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言葉にならない


   
    言葉にならない一日


晴れた空を見上げる目には青だけが広がる
連続的な視野を途切れさすことも
スケッチすることもせずに
生まれたがる声を黙殺し
声の前のもやもやを消し去ることもしない
曇りはじめた空へと視神経は対応するが
覗き込んだ瞳の奥には空洞が広がっている
それを名づけたときから
暗黒へと葬られる未熟児の群れ
雨が降り出したから顰めた眉に
ふたたび色をつけたがる目が光る
限りなく細分化された細胞には
鼻をうごめかせる分泌物があって
くしゃみをしても澄まして
嚢疱がいすわるままにしている
こうしてとりあえず自分の見える範囲の事物を
記述するまえに描写することを言い張る者
手を施す前に観察することに固執する者
それがどんなに逆行であると指摘されても
ある種の原始学を軽視することは許されない
もう夕刻のためらいは過ぎ去り
夜も十分に更ければもはや睡眠以外に
記録者を手招きするものはない
こうしてたった一日にせよ
言葉の誕生を遅らせることに成功したことを
謹んで文学者諸君に報告しておこう


by nambara14 | 2010-07-31 23:18 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

ことばあくま



     ことばあくま


サイレント映画を見ている夢を見ながら
ドラキュラを食う口からは鋭い牙が生え
無限の刃先のようにひろがっていく叫びが
スクリーンを一筋に切り裂き
観客席へとなだれ込む妖怪七福神
貧乏神の真っ白なざんばら髪
疫病神の寝汗ぐっしょり脂汗
死神が現れちゃあおしまいだ
こちら側へ醒めたら立ちすくみ
向こう側へ醒めたら斃れこむ
境目付近をふらふらさまよう亡霊の気配で
おや声も出ませんねえ
細かい雨が降り続ける冥界もどき
喉元に刺さった言生みのトゲ
乱れきった意識の流れにおぼれて
幻影になる以前の字幕なしの映像を
記録本能だけが未練たらたら見つめおり
発作の瞬間が迫ってきたと身構える
そろそろあっしの出番ですかい
都合のいいことばかり言うあくまが飛び出す



by nambara14 | 2010-07-29 13:47 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

でしゃばる



     言葉がでしゃばる


電車の座席に並んで座っているこどもたち
あといくつ?  やっつ。 待って。 乗り換えるかも。
ママ、あといくつ? 指を折って。 ここのつ。
反対側にはママたちがすわっているようだ

バンドエイドが貼ってある膝小僧を伸ばして
もう治ったから剥がすよ。
胸にかけていたパスのビニールが切れかかっている
ねえねえママ ここ貼って。

座席の間を走り回る男の子が おんなのこに
これはねえ おとこにしか教えない。
無視するふりをしても 気になる気になる

おばあちゃんが来なくてよかった 怒るから
ずっと黙っていた一番幼い女の子も
パパのひざにのってつぶやきはじめた



by nambara14 | 2010-07-29 00:27 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

言葉以前



   ことばいぜん


焼け付くと 思う以前の 感覚野

ばてちゃうと つぶやく以前の 朦朧体

大暑って 暦以前の 汗みどろ




by nambara14 | 2010-07-28 13:09 | 五七五系短詩 | Comments(0)

言葉のない絵本



     言葉のない絵本


こどもが毎晩大好きな絵本をかかえて
読んでくれとぼくの書斎に来るので
書籍や文献に埋まったデスクのまわりに
すこしだけスペースを見つけて

同じ表紙を眺めタイトルを一緒に口にする
ページを繰るたびにじっと覗き込むこどもの
視線をたしかめては いつものような声色で
おばあさんの意地悪そうなしり上がりの

頭巾などと言ってもわからないだろうが
くりかえしてきた言葉はこどもの耳から
大脳へ伝わって長期記憶となっているのだろう

この絵本はだれが描いたのか
言葉がない絵本だ いや世界共通語の絵本だ
思うままにつむいだお話が毎晩生まれてくる


by nambara14 | 2010-07-26 16:32 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

言葉のない絵本



      言葉のない絵本


日めくりの 数字を消せば メモ用紙

古文書の 文字掻き消えて しみ浮かぶ

とっさには 言葉も出ない 勧進帳


by nambara14 | 2010-07-26 14:04 | 五七五系短詩 | Comments(0)

またまた



     またまた


マタ貼りぬ 薬効あれば 風立ちぬ

夢に遊べ ベリーダンスの かぐわしく

幼年の 目に焼きつきし 顔を消す

 


by nambara14 | 2010-07-25 16:03 | 五七五系短詩 | Comments(0)

いやはや




       いやはや


衝立を 倒して踏んで 転び落つ

暑苦し びょんぶそろえて 蹴りつける

ついちょっと さえずるつもり フォロわれる



by nambara14 | 2010-07-25 02:32 | 五七五系短詩 | Comments(0)

心頭



      心 頭

心から 頭へ向かい 氷結す


by nambara14 | 2010-07-23 14:14 | 五七五系短詩 | Comments(0)

暑中お伺い



    書中見舞い     


目にしみる光の粒粒
サウナで鉄板焼き
砂漠でストリップティーズ

スクリーンを通過する熱虫
エアコンの出口を封鎖した蒸気
舌を垂らした哺乳類

夕立だ 並んで空を見上げる
雷光一閃 落雷的中
黒こげの高木の下の肉色味

遅れて轟々と降り落ち始めた雨
一瞬たじろいだ羊の群れを尻目に
晴れ上がった空へと陽炎が昇る


by nambara14 | 2010-07-22 14:22 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)