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スロットル=詩



       スロットル


 錆付いた大型発電プラントの機械室で
 毛むくじゃらの男性名詞がレバーを握る
 筋骨隆々の腕っ節で渾身の力をこめて
 手前に引き 押し 引き 押し 引き

 びくともしない頑固色の筋金
 工具置き場からハンマーを引っ張りだし
 沽券を塗りたくった満身を
 霊長類の系統樹のてっぺんにくくりつけ
 振りかぶって落とす運動エネルギーの色めき

 一打ち 轟々と響き渡るゆがんだ音波の伝播
 二打ち がんがんと軋み続ける鉄心の茫漠
 三打ち わずかに凹み撓む反発係数の表出
 その余の乗羃の付き固め方委細省略

 塑性の限界に至る冷暗の凍結の超伝導
 嗟嘆 忸怩 恩讐の微小な齟齬を噛み砕き
 肝胆隠蔽の虚空に独居してカラオケをおらぶ
 瓦解飛び散る近似力学の亜種模造感光体


by nambara14 | 2009-04-30 14:06 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

我が身=短歌



         我が身


 波のまま 揺れる離島の 桟橋を 船は離れる 我が身は残る

 身は朽ちて 九相の果てに 散りぬとも 時世の寝覚め 燻りて見ゆ

 いつの日か 斃れるわれの 身の内へ 食い破りいる 怨嗟のごとく


by nambara14 | 2009-04-28 16:20 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

ピアノ・リサイタル=詩



    ピアノ・リサイタル

          ― エフゲニー・キーシンに捧ぐ―
 

 指が鍵盤に触れたと思う間もなく
 魔法のような音のホログラフィーが
 次から次へと空中へ放り出され
 花火のように輝いては消えていく

 聴衆は催眠術にかかったように
 魂を奪われ陶然と楽の園をさすらう
 わしづかみされた胸が激しく波打つ
 寄せては引き引いては寄せる大波

 白い肌を紅潮させたピアニストが
 アンコール曲を弾くたびに
 ホールは嵐のような興奮に包まれる

 ステージの傍らで胸に手を当てて
 ピアニストが最後のあいさつをすると
 我に返った聴衆がゆっくり席を立ち始める


by nambara14 | 2009-04-27 15:44 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

愛伝徹底=短歌



     愛伝徹底


 蓼を食う 虫を捕らえる ボタニカル 光合成の 萌える初夏

 タンジブル アンタッチャブル 柔肌に 触れもみたいぞ 道なき道を

 救心の 服用作用 整体の 旧態依然 カツ丼が好き

    ーーー

     注: 「愛伝徹底」は、アイデンティティ、と読ませます。

    もちろん、「愛を徹底して伝えよ! 」と「アイデンティティ」 を掛けています。
by nambara14 | 2009-04-23 11:52 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

アイデンティティ=詩



    アイデンティティ


 行方不明になった男
 身寄りはないが 明るい表情をしていた
 なにで生計を立てていたのか
 なんという名前だったのか定かではない

 どんなに大きな顔でのさばろうと
 物陰でひっそり過ごそうと
 息を引き取るまでは
 自分は自分であり続ける

 男が帰ってくる
 半裸で しわだらけの顔で 
 記憶を失ったまま

 たしかに
 「自分」が帰ってきた
 だれも確かめることはできなかったが



by nambara14 | 2009-04-22 16:08 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

yahoo=詩



     Yahoo
 

 Yahooをはじめて見たとき
 「ヤッホー」と読むのかと思った!

 家畜人「ヤプー」というのも連想した

 ヤフーとは日本語的には美しくない発音だと
 はじめはそんなふうに感じた

 日本語は、「あ」と「お」の発音が耳ざわりがいいとされている。

 たとえば、「いやん!」「ええっ?」「うむ」より、
 「ああ、いいわ!」「おおすばらしい!」と言った感じ。

 イヤ・フー、破風、藪、やヴぁい、やべ、やだ、やなアホ。

 ヤッホー、ではなく、ヤフー!?
 YAHOO!




by nambara14 | 2009-04-20 13:21 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(2)

コントロール=詩



   コントロール


直球とフォークしかない
内角をえぐれ
外角に落とせ
ストライクからボールになるように

ちがうちがう
ぎりぎりのところを
緩急をつけて狙うんだ
そうそうその調子

いやいや狂いだしたぞ
絶妙から乱調へ
疲れると指の押さえがきかなくなって

フォアボールの連発
さもなければ痛打
茫然と立ちすくむ ここはどこ?


by nambara14 | 2009-04-20 10:41 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

水の約束=詩



     水の約束


 少女はさっと手を一振りすると
 わたしの手のひらに水の雫をこぼした
 これが乾くまで目をつぶっているようにと
 目を開けたら少女はいなくなると

 聞こえるのは風の音
 葉の擦れる音 甲高い鳥の声だけ
 鼻歌を歌いながら蒸発するのを待った
 眠気を催したのは好都合だと思えた

 だが手のひらの水はすこしも乾かない
 いったいどんな液体を注いだのだろうか
 確かめてみたいが 目を開けたら元も子もなくなる
 眠ってもいけないと苛立つ心が育ち始める

 時間を数えはじめてみてはそのたびにわからなくなってしまう
 すこし歩いてみるがなにかにつまずいて転んだ
 必死に目を開けないようにこらえて
 濡れたままの手のひらをもてあまして




by nambara14 | 2009-04-17 22:53 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

旅人=詩


 
     旅 人


 ハンマー音に叩かれながら
 ひとりの男が目覚める
 どこまでも高いところへと誘うアルプスの空
 一睡もしない前夜の訳はだれも聞かず

 ぼんやりと浮かんでくる富嶽三十六景
 据わりの悪いクッションにあぐらをかいて
 ご飯と味噌汁を思わず手に取りそうになるが
 気がつけばこげ茶色のパンにコーヒーが添えられている

 かつてあの偉大な人物が歩いた小道に沿って小川が流れ
 犬を連れた女性が一瞥もくれずに通り過ぎていった
 ごつごつした木立の陰で胸をつまらせているのは
 とりたてて記述されることもないひとりの旅人

 かならずしも同じところで立ち止まるわけではない
 いつしか迷子になって地図に首っ引き
 行きずりの地元の老夫婦に最寄の鉄道駅を尋ねる
 言葉は通じず愛想笑いをして去っていく後姿をいつまでも見守る



by nambara14 | 2009-04-17 22:14 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

消滅=短詩



 
       消滅


 手が消え 足がしびれ 耳が遠のき 目がぼやける

 瞼を閉じても 目が回る メールストロームの渦中

 叩け 起こせ つねれ 引っ掻け 切れ 突き刺せ

 一面の砂浜 一面の海原 一面の朦朧 



by nambara14 | 2009-04-17 13:13 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)