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向かうところ敵なし=詩



          向かうところ敵なし


 刀は男の腰にぴたっと張り付いていた 重さも長さも感じさせないほど
 町行く足取りは軽くしなやかで 縫うように人ごみを抜けていくとき
 だれも殺気だった気配を感じ取るものもなく 気にもとめなかった
 数人の男の叫び声 そして殴りあう音 倒れる音 いよいよ出番か
 気合一発 引き抜かれた刀の斜めの軌跡 切っ先を危うくよけて
 男は物騒なところをいち早く察知して 迂回路をたどってゆく
 地名がつぎつぎと変わっていくにつれて迷路にはいりこんで
 先行き不透明だなあ あっしゃあしがねえ素浪人ってとこで
 すると絵に描いたような雨が降り出しつんのめった急ぎ足に
 高速の人間模様が浮かび上がる 唐傘が開いて 粋だねえ
 すれ違いざま刀の鞘が当たってしまったのはなんの手違い
 柳に風と受け流し ひょっと身をかわして紛れ込むのが相場だが
 ここにはさっそうと飛び上がる跳躍台もなく飛び道具もない
 あれよあれよというまに男は踏んづけられねじ上げられて
 有り金全部奪われて放り出された 刀にすがってよろよろと
 身を起こした男の見得を切る姿なんざあ記録する絵師などいるはずもなく
 




by nambara14 | 2009-08-31 11:25 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

流れの岸辺=短歌


          流 れ  

 
 岸辺より 眺める流れ 渦巻けば もんどりうって 坂道を落つ

 幾千キロ 流れ流れて たどり着く 葦の根元に まつわるパンツ

 海越えて 群れ鳴く鳥の 渡り来て 干潟に向けて 満ちてくる潮

 


by nambara14 | 2009-08-29 15:21 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

カランドリア=短歌



               カランドリア


    カランドリア 過ぎ行く風の 記せしは 砂漠に眠る 無花果の灰汁

    ウィノスタン 現れし仮面 金色の 奥に潜める 小瓶の中は

    妖しくも 雲にかくれて 消え失せし 天女の舞を 瞼にぞ見る



by nambara14 | 2009-08-28 10:36 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

秋の空=俳句



        秋の空


  あの雲に 乗れたらいいね 言ってみる

  きみのこと 好きなんだけど どうしよう

   おれのこと どう思ってる 秋の空


by nambara14 | 2009-08-27 10:08 | 五七五系短詩 | Comments(0)

信号=俳句



        信 号

 手を上に その手を下に 握り込む

 煙焚く 昇るかたちは 途切らせて

 むずがゆい 皮膚をしわ寄せ 写し取る

 



by nambara14 | 2009-08-26 13:56 | 五七五系短詩 | Comments(0)

ほんわか星人=詩



      ほんわか星人

  
ぼくたちは おたがいに ふわふわした雲のように
風に吹かれて あっちに行ったり こっちに来たり
まだ発見されていない星の上に 浮かんでいる
あの星から あまりに遠いので 見付からない

いつか 宇宙がへそを曲げて ねじれることがあれば 
案外 隣同士の惑星になるかもしれない
この星では きわめて重力が弱いので
動物も植物も建物も すべてが浮わついている

寿命はおよそ千年 のんびり暮らして
気が向けば 子供なんかも 作っている
なかなかおとなにならなくても
だれも文句を言わずに みんないつも笑っている

ぼくが彼女に好きだと言ってから もう百年がたった
それでもキスしたことさえない ふわふわと浮かんで
近寄っては手に触れ 離れては手を振る
ちょっと働けば 暮らしていける ここはほんわか星


by nambara14 | 2009-08-25 13:56 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

前橋=俳句



       前 橋


 整然と 道路に沿って 松林

 文学館 おお萩原さん 高い鼻

 バラ園を 歩けば時は 遡る

 鈴木さん はじめましてと あいさつし

 書斎など 着けば閉館 記念館

 ひとり来て ひとりで去れば 思いあり

 利根川の 流れる町の 風の色

 時と場所 前橋に見る 交差点

 

by nambara14 | 2009-08-24 19:43 | 五七五系短詩 | Comments(0)

秘密=短歌


 
          秘 密


 外見は きちんとしてて 言うことも することもよい それでもなにか

 思うこと 見えなくていい やったこと 知られたくない ほじくらないで

 有名税 払わないけど パパラッチ こんなところを あんなにまでも


by nambara14 | 2009-08-22 17:14 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

金色の子豚=詩



        金色の子豚


豚小屋には生まれたての子豚が七匹
母豚の乳首に吸い付いている
小さな柔らかな体にうすいピンクの肌が透けて見える
よく見ると一匹だけあわい金色に輝いている

母豚は毎日野生のドングリをおなかいっぱい食べ
その身は弾力に富み 乳は迸るように出た
なにごともなく過ぎていく日々の中で
突然一匹のピンクの子豚が死んだ 

すぐに飛んできた検査官が 豚の母子を検査し
重大な感染症によるとして直ちに豚すべての処分を命じた
一瞬豚の鳴き声が聞え静まり焼却された
 
ある日ひっそりとその村へ一匹の子豚が迷い込んできた
沈み込んでいた子供たちが叫んだ
「キントン、キントン!」
処分されたはずの金色の子豚にそっくりだった

金色の子豚は村の保護を受けてすくすくと育った
いまや成熟した大人の豚として村の名物となった
空を飛ぶ芸もなくふつうの豚の鳴き声でしかなかったが
金色はますます濃くなって光り輝いた

豚はオスであり 子供を生むこともなく
肉も金属のような固さだった
ただ豚小屋は拝殿のように改築され
いつしか参詣者が訪れるようになった 

商売繁盛・家内安全・結婚・安産など霊験あらたかだった
金色の豚は毎日じっと拝殿に立ちつづけ
ついに巨大な建造物が建てられた
あまりに訪れる者が多いので
豚は御簾の陰に身をかくすようになった
  
ある時 豚は金色の像に化していた
あるいは豚は死亡して新たに金の豚像が造られたのかもしれない
それは余りに遠い過去のことであるので真相は定かではない
   


by nambara14 | 2009-08-21 16:14 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

頑固一徹=短歌


    
         頑固一徹


  なんと言われてもねえ 表皮の先の繊毛が ふるえなくちゃねえ

  ほらよく見てみろよ ここいらへんの 微妙な線と色とかたちをね

  そのうえで 虚心坦懐を引っ張り出して じっくりと吟味ってのを


by nambara14 | 2009-08-21 11:09 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)