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誘惑



      誘 惑


天使の心と悪魔のからだで
街角に立ってチラシを配りながら
ウインクをし笑顔を振りまく

うっかり見とれれば
魂を奪われて夢遊病者のように
商品の前に誘導されてしまう

麝香系の香りにくすぐられ
カラーシャドーの頬と
グローの効いたルージュに惑わされ

売り場に並ぶ小物をいくつか勧められ
考える間もなくレジに並び
クレジットカードを渡してしまう

三歩歩けば雷に打たれて正気に戻る
高額な請求書とすり替わった商品が
安っぽく手提げ袋に収まっている
by nambara14 | 2012-05-31 11:29 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

不協和音



     不協和音


小さくて中ぐらいの高さの音で
目立たないけど快い響きを目指して
虫のように声帯をふるわせるつもりで
じんわりと音波の発出を試みる

静まり返った周囲の空気が振動し始め
たしかなこだまが聞こえたと思うそばから
超高音の裏返った声が制圧する
限りなく軌道を外しあう不揃いの楽器群

調和を探る迷路は深くむなしく
不整脈のような音響の伝播の中で
さらに超低音のトリルが忍び入ってくる
完ぺきな不調和に悦に入っている有象無象

見えないタクトが振り下ろされると
ミミズでさえ地中から臭いを発し
ゾウアザラシは鼻をそびやかして唸る
まったくありえないハルモニアが出現する
by nambara14 | 2012-05-30 14:40 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

潮騒

 

     潮 騒


締め切った窓からも
かすかなざわめきは聞こえる
かなたの繰り返しのリズムが
この身の内なる躍動に解け合う

ざーっと寄せてざーっと引く
その単調さに耳を澄ますと
細かな音の上り下りが
複雑な陰影を生み出すことに気付く

嬉しいのか悲しいのか
感極まった叫びか嗚咽か
今の想像力で彩る過去が
裏切ろうとするのだろうか

花瓶に活けられた花の香に
めまいの中に倒れ行く手の先に
かすかに触れる見えない琴線の
受け渡しの記録を残し忘れて
by nambara14 | 2012-05-29 18:51 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

一難去ってまた一難



     一難去ってまた一難


プラットフォームでバランスを崩した
思わず手近なものに取りすがると
反動で大きななにかが転落した
急ブレーキだけが聞こえた

改札口を出ようとしたとき
機械が故障して脚をしたたか打った
歩いて帰ろうとしたが痛みが強まった
道端で休んでいると雨が降り出した

いざるように飛び込んだコンビニで
ビニール傘を買いお茶を飲んだ
覆面をした男がレジを襲い
店内はホールドアップされた

警察が来る前に男は逃走し
嵐のような表へ出ると道路は水浸し
傘は役に立たずびしょぬれの衣服は
からだに張りつき寒さでふるえた

家に着くと引き出しが開いていて
小物や書類が散らばっている
金目のものは盗まれている
命がなくなる前に風呂に入ろう
by nambara14 | 2012-05-23 19:00 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

すれ違い



     すれ違い


おだやかな表情で横断歩道に立つひと
子供たちが登校する時間帯には
きびきびと緑の旗を振る
大人にもあいさつを忘れない

その心の形は球に近いだろう
色つやもよくみずみずしく
スポンジのように弾むだろう
いっぱいの空気で深呼吸するだろう

帰り道なにかパンフレットのようなものを示して
道行くひとびとに懸命に語りかけている
迷惑そうに避けていくのを意に介せずに
目を輝かせジェスチャーを交えて訴えている

そのあと老人会に顔を出した後
夜には働く母親たちとのお話会がある
一日を別の組み立てで過ごすひとびとは
なにひとつ知らないまま今日を終える
by nambara14 | 2012-05-22 22:40 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

にわか雨



    にわか雨


はじめは晴れ渡っていた
やがてすこし雲が出てきた

まぶしい緑とほどよい風
小鳥のさえずり 蝶の舞い

雨粒が落ち始めても
すぐにやむだろうと

シャツ一枚で歩き続ける
そのうち雷が鳴り

雨脚が強くなる
そんなはずはない

だれもそんなことを言わなかった
疑う気持ちにはなれなかった

一面の草原 身を隠す木も
簡易トイレさえも見当たらない

全身に豪雨を浴びて
冷え切った体が震える

走って帰ろう
そろそろ雨も上がるだろう

見上げても視界は閉ざされ
寒さは突き刺す痛みに変る

こんなはずではなかった
文明が発達した時代に

こんな末路を迎えることがあったら
みんな訴えてやるからな
by nambara14 | 2012-05-18 19:51 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

抜け殻



     抜け殻


口臭を消すために口をふさぎ
腋臭を消すために腋を削った

汗を抑えるために毛を抜いた
栄養補給は点滴にした

部屋中に香料をしみこませ
強烈な換気扇を据え付けた

シャワーをひっきりなしに浴びて
こまめに着替えた

やがて肌は透き通り内臓は退化した
脳細胞も激減し眠りこけるかと思うと

突然起きだして騒ぎまくった
意識は薄らいだが満足度は高まった

孤立は深まり
だれひとり消息を知る者はなかった

老朽化した家屋が取り壊されたとき
無色無臭の抜け殻のようなものが発見された
by nambara14 | 2012-05-17 15:32 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

究極の味



     究極の味


この野生のヤギの肉はくさいのでヨモギを添えますか
―とんでもない そのままで出してください

このホヤは格別の苦味がするので
わさびか生姜をたっぷり付けますか
―いやいやどうか手を加えないでください

この馴れずしはサバの腐敗臭がきついので
鼻をつまんでご賞味ください
―いいえそこのところがたまりませんよ

この塩辛のようなものは輸入品です
とても口に入れる勇気はありませんよね
―なんであれ食は文化ですから

このチーズは盗品です
レア物であること以外わかりません
―それで十分です

この飲料は禁制品です
命の保証はありません
―美味の追求は命がけです

この煙草のようなものは産地が不明です
どのように吸うのかさえわかりません
―望むところです

吸いましたか
姿が消えましたね
by nambara14 | 2012-05-16 16:17 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

リリーフ



      リリーフ



突然病に倒れたひとにかわって
とりあえず今日の業務が処理される

明日からのことはどうしたらいいか
目の前のことを片付けたら

業務量の全体を把握して
キャンセルと変更と実行とに分けて

段取りをつけて指示を出し
パニックを脱することができる

どれほど重篤な病かどうかは
ほどなく明らかになるだろう

軽ければ復帰までのショートリリーフ
重ければ長期戦 最悪は全面組み換え

いろいろ病はかかえていても
どうにか動けて用が足せればいい

さぼったりごまかしながらでも
帳尻を合わせられればいい

万一薬石効なくという事態になったりしたら
かんたんに整理をして

担当が変りましたとか言いながら
似たようなひとが

あいさつまわりをすると
なんとかおさまってしまうのか
by nambara14 | 2012-05-15 19:43 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

数値化



     数値化


ひとの心は見えません
 だれの心も見えません

  電波望遠鏡なら宇宙の果てだって見えるだろう
はじめの光も見えるだろう

出来心でした
     酒に酔っていて覚えていません
そのときのことはなにも覚えていません

      脳波や血流や発汗や目の動きを測れば
こころを図解できる

心神耗弱状態でした
責任能力がありませんでした

  ご破算で願いましては
   一足す一は二
    八百引く八百は零

なんでも数値化できますよ

    からだはみんな似たものだけど
   心は見られちゃ大変だ 

うーん 証拠不十分 請求棄却だ   

 
by nambara14 | 2012-05-14 20:35 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)