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      飴


汗と涙を
コップにためて
煮詰めると
透明の飴になる
嘗めると
七つの味が広がる
苦いのは
父を看取った時
辛いのは
若すぎるお別れ
しょっぱいのは
海で溺れた友
すっぱくて吐き出したのは
未熟な柘榴
甘いのは
傷口の痛みにたえながら口に含んだ角砂糖
この飴は
きっと時が発酵させた思い出
by nambara14 | 2012-07-30 20:10 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

共同生活者



     共同生活者
 

一円のおつりを間違えた店員にクレームをつけた帰り
共同募金の箱の中に千円札を入れる
高校生の制服や態度に好感を持ったのか
助け合いの精神のあらわれなのか

映画館で涙をこらえきれずに困っているひと
因縁をつけられてまわりに救いを求めている人
なににも関心を持てずにぼんやりしているひと
被災地にボランティアで駆け付けた人

やんわりと話しかければ固い表情もやわらぐ
けんか腰で詰めよれば睨み返される
興味なさそうに口を聞けばそっぽを向かれる
顔いっぱいで笑えばつられて相好を崩す

こつを呑み込んだつもりで謝りに行く
水漏れで怒鳴り込んできた階下の住人のもとへ
洗濯機の水を止め忘れたものですいません
子供が急に体調を崩して病院に連れていったものですから

相手は菓子折りを受けとり了解してくれた
当座が凌げればいいかという気もしたが
出まかせを言ってしまった自分の口を恨んだ
これから冷や冷やしながら暮らさなければならない
by nambara14 | 2012-07-24 18:52 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

ろれつのお稽古



    ろれつのお稽古


おっは 早うせんかい
たっは のろまやさかい
まっは 超音速で

ちわ わかっとるわい
すわ 一大事かのう
こわ 心臓も凍って

では もう行くんかい
ほな 何言うてる
あいや 待たれえ

あのその なにをそわそわ
おおきに ごっつぁん
そいでもって 事の次第は

そうでんなあ 
なんと 言いますかのう
ほんまに 藪の中ってことで
by nambara14 | 2012-07-20 19:21 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

二つの次元



      二つの次元


汗だくになってコンクリートの道を歩く
埃を巻き上げて行きかう車に圧倒されて
でこぼこの狭い歩道を黙々と進む

見渡す限り瀟洒な邸宅はなく
不揃いな街並みと工事現場が
真夏の太陽にあぶられている

毎日行き来する場所だが
知った顔とすれ違うことはない
とことん好きでも嫌いでもない街

見ることを続けていれば
目の前の景色は平面化し
ついには倒れてしまう

時折思いめぐらすことで
二つの次元が立体を
構成することができる
by nambara14 | 2012-07-20 19:19 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

逆ドミノ



     逆ドミノ


積み木が倒れて
パチンコ玉が跳ねて 
ふすまが倒れて
ボールが飛んで
バッターが打つと
的に命中
おもりが落ちて
ボタンを押して
四方八方坂道下る
うねりのままに
最下点を過ぎて
上り下りのその先に
五段の滝に飛び降りる
地震が来たら
仕掛けはずれる
途切れたねじの逆回転
地割れの深みを覗き込む
奴隷を並ばせ
寝ころばせたら
ご主人様の号令一下
みな起き上がれ
滝登れ
坂道上れ
おもりを上へ
戸板を起こせ
畳を立てて
ふすまも起こせ
パチンコ玉飛ばせ
積み木を起こせ
元通り
by nambara14 | 2012-07-19 20:38 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

パネル



      パネル


夕日が長い影を落とし
大きなパネルを持った子供たちは
乱反射させた光を投影しあいながら
広場の敷石の上を不規則に歩いた

やがて日没の時が訪れ
三日月の光を遮るパネルは
子供たちも影に飲み込んで
銀色のにぶいつぶやきをもらした

夜更けに悪い夢を見てしまった子供たちが
泣きべそをかきながら寝床を抜け出してくる
小さな影は群がり青白くふるえている
そのときシンバルが割れるような音が聞こえて

とてつもない竜巻が襲ってくる
パネルが一斉に舞い上がり
慌てふためく子供たちの上に
真っ暗な平たい影が降ってくる

朝になると家々の窓から
寝ぼけ眼の子供たちの顔がのぞき
昨夜見た夢を思い出して広場に出る
パネルはかくれんぼ遊びをしているのか
by nambara14 | 2012-07-18 15:06 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

境界線



     境界線


泥にまみれて逃げ回った後
藁の寝床で脳がふやけるほど眠った
疲れはとれたが腹が減って動けない

ふらつきながら戸を開けると
畑があってなにやら実っている
気が付けばキュウリとトマトを齧っていた

だれかの声がして食べるのをやめた
野良仕事のなりをした男が銃を向けている
無意識に両手をあげて立ち尽くした

行けと言われれば行くしかない
わずかに満たされた飢えと渇きが
火をつけた空腹が視界をあやうくした

夜になって今度は違う畑へ行った
とうもろこしもすいかもなんでも食い漁った
そのときがさごそする音が聞こえたが

腹が満たされる快感には抵抗するすべがなかった
持ち帰るためにと手当たり次第もぎとっていたとき
近くで威嚇する声が聞こえた

腕に抱えたまま走り出したとき
轟音が響いた どうと倒れた
手には作物がしっかりと握られていた
by nambara14 | 2012-07-17 15:55 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

好き



     好き


わたしのどこが好きですか?
顔ですか 体ですか
性格ですか 献身ですか
親の財産ですか?

わたしの全部が好きだと言いましたね?
わたしはいつも変化して
明日のわたしは今日のわたしではありません
わたしさえ分からないわたし

親が倒産しても好きでいられますか?
無能力になっても 偏屈になっても
顔が傷ついても 体さえ無傷なら
わたしを愛してくれますか?

年とともにすべてが衰えていきます
わたしの体はあなたを誘うでしょうか?
わたしの名前が削除される時が来ます
体を失ったわたしを好きでいられますか?
by nambara14 | 2012-07-13 19:51 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

固形処理



      固形処理


この空間は見えない粒子でいっぱいらしい
見ることは信じることだなんて言われてきたが
今では高性能の機械を使って観測データを集積し
辛抱強く解析し続けてやっと信頼できるところまで行ける

可視光線は重力で曲がるが重さはないという
重さのない物質というのはとらえにくそうだね
暗黒物質の正体はまだわかっていないらしいし
現実をどれだけ調べても宇宙創造のわけはわからない

魂など信じなくてもいいだろうが
死者たちの思いがふわふわしていて
おれたちの呼吸する空気によって
体の中を出たり入ったりしていても

別に驚くようなことじゃないから
愚痴ぐらい聞いてあげようと言ったら
来るわ来るわ あんまり多いので
しっかり固めていつでも出てこれるようにしたよ
by nambara14 | 2012-07-11 20:13 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

下着



     下 着


パンツが脱ぎ捨てられているそばを
犬が通りかかり
鼻先で臭いを嗅ぐ
とても臭―い

シャツをポリ袋に詰めて
若者たちが集まる
悲しみを捨て
歓びを求める

下着はテーブルに置かれる
下着を一枚ずつ嗅ぐ
臭いの中から相方を見つける
見た目は清潔そうだ

シーツにくるまって
過去を打ち明けあう
朝が訪れるまでは
抱きしめ合っていようね
by nambara14 | 2012-07-10 15:00 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)