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Requiem for R



 
ーRを悼むー

   


突然の 逝去の知らせ 身の内は 言葉失い 崩れ落つ膝

問いかけて 問いかけて なお 藪の中 命はかくも 過重の錘

パノラマに 遊ぶ家族の 子供らの 笑顔は消えて この死化粧

あのときの 声は響くも 今ここに 別れの言葉 交わすすべ無し

災厄も だれかのせいに したいもの 悲しすぎるよ 耐えられなくて

砂漠にも 蜃気楼かは 光ある 触れてやさしい 緑のゆらぎ




by nambara14 | 2008-06-30 14:35 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

(酷暑荘)=俳句



(酷暑荘)



意地悪も  共同住民  酷暑荘

いやなひと  だれの顔して  梅雨もよう

ひねくれて  当たり散らして  夏をやる

しあわせは  どんなかたちか  入道雲

ふしあわせ  涙は見せぬ  すだれ越し

弱いのは  罪じゃないよね  夕涼み





by nambara14 | 2008-06-18 22:03 | 五七五系短詩 | Comments(2)

(蚊帳の外)=俳句



     (蚊帳の外)


死ぬまでは  生きるしかない 炎天下

収穫を 上回る付け 背負う夏

この世には たったひとりで 梅雨に泣く

だれひとり 心開けぬ 夏の闇

当り散らす 猛暑の拳 空を切る

愛せない さまよう心 蚊帳の外

ぐらっと来て 梅雨びたる地を 突き崩す


by nambara14 | 2008-06-16 15:09 | 五七五系短詩 | Comments(0)

解体新書(=詩)




     解体新書/南原充士



その部屋はまるで無重力空間のようだ
カズヤとカオリは隣り合ってパソコン画面を見ている
ふわふわしているのは空間だろうかそれとも気持ちだろうか
多分わたしは今 三千年後を透視しているはずだ
西暦五十一世紀―――
外見上は別に今の世界と際立った違いはないように見える
だがところどころにこうしたふしぎな部屋みたいなものがあって
それはどうやらゲームセンターとでも言うべきものらしいのだ
(カズヤ、きょうの歴史の時間に解体新書のこと習ったよ)
(じゃあ、カオリ、歴史ゲームやろうか)
ふたりはなにやら画面に手を触れなんどかクリックしているようだ
ふたりはそのつど相談しているらしく笑いがこぼれる

設定が終わると画面は飛び
江戸時代の小塚原の刑場が現れる
「スギタどの、これを御覧なされ、ここにある内臓を」
腑分けを行う老人が刑死した死体の腹部を切り裂き
内部を開いて数人の医師たちに指し示す
みななにやら西洋の書物を手にしている
腑分けされた死体の腹部から引き出される大腸や胃や肝臓を
書物にある図と比べてみてあまりにそっくりなのに驚く
「マエノどの いかがでございますかな この血管は」
「いかにもいかにも またこの筋のごときもの はたまた
この管のごときもの そしてこの節のごときもの
こうして臓器を包んでいる膜がございますな」

カズヤはスギタに扮している
カオリはマエノに扮している
その日の腑分けの経験はかれらにショックを与えた
彼らが手にしていた書物はオランダ語で書かれた医学書だった
「ターヘルアナトミア」というのがタイトルだった
それからというもの数名の医師が集まっては和訳作業にとりかかった

どのようにしたのかカズヤがどこかをクリックすると時間は三年飛んだ
スギタがうれしそうに和訳した書物を眺めている
見れば「解体新書」と題されている
ぱらりとめくれば人体の解剖図が数葉収められている
《これは漢方医学から西洋医学への大転換のきっかけとなるだろう》
マエノは仲間の中でオランダ語がいちばんできたので
最大の功労者だったが なぜか訳者として名前を連ねなかった
マエノもまた歴史を切り開いたことに満足していたにちがいない

カオリがカズヤの手をとりながらどこかをクリックしたらしい
すると年老いたスギタが熱心に筆を動かしている姿が見える
いまやスギタは隠居の身で 解体新書のことも遠い夢のような気がする
しかし文机の上に置かれた原稿はうずたかく積もり
どうやら今最後の一枚を書き終えたらしい
スギタは伸びをし 曲がった腰をたたいた
原稿をそろえて見れば表紙には「蘭学事始」と読める

ふたりはこれで大体わかったねというようにうなずきあった
クリックと同時にふたりはもとの部屋に戻ってきた
(カズヤ、おもしろかったね
こんどは平成時代に行ってみようか)
(そうだね、江戸時代はおもしろかったね、カオリ。
明治維新から大正時代、昭和時代、平成時代のころって
この国がいちばん進んだ時代だね また遊びに行こうね)
二人はゲームセンターを出てどこかへ歩いていった
見なれた都会の雑踏の中へとふたりの姿はたちまち見えなくなった

透視にくたびれたわたしも 軽く目をつぶり一息深呼吸をする
《そして おそらく わたしは一瞬にして 今に戻ってしまっている(はずだ)》



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  上の作品は、「SPACE79」に発表したもの。
  
  杉田玄白、前野良沢などが苦労して翻訳したのが「解体新書」。
  医学の発達には、社会意識の変革がきわめて重要だったことがわかる。
 
  人間社会は、タブーだらけだ。あとから考えればあたりまえのことでも、その時々に
 血みどろの努力や犠牲によって社会変革は達成されてきたのだという冷厳な歴史の事実がある。

  「蘭学事始」は、杉田玄白が、晩年、あらわした回想録だが、「解体新書」翻訳の苦労話や裏話がわかっておもしろい。

  新しいことに挑戦することはたいへんだが、やはり、かっいいね!

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by nambara14 | 2008-06-15 22:19 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

(遡る川)




(遡る川)


酔いどれて たどり着くまで ふわふわの 雲の海原 まぎれつつ打つ

突然の 知らせは重く 胸ふたぐ 幻の世の 夢の葉と散れ

戻せない 時間を戻る カヌーにて 遡る川 遊びいる子ら




by nambara14 | 2008-06-14 12:33 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

(歌を忘れて)=短歌



(歌を忘れて)


襲撃の 現場に向かう サイレンの 音のひずみに 狂乱の耳

わけもなく 人殺したい 脳幹の 面を覆う 気弱な素顔

夢もなく 希望もなくて いら立ちの 群衆もまた 歌を忘れて




by nambara14 | 2008-06-10 15:09 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

(悪夢の後)=俳句



(悪夢の後)


血をぬぐう 現場を夏日 照りかえす

まちがいの 文脈ばかり  団扇振る

とりあえず つながってるよ がくあじさい





by nambara14 | 2008-06-10 14:52 | 五七五系短詩 | Comments(0)

(冷やし蕎麦)=俳句



(冷やし蕎麦)


伸びすぎた 髪をなびかせ  夏の庭

どたばたの 外出すれば  梅雨の顔

隠れ家に なにを隠して 冷やし蕎麦




by nambara14 | 2008-06-08 17:42 | 五七五系短詩 | Comments(0)


     (恋にしかめやも)


とりたてて することもない みなつきの 午後は魔法の 指に屈する

白金も 黄金も玉も なにせんに まされる宝 恋にしかめやも

執念の 極みに達す 猪母乱魔 引きずる老躯 屹立の壁





by nambara14 | 2008-06-06 13:54 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

ホラー=俳句



    (ホラー)


ビアホール 髄までしゃぶる うろ深し

肉そいで 骨まで砕く 夏の闇

見れば汗 触れれば小水 化け屋敷




by nambara14 | 2008-06-04 13:02 | 五七五系短詩 | Comments(0)