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情的




     情 的


急峻な山岳地帯に展開する軍隊
抵抗勢力は地域に深く浸透し
異教徒の侵略を撃退すべく
あらゆる手段を講じている
ロードサイドボミングで吹っ飛ばされる
兵士の腕や足や胴体
爆弾をかかえた自爆テロ 車両での突撃
ミサイルの誤射で即死した味方の部隊
兵舎を狙って発射される迫撃砲
小回りのきく無人の爆弾飛行機
敵の顔は見えても情をはさむ余地はない
見えないものは見ず
聞こえないものは聞かず
殲滅という幟だけを思い描いて
確率の攻撃を仕掛けあう
善悪の彼岸へ逃げても
生殺の此岸からは逃げ切れない
生き延びた兵士は次の派兵まで
PTSDに悩まされつつ
束の間の慰安を味わうが
息絶えた戦死体は
銃後に帰って涙の雨に濡れる




by nambara14 | 2010-04-30 18:13 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

小さな歌




     小さな歌


この宇宙の大きさって 何百億光年?
自分の身長が175センチ 富士山が3776メートル
地球の周りが4万キロメートル
1光年は光が一年で飛ぶ距離だ
うーん 宇宙の大きさって想像を絶するね?
おまけに今も膨張し続けてるっていうし

人間のからだをつくるのも 犬や猫のからだをつくるのも
植物や土や水や火をつくるのも ウイルスや核兵器をつくるのも
みーんな小さな粒子だ 原子の中の 陽子 電子 中性子
それより小さな素粒子 クオーク
ナノメーターって ものすごく小さくて電子顕微鏡でないと見えない

宇宙の果ても見えない 空に見える星は異なった過去からやってきた光
現在の姿は想像はできても 観察はできない
観察できるのは つぎあてした現実だけだ
肉眼は 小さすぎるものも大きすぎるものを見ることができず
遠すぎるものも 近すぎるものも見ることができない

ほど近くに存在している人間や動物や空や山や海
手で触れ声を聴き眼で確かめ匂いを嗅いで食べてみる
包丁で切った手は痛み血が流れる ぶつかった鉄柱は固い
なぐりあう手はすばやくあざは顔面に広がる
投げ出され謎を掛けられた中途半端な生涯だけが消えては現れる


by nambara14 | 2010-04-29 20:14 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

風媒花



      風媒花


不器用な 犬を叱って 傘の露

恋しさを 封印すれば 風媒花

春の猫 つついてみれば 引っかかれ


by nambara14 | 2010-04-28 12:55 | 五七五系短詩 | Comments(0)

蚊帳の外



      蚊帳の外



地雷の原野を日がな一日追走と逃走をくりかえし
危ういところで捕縛を免れて海をわたってきた
まったくさえぎるもののない平地にたどり着いてから
はるか地平線に一軒の小屋らしきものがあるのではないかと
とりあえずは向かうところもなければそれを目指して歩き始める
ひとっこひとり見当たらない見知らぬ土地だが
レーダーは張り巡らされ衛星はトカゲ一匹見逃すことはない
見えないものが幾重にも埒内を走査し続け
どこかにモニター画面がしつらえられているだろう
凝縮された被視感におののきつまずきばったりと地に這えば
転戦するしかないと心の中で叫び始める声が聞こえる
蚊帳の外へ 蚊帳の外へ
見えない帳をどのように後ずさり逃げおおせるのか
巨大な網がどこからともなくばさりと落ちてくるとしたら







by nambara14 | 2010-04-28 11:55 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

逃げ場なし



         逃げ場なし


くずれゆく 崖のごとくに 倒れゆく 人影ありて 泥に隠れぬ

目に痛い 光を避けて 血の走る 網目の中へ 暗がりてゆく

かきくれて 縋る柱も からづかみ 傾く屋根は 逃げ道を閉づ


by nambara14 | 2010-04-27 13:10 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

春の日



        春の日


窓辺に光は溢れ鉢植えの緑の陰を深くする
極上のお茶を飲みながら新しいカップルのまぶしさに照らされる
おしゃれに編集されたアルバムの写真の中でいっぱいに花咲くひとびとの顔
ふと若いひとの頭をよぎった病床の老人 かすかな意識がきらめくだけだが
ある種の苦味を味わってしまった味蕾が未来をすこし曇らせる
問わず語りのままに過ぎてゆく春の日の午後
去り行くなにかの影を見たような気がしただれかも
その場にピリオドを打つのはもうすこしあとにしたいと思ったようだ



by nambara14 | 2010-04-26 11:20 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

本屋にて



    出られない症候群


新刊書コーナーに並ぶ本を見る
著者名にひかれて手に取る
タイトルにまどわされて取り上げる
なんとなく気になって開いてみる

買うかどうかはほかのコーナーを
歩いているうちに決めようと
週刊誌をぱらぱらめくり
月刊誌を拾い読みする

文庫本は多すぎて戸惑う
旅行ガイドを見ると誘われる
医学書を見るとどきどきする
春画を見るとまわりが気になる

英会話の本はいっぱいある
資格試験はもうやる気がしない
冠婚葬祭の本は一冊ぐらいは必要だ
本屋にはいると出られない症候群だ



by nambara14 | 2010-04-23 13:16 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

筋肉マン



      筋肉マン


おだやかな 日差しくすぐる この目覚め

跳ね起きて パンチ繰り出す 地平線

走り出す 筋肉踊る 血は騒ぐ

出会い頭 火花散らして 蹴りを入れ

跳躍の 着地決まって 輝きぬ

静止画を 抜け出して来る 美少年

追いかけて 水平線に 消え行けリ


by nambara14 | 2010-04-22 10:56 | 五七五系短詩 | Comments(0)

血眼



     血 眼


見る目から 見られる目へと 紋白蝶

点滴を はずして歩む 窓の外

砂浜に 血痕あれば 覆いけり

血走った 眼を隠し 耳澄ます

おい老いよ 寄り来る猫の 忍び足


by nambara14 | 2010-04-21 12:57 | 五七五系短詩 | Comments(0)

デザート



       デザート


別腹に 別嬪の薔薇 かぐわしく ジュレったいほど 匙にすくえば

カメラにて ばしばし撮るを 横目にて ジェラートショコラ おれフロマージュ

トリプルの エスプレッソと ストロベリー アラ クレームに ケーキを添えて



by nambara14 | 2010-04-20 14:34 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)