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花火=詩


        
    花火


薄暮の空の下に
待ちきれない見物客は押し寄せる

場所取りの先陣がシートを敷き詰め
飲み食いの買出しも済ませてある

ざわざわとした界隈へ
しだいに夜の闇が降りてくる

花火師はパソコンを操作して
今夜のショーの段取りをチェックする

花火作りに費やした時間が
ずしりと花火師の胸を重くする

頭の中の設計図どおりに
いくつもの小玉を丁寧に積んでいく

少しのズレも
空の上では大きな輪のゆがみになる

なんども実験を繰り返して
完全な円形を作り出した

計算するシナリオと
感情移入する一発一発

晴れた空が暮れ
一筋の光の精子が昇っていく

どよめきに次ぐどよめき
シルエットが上向き下向く

大きく花開く花火
しだれが連なる花火

花火のずっと先にあるはずの
天上界

光に遅れる音の鈍重
間の抜けた現実

きらきらと輝く花びらが
浴衣姿を浮かび上がらせる

ストロボライトが連れて行く
フェアリーテール

どこかに紛れ込む
嬉しさと悲しさが融合する

大輪の花が完全な円を描くと
魂が抜ける

花火師は力尽きて
迷子になる

夏の夜は銀河へと飛んで行き
ちいさな人間たちは地面に帰る










by nambara14 | 2009-02-27 23:48 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

砂上楼閣=短歌



    砂上楼閣


ちょんの間の 座敷わらしか 夢の中 
化けた狐の しっぽ抱えて

外界の 淫らな腕を つかまれて
惑乱腐乱 砂上楼閣 

顔のない 女体ばかりが 浮き出して
もぐらたたきの 男のロウバイ


by nambara14 | 2009-02-25 13:48 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

ドッキリカメラ=詩



     ドッキリカメラ


目の大きな女性がわたしを見ている
知らない女性だ

人違いだと思って振り返るが
だれもいない

目がわるいのかと疑うが
視線はたしかにわたしに向けられている   

こんな年頃の女性が
なにを求めているのだろう

年老いて身なりもありきたりのわたしに
とりたてて金も力もなく名もないわたしに

おそらくなにかのテレビ番組で
だれかに微笑みかけろというオーダーを受けたか

一時の気まぐれが
彼女のいたずら心をくすぐったのだろう

空想の中で一分後のシーンを見ると
彼女は消えうせている

現実はと言えば 
彼女が笑い続けている

どうしたらいいのだろう
自分がいまどこにいるのかさえわからなくなる

このまま時間が経っていくのか
どうやってじりじりとした時間をやりすごせるだろう    

ドッキリカメラの看板がもうじき出るはずだ
わたしの心臓は高鳴りいまにも破裂しそうだ



by nambara14 | 2009-02-23 11:46 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

ハードタッチ=詩


    ハードタッチ


手を載せると足は折れる
肩を叩くと胴体が砕け散る

囁くと身体が飛び去り
地団駄を踏むと地面が割れる

海辺に出れば砂がめり込み
泳げば津波が押し寄せる

一発の砲弾は砂漠を吹き飛ばし
一基の核弾頭は地球を消滅させる

加減乗除のできない高性能ロボット
太陽エネルギーを食べて生き続ける

人っ子一人いない死火山の頂上で
永遠の途中のシナリオを考えている

生命体はいかに発見されるか
いかに再生するかこの宇宙の終りまでに


by nambara14 | 2009-02-20 13:20 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

ソフトタッチ=詩


    ソフトタッチ


突っ伏していた顔についた畳の模様
蝶が飛び立つ

赤いセロファンを通した光が染める肌
するりと脱ぎ捨てる

型押しした最中
ぷるんとしたこんにゃく

曲げるバネ
飛び出す弾丸

石膏でかたどられた空虚
肉体を去る唯心論

たがいにすり抜けあうシルエット
統計上は稠密な人口密度

決してあらわになることの無い内部が
違和をこらえている


by nambara14 | 2009-02-19 22:20 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

試みの五感=詩



      試みの五感



目の見えないひとに
ボッティチェッリの「ヴィーナス誕生」を説明します

海の泡から生まれた裸の女性が絵の真ん中にいます
侍女が薄物でヴィーナスの体を隠そうとしています

耳の聞こえない人に
ベートーヴェンの「運命」を説明します

タタタターンと手のひらを叩いてみせます
山谷の曲線を背中に指でなぞってみます

鼻の利かない人に
オーデコロンの説明をします

バラ園と香水製造工場のようすを示します
香水を吹きかける女性の胸元をアップします

味のわからないひとに
懐石料理の説明をします

趣のある食器に盛られた料理の色合いを示します
料理を口に運ぶひとの表情を示します

触覚のないひとに
キスの感触を説明します

やわらかな唇を示します
キスをしているシルエットを示します

五感のないひとに
生きていることを説明します

あなたの五感がわたしたちを感じることができなくても
もうひとつの感覚があなたにわたしたちを感じさせます





by nambara14 | 2009-02-16 15:09 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

新しい一歩=短歌

 
     
新しい一歩


天体の 深く遠くへ 向かう旅 螺旋のごとく 戻りつつ行く

あすはなく きょうを生きゆく 覚悟あり まず一杯の 茶を点てて飲む

一区切り 次の区切りは 遠近法 騙し絵に入る ぐるっと先へ



by nambara14 | 2009-02-09 13:16 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

還暦=短歌




         還 暦



 破れ目を 継ぎつつ纏い 来し方の

 涸れぬ涙の 袖に拭えば


 
 顧みる 我が足跡は 霞みいて

 行く手も見えぬ 導きの杖



 茫然と 佇む我に 手を伸べて

 迷いの道を 共に行く影 




by nambara14 | 2009-02-07 15:46 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)



           即興曲 『 還 暦 』


      と と ち の残響が減衰しきれば おっと
      春風は立たねばならぬ ト短調からハ長調へ
      
      暦をめくれば はらり落ちる涙 ぬぐうハンカチは
      とうに携帯しない手の中でぶるるん ケイタイ鳴って

      五と九に別れを告げ 六と〇にあいさつを述べて
      ぐるり巡り来たのは誰の来歴 綴じ損ないの 書き損じ

      赤いものは纏わぬが 砂塵にまぎれて 盛装すれば
      晴れ渡った空に 突然 不協和音が響き渡る

      未完成のソナタ 提示したはずの主題さえ行方不明
      ままよ ヴァレンタインへの展開は危機に瀕するとも 




by nambara14 | 2009-02-06 13:57 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)

節分=俳句



      節 分

豆まかず 赤鬼食って 福は内

恵方巻き 切ってむしゃむしゃ 関東風

言葉なく しぐさなくても 鬼は外 


by nambara14 | 2009-02-04 14:04 | 五七五系短詩 | Comments(0)