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あじさいに寄す=詩


   
     あじさいに寄す


 いつも眺めているあじさい
 梅雨が終り花が枯れても
 落ちることはないドライフラワー

 夏の暑さに耐え
 秋風に吹かれ
 冬の寒さにも身を縮めて

 桜の陰でひっそりと準備し
 つつじの隣で緑の粒々を付ける
 空気がしっとりと濡れ始める頃

 鮮やかな青、赤、紫の花を咲かす
 よく見れば地味なたたずまい
 ひとの心のかたちに似てはいないか
 
 

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by nambara14 | 2009-06-25 15:51 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

時間差=短歌




           時間差


 桜桃の 種も仕掛けも ある空の 徒手空拳の 時間差を断つ

 辻斬りの とっさにかわす 切っ先の 蝙蝠型の 軌跡抹消

 梅雨空の 点と線とを キャンバスに 描き損なえば にじむ血涙

 

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by nambara14 | 2009-06-25 11:46 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

憧れ=短歌




         憧 れ


 ほっそりと 白く透けゆく 手の舞いを 追いつつ瞳 潤いて燃ゆ

 踊りつつ くねらす腰の 弾力を 思い浮かべて 奥深く入る

 振り向けば 目元涼しい 笑みありて ためらいのみが 濃い影を踏む

 

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by nambara14 | 2009-06-23 23:01 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

たんたん=俳句




        たんたん


 やわらかな霧雨 煙るこころを濡らし 血を薄める

 止まらない傷口を 押さえている手の 血の気は失せて

 桔梗一輪 窓越しに眺める 時間を止めて

 


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by nambara14 | 2009-06-23 11:18 | 五七五系短詩 | Comments(0)

脳体操=詩




         脳体操


  あ
   おえいう
    ゆやよ
     かか くくく

      刮目 割拠 観覧車
       みょうちくりんの
        丸印
         管弦楽を引き連れて

           地鳴り 雷 
            鬼になり
             濡れた懐 抉り出す
              食われた向こうの闇 覗き

                イエスかノーか
                  択一の隙間にばかり
                    ま
                      あって

                        つまんで
                          裂いて 切り刻み
                            こねて 煮込んで
                              飛び降りる





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by nambara14 | 2009-06-23 11:09 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

天気図=詩




          天気図


    風が動く 走り去ったあとに
    肩先から 花びらが落ちる

    つまずいたはずみに
    ハイヒールが脱げる
    隠れ家に取り残してきた天気図

    こぼれた涙は乾いて空へ昇り
    海を越えて流れて行った

    黒い霧が
    行方不明の靴を汚した
 
    砂漠に降った雨が
    今はいない男の墓を濡らした


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by nambara14 | 2009-06-19 13:37 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

乳酸系=短歌



           乳酸系


    甘酸っぱい 匂うの君の 後朝は  光の指が 胸をくすぐる

    訳もなく 涙ぐんだの 知らん振り 風鈴揺らす ヨーグルト味

    破綻調 変胃腸調 異端調 自由音壊 無調整菌



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by nambara14 | 2009-06-17 13:44 | 五七五七七系短詩 | Comments(1)

チェリー=短歌



          チェリー


 むざむざと 食べごろのチェリー 放置して 口に広がる カルピスの味

 おそるおそる 賞味期限過ぎの 生ハムかじる カベルネ・ソーヴィニョン 咳き込む

 てへへって 思い出すたび かゆくなる ぴちぴち肌を がりがりと掻く

 


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by nambara14 | 2009-06-16 13:27 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

冒険野郎=詩




       冒険野郎



 一瞬のめまいのうちにロボットスーツが体を覆う
 走る速力時速最大二百キロ 
 ああ 飛ぶようだ 抜き去って 抜き去ってーーー 
 スポーツカーだけが競争相手だ
 だれにも負けないスピードで走り回るが
 慣れてしまえばだれにも見向きもされなくなる

 盲導犬ロボットを連れた子供が
 装着したロボットスーツの操作を誤った
 走り出した子供に引きずられたロボットは
 町外れの断崖絶壁で立ち往生した
 あやういところで電気が切れて停止したが
 子供がむずがって腕を掻いたとたん
 ふたつの体は傾いて崖下へと転落した

 激突したあとのロボットは五体が散逸して修理困難
 子供は完璧な着地でかすり傷ひとつ負わなかった
 柔構造の生体の優位性は医学会論文で論じられ
 新型ロボット開発へのニーズが強調された
 地上での生命体が宇宙へと飛び出し始めた今
 無重力下での適応が可能かどうか実験が行われはじめた
 ほとんど自明の危険性についても背に腹はかえられないと
 データ取得だけは厳密に行われた
 
 穏やかな危険を冒す
 冒険野郎ーーー



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by nambara14 | 2009-06-10 21:33 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

空席=短歌




        空 席


 絶対音楽 超絶技巧 演奏者 聴衆 一切虚無

 絶対美術 精密描写 画家 彫刻家 観客 空無 

 絶対文学 人間ドラマ 詩人作家 読者 無粋 無感動


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by nambara14 | 2009-06-06 21:22 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)