空へ連れ去る。類稀な実験性の陰に感じ取れる痛快なポエジー。
by nambara14 | 2012-12-23 10:50 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)

忘年会

 

    忘年会


みんな今年を振り返る
思いつくことはテレビで
見たことばかりだが

温かい料理を
囲んでいれば
気持ちはほんわかして

ふと思い出す入院中の家族や
失業中の知り合いのことも
一瞬忘れてしまう

景気はどうなるのかな
ちょっぴり気にかかることを
口にしてしまうが

来年はいい年になるよ
なにがあっても
助け合って切り抜けようね

あたりさわりのないことを言いながら
いろいろ問題をかかえていたって
乾杯すれば

今年はつつがなく過ぎていき
来年が迎えられるような
気がしてくる

やがて鍋の湯気が
おたがいの顔を
もうろうとさせ

お開きになった店から
上機嫌で出てきて
それぞれの帰途につかせる


by nambara14 | 2012-12-22 21:50 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

古いビデオテープ


   
     古いビデオテープ


たまたま目に留まった古いビデオテープ
今の機器では再生できないので
うっちゃっておいたが
あるときどうしても中身を見たくなって
業者のところへ持ち込んだ
けっこうお金はかかったが
好奇心の代償としてはまずまずだと思った
DVDの再生装置に入れると
テレビ画面に浮かび上がってきたのは
まったく見覚えのない場所での
見ず知らずのひとたちの
ごくふつうの日常生活を撮影した映像だった
つまらないのですぐ切ろうと思いながら
一時間も見てしまった
結局なんの思い出のよすがも見いだせずに
全部を見たわけだが
DVDを引き出してみると
なんという無駄だったかと後悔の念に苛まれたが
決着をつけるということはこんなことだと
自分に言い聞かせて
DVDをゴミ箱に捨てた
それからしばらくして
こんどは一箱ものビデオテープが見つかり
こちらのものは
なんとなく記憶があるような気がしたので
絶対に見てみたいという思いが強まった
業者はたんたんとDVD化をしてくれ
何十枚ものDVDを受け取って
何時間も再生してみた
今はない祖父母や親類や
ずっと会っていない友人知人や
今も一緒に暮らしている家族の
昔のようすが見えてきた
なんどもくりかえして再生しているうちに
なつかしいと感じた気持ちが
ふと寂しいへと変わり
さらには悲しいから空しいへ
そして感情が洪水のようにあふれて
自分のこころとからだが根こそぎ
流されてしまう恐怖にとらわれた
とっさに再生を止め
すべてのDVDをはるばる遠くの川に
捨てに行った
by nambara14 | 2012-12-17 15:22 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

身代わり



     身代わり


重い病の娘の息を
一気に吸って吐き出せば 
ぱっちり目を開け起き上がる

恋に破れた男の心
謎の気体を吹き込めば
ピンクの形が踊りだす

月が足らずに流れた胎児
時間の川を遡り
元気な体と入れ替わる

あの世へと渡りきれない船頭に
水先案内あちらに着いた
今更帰るに帰れない

星の動きを読めない子供
学芸員が先回りして
ブラックホールに落っこちた
by nambara14 | 2012-12-12 17:23 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)