カテゴリ:翻訳詩(ディラン・トマスほか)( 20 )


   ブラームスの「ドイツ・レクイエム」の一節から。


「ああ、どんなに確実に生きていても、
 すべての人間は無にひとしいのです。
 それゆえに人間は幻影のように歩き回り、
 たくさんの無駄な騒ぎを起こすのです」
 
         (「第三楽章」から)

              石井不二雄 訳


Ach wie gar nichts sind alle Menschen,
die doch so sicher leben,
Sie gehen daher wie ein Schemen,
und machen ihnen viel vergebliche Unruhe;


アッハ ヴィー ガール ニヒツ ジント アッレ メンシェン、
ディー ドッホ ゾー ジッヒャー レーベン、
ジー ゲーエン ダーヘア ヴィー アイン シェーメン、
ウント マッヒェン イーネン フィール フェアゲープリッヒェ ウンルーエ、


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by nambara14 | 2017-11-23 18:44 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)


      ディラン・トマス小詩集について



 英語の詩をそれほど多く読んだわけではないが、若いころいくつかの英語の詩集を手に取ったなかでは、ディラン・トマスが心に残っていた。

 何十年も経って、最近ふとしたことから、ディラン・トマスの詩を翻訳してみようと思い立った。

 彼は1914年生まれで1953年没とあるから、活躍したのはずいぶん前のことになる。

 しかし、今読んでも「現代詩」のようなインパクトを感じることができる。

 言葉の使い方が独特でイメージもとらえにくいので、翻訳するのは容易ではないが、不思議な魅力があるから、挑戦してみたくなるのだろう。

 とりあえず既刊詩篇のうちから16篇訳してみたが、今後も折に触れて訳してみようと考えている。


―――――――――――――――――――――――――――――――


ディラン・トマス 小詩集


           南原充士 訳


   目 次


.プロローグ

2. 緑のヒューズを通って花を咲かせる力が
3.
十月の風が傷めつけるときはとりわけ ...
4. 愛の最初の熱狂から疫病へ
5. はじめに
6. おれは眠りと仲良くなった
7. おれは自分の起源の夢を見た
8. 複雑なイメージの中でおれは
9. あなたはおれの父親になってくれませんか?

10.じっと待て、カッコーの月のこれら古代の分よ
11. その文書に署名をした手は

12.そして死に支配させはしない

13.祈祷者の会話

14.十月の詩

15.安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで

16.エレジー

.

――――――――――――――――――――――――――――――――――

(注)上記の詩篇の並べ方については、An Aldine PaperbackのMiscellany Oneを参考にした。


  お読みになった方がいらっしゃったら、ぜひ感想やご意見をお寄せいただきたい。

 よろしくお願いいたします。


なお、ディラン・トマスについては、こちらをご覧ください。

 →ディラン・トマス


     

 


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by nambara14 | 2016-08-19 17:48 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)



      プロローグ


                 ディラン・トマス

                     南原充士 訳


神が疾走させてきた夏の終わりに

急流のサーモン色の太陽のもとで

いま速度をゆるめていくこの日

チッチという声と果実の絡まり合う

危険な岩々の上の

海に揺られるわが家で

森の躍動する足元の

泡、笛、ひれ、羽軸

あの魚売り女の十字架のある

泡の浮くヒトデの砂のそばには

カモメ、ワカバト、ザルガイ、カタツムリ

カラスのように真っ暗なあちらのほうには

日没のネットに跪く雲にタックルされる人々

天国の近くにいる鵞鳥、突き刺している少年たち、

七つの海について語るサギそして貝たち

高くて乾いた藁の茎のように

宗教的な風をつかまえる塔のある

九つの日の夜の都市から離れてある永遠の水域

騒がしい中だけれどもおれは

きみたち異国人のために歌う

(歌は燃えるようで装飾的な行為であるが

世界の変わり目にある森の

鳥たちの火よ

わが白鳥のために音を広がらせよ)

海にさらされた葉っぱから

それは木の葉のように舞い落ち たちまち

真夏の夜へと砕けて不死のものとなる

海の方ではサケが日光のかけらを飲んだ

そしておれがいかに脊椎を持った人間であるかをきみたちに知らせるために

おれがいろいろな形をしたものをたたき切ると

愚かな白鳥が軽く波立つ湾のたそがれを青くしてしまう

さらにこの星が誇るものはと言えば、吠えられた鳥、

生まれた海、裂かれた人、祝福された血

聞け:おれがトランペットで場所を知らせるから

魚からにぎやかな丘まで!見よ:

洪水が始まるから

愛情の限りを尽くして

おれは大きな音を立てる箱舟を造る

恐怖の噴水の頂点から

読み取れる怒りが、おやまあ、

融けて山のようになって

傷で動けず

羊のように白いうつろな農場を流れすぎる


わが腕の中にあるウェールズでは

ほー、そこで、城を警備している

おまえ 歌の王者ふくろうよ

月光のようにひらひらした走りや跳躍

小さな谷はシカを囲い殺した!

ハロー、測量された丘の上で

おお、ほーほー鳴く、ウェールズのうやうやしいミヤマガラスと

同じぐらい黒い色をしたわが首輪のついた鳩が

森の称賛を求めてくうくう鳴く

その巣からブルーノートを月の光にかざして

ダイシャクシギの群れへと送る

ほー、騒がしい一族よ、

おしゃべりなケープの上の嘴には

悲しみを伴ったアガペー、

ヘイ、馬の背の丘には、警官を

追い払う野兎!それは

この狐の灯の中で

おれが打ったり叩き切ったりするときに

わが洪水用の舟がカンカン立てる音を聞く
(わが騒ぎといかさまのためのアンヴィルの衝突、

舌のあるホコリタケの上のこの調べ)

だが神の造ったでこぼこした土地の上の

仲良しの動物たち

(神の獣性に敬礼!)

しーっ、イノシシの背の森で安らかに眠る獣たち!

乾草の山のあるうつろな農場が

大量の水流の中で

コッコと鳴き しがみつく

そして小屋の屋根では雄鶏とカラスの戦争だ!

ひれのある、皮のある、羽のある隣人たちの王国よ

来たれ、湾にあるわがパッチワークの箱舟と月の光を飲み込むノアへと

皮とうろこと毛とともに

羊と教会の おぼれた荘重な鐘だけが

日が沈むとき貧しい平和を騒がせる

そして暗闇がすべての聖なる野を覆う

それからおれたちだけで馬に乗って出かけよう

ウェールズの星のもとに

叫べ、多くの箱舟よ!

冠水した土地を通って

それらの愛する人々を一緒に乗せて

それらは丘から丘へと木の島のように移動するだろう

ハロー、笛を持った舳先のようなかたちのわが鳩よ!

あ ほい、老いた海洋生物のような足をもった狐よ、

オスのシジュウカラとびまん性軸索損傷のネズミよ!

おれの箱舟は太陽のもとで歌う

神が疾走させてきた夏の終わりに

そして洪水が今花盛りだ






Prologue


- Poem by Dylan Thomas


This day winding down now
At God speeded summer's end
In the torrent salmon sun,
In my seashaken house
On a breakneck of rocks
Tangled with chirrup and fruit,
Froth, flute, fin, and quill
At a wood's dancing hoof,
By scummed, starfish sands
With their fishwife cross
Gulls, pipers, cockles, and snails,
Out there, crow black, men
Tackled with clouds, who kneel
To the sunset nets,
Geese nearly in heaven, boys
Stabbing, and herons, and shells
That speak seven seas,
Eternal waters away
From the cities of nine
Days' night whose towers will catch
In the religious wind
Like stalks of tall, dry straw,
At poor peace I sing
To you strangers (though song
Is a burning and crested act,
The fire of birds in
The world's turning wood,
For my swan, splay sounds),
Out of these seathumbed leaves
That will fly and fall
Like leaves of trees and as soon
Crumble and undie
Into the dogdayed night.
Seaward the salmon, sucked sun slips,
And the dumb swans drub blue
My dabbed bay's dusk, as I hack
This rumpus of shapes
For you to know
How I, a spining man,
Glory also this star, bird
Roared, sea born, man torn, blood blest.
Hark: I trumpet the place,
From fish to jumping hill! Look:
I build my bellowing ark
To the best of my love
As the flood begins,
Out of the fountainhead
Of fear, rage read, manalive,
Molten and mountainous to stream
Over the wound asleep
Sheep white hollow farms

To Wales in my arms.
Hoo, there, in castle keep,
You king singsong owls, who moonbeam
The flickering runs and dive
The dingle furred deer dead!
Huloo, on plumbed bryns,
O my ruffled ring dove
in the hooting, nearly dark
With Welsh and reverent rook,
Coo rooning the woods' praise,
who moons her blue notes from her nest
Down to the curlew herd!
Ho, hullaballoing clan
Agape, with woe
In your beaks, on the gabbing capes!
Heigh, on horseback hill, jack
Whisking hare! who
Hears, there, this fox light, my flood ship's
Clangour as I hew and smite

(A clash ofanvils for my
Hubbub and fiddle, this tune
On a toungued puffball)
But animals thick as theives
On God's rough tumbling grounds
(Hail to His beasthood!).
Beasts who sleep good and thin,
Hist, in hogback woods! The haystacked
Hollow farms in a throng
Of waters cluck and cling,
And barnroofs cockcrow war!
O kingdom of neighbors finned
Felled and quilled, flash to my patch
Work ark and the moonshine
Drinking Noah of the bay,
With pelt, and scale, and fleece:
Only the drowned deep bells
Of sheep and churches noise
Poor peace as the sun sets
And dark shoals every holy field.
We will ride out alone then,
Under the stars of Wales,
Cry, multitudes of arks! Across
The water lidded lands,
Manned with their loves they'll move
Like wooden islands, hill to hill.
Hulloo, my prowed dove with a flute!
Ahoy, old, sea-legged fox,
Tom tit and Dai mouse!
My ark sings in the sun
At God speeded summer's end
And the flood flowers now.


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by nambara14 | 2016-08-19 16:03 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)



エレジー


             ディラン・トマス

                 南原充士 訳 

 

死ぬにはプライドが高すぎたかれが一文無しで盲目になって死んだ

最悪のやり方をかれは変えようとはしなかった

かれの小さなプライドの中では勇敢だった 冷たくて親切な男


その最悪の日に、おお、とわに、草の下に、愛のうちに、

ついに最後の交差した丘の上にかれが軽やかに横たわることを

そしてそこで成長することを祈る


多くの人々の中では若いほうだったが、決して迷ってしまうこともなく

その死後数えきれないほどの日数が経過した

結局かれは母の胸にあこがれていたということではあったのだが

どちらが休息でどちらが埃だったのだろう、そしてやさしい大地において

盲目にして呪われた 死の最悪の正義

かれにはいかなる休息も与えられないが、父親を与えられそして発見されるだろう


おれは、部屋の中、かれの盲目のベッドのそばにしゃがんで祈った、

静まり返った家で、正午の一分前に、

夜に、そして光の中で。死者の川が


おれがつかんだかれの哀れな手に静脈のように流れた

そしてかれの見えない目を通しておれは海のルーツの方を見た

(苦悩に満ちた四分の三盲目の老人

あのお方とかれは決して決しておれの心から出ていくことはないだろうと

叫ぶほどおれはプライドが高くはない

かれの骨全体が泣く、痛み以外は貧しく

かれは純真だったので、死ぬことを恐れた

かれは神を嫌ったが、かれという人間は単純だった

燃えるようなプライドを持った勇敢で親切な老人だった

その家の家具はかれのものだった、かれが所有していたかれの本

赤ん坊のころでさえかれは泣かなかった

ましてや今は泣くことはなかった、かれの秘密の傷のことを除いては

かれの目から最後の光が滑り出て

ここで大空の光にとけこむのをおれは見た

老人はおれとともにいる、はたしておれはどこに行くのか

悪の世界が雪のように降ってきた

息子の目の牧草地を歩きながら

かれは死ぬときに泣いた、


息もせず世界が消え失せてしまうときの球体の最後の音を

最後に恐れながら、

泣くにはプライドが高すぎ、涙をたしかめるには弱すぎて、

そして盲目と死というふたつの夜の間にはさまって

おお、かれが死ななければならないという最も深い傷

最悪の日に、おお、かれはその目の涙を隠すことができた、

泣くにはプライドが高すぎて

おれが死ぬまでかれはおれのそばを離れることはないだろう)


Elegy


- Poem by Dylan Thomas


Too proud to die; broken and blind he died
The darkest way, and did not turn away,
A cold kind man brave in his narrow pride

On that darkest day, Oh, forever may
He lie lightly, at last, on the last, crossed
Hill, under the grass, in love, and there grow

Young among the long flocks, and never lie lost
Or still all the numberless days of his death, though
Above all he longed for his mother's breast

Which was rest and dust, and in the kind ground
The darkest justice of death, blind and unblessed.
Let him find no rest but be fathered and found,

I prayed in the crouching room, by his blind bed,
In the muted house, one minute before
Noon, and night, and light. the rivers of the dead

Veined his poor hand I held, and I saw
Through his unseeing eyes to the roots of the sea.
(An old tormented man three-quarters blind,

I am not too proud to cry that He and he
Will never never go out of my mind.
All his bones crying, and poor in all but pain,

Being innocent, he dreaded that he died
Hating his God, but what he was was plain:
An old kind man brave in his burning pride.

The sticks of the house were his; his books he owned.
Even as a baby he had never cried;
Nor did he now, save to his secret wound.

Out of his eyes I saw the last light glide.
Here among the light of the lording sky
An old man is with me where I go

Walking in the meadows of his son's eye
On whom a world of ills came down like snow.
He cried as he died, fearing at last the spheres'

Last sound, the world going out without a breath:
Too proud to cry, too frail to check the tears,
And caught between two nights, blindness and death.


O deepest wound of all that he should die
On that darkest day. oh, he could hide
The tears out of his eyes, too proud to cry.

Until I die he will not leave my side.)


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by nambara14 | 2016-08-16 10:52 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)


安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで


                ディラン・トマス

                   南原充士 訳


安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで

老人は一日の終わりに燃え盛り大騒ぎすべきだ

消えてゆく光に対して怒り狂おう


賢い人々はその最期を迎えるとき暗闇が正しいことを知っているが

かれらの言葉は雷光を発しなかったのだから かれらは

安らかな夜 穏やかな眠りにはつかない


最期の波が寄せてくるとき いかに明るいかと叫ぶ善良な人々

弱々しいしぐさのかれらでも緑の湾の中で踊れたかもしれない

消えてゆく光に対して怒り狂おう


飛び行く太陽をつかまえて歌った荒々しい人々は

遅ればせながら 飛行途中の太陽を悲しませたことを知る

安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで


今はの際に失われつつある視力で見る厳かな人々

盲目だってすい星のように燃えて陽気でありうる

消えてゆく光に対して怒り狂おう


そして、あなた、わが父よ、そんな悲しみの極みにあって、

あなたの激しい涙でおれを呪い祝福してくれることを願う

安らかな夜 穏やかな眠りにはつかないで

消えてゆく光に対して怒り狂おう


Do Not Go Gentle Into That Good Night


- Poem by Dylan Thomas


Do not go gentle into that good night,
Old age should burn and rave at close of day;
Rage, rage against the dying of the light.

Though wise men at their end know dark is right,
Because their words had forked no lightning they
Do not go gentle into that good night.

Good men, the last wave by, crying how bright
Their frail deeds might have danced in a green bay,
Rage, rage against the dying of the light.

Wild men who caught and sang the sun in flight,
And learn, too late, they grieved it on its way,
Do not go gentle into that good night.

Grave men, near death, who see with blinding sight
Blind eyes could blaze like meteors and be gay,
Rage, rage against the dying of the light.

And you, my father, there on that sad height,
Curse, bless, me now with your fierce tears, I pray.
Do not go gentle into that good night.
Rage, rage against the dying of the light.


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by nambara14 | 2016-08-15 10:46 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)


 十月の詩

              

                ディラン・トマス

                  南原充士 訳


それは天国へのわが30回目の年だった

目覚めると港や隣の森から声が聞こえ

ムール貝が群れ サギが

司祭のように岸辺に降り立った

祈れる水やカモメとミヤマガラスの声

そしてヨットが網を張った壁に当たる音が

朝の合図だった

おれはと言えばその時

まだ眠っている街へと歩いていったのだった


おれの誕生日は

農場や白馬の上をおれの名前を掲げて飛ぶ水鳥と

翼をもった木の鳥で始まった

そして雨の多い秋の中

おれは立ち上がり

過ぎ去った日々の驟雨の中を出歩いた

おれが境界線を越える道を辿ったとき

高潮が来てサギが潜った

そして街の門は街が目覚めたとき閉められた


逆巻く雲の中の元気なヒバリと

囀るブラックバードに縁どられる道端の茂みと

十月の太陽

いかにも夏らしい

丘の肩

ここにはお気に入りの気候があった そして

朝 突然甘い声の歌手たちがやってくる

おれがさまよい そしておれの下方のはるかな森の中で 雨を絞り出す

風が冷たく吹くのに耳を傾けたことのあるこの場所へと


小さくなる港と海の上に降る薄暗い雨は

靄の中から角を出したカタツムリほどの大きさの教会を

そしてフクロウのように茶色い城を濡らした

だが春と夏のすべての庭は楽しい物語の中で花咲いていた

境界線の向こうまでそしてヒバリでいっぱいの雲の下で

そこでこそおれは

わが誕生日を驚きに満ちたものにできたのだった

ただ天候が変わりつつあったのだが


それは愉快な国から去っていった

そして違う空気と青空に変わった空から

ふたたび不思議な夏が流れ落ちてきた

林檎と

梨と赤いスグリの

そしておれは天気の変わり目にはっきりと

子供が忘れていた朝を見た

そのときかれは母といっしょに

太陽光の寓話と

緑のチャペルの伝説の中を歩いて行った

そしてかれの涙がおれの頬を燃やしかれの心臓がおれの心臓に入り込んだとい

言い古された幼年期という野原

それらは森や川や海だった

そこでは 死者が耳を傾ける夏に

子供が かれの本当の喜びを 木々や石や潮流の魚にささやいたのだった

そしてその神秘が

水や囀る鳥たちの中でなお生き続けて歌うのだった

そしてそこでこそおれはわが誕生日を驚きに満ちたものにできたのだった

ただ天候が変わろうとしていたのだったが。そして

随分前に亡くなった子供が

太陽の日差しの中で燃えながら歌ったのだった

それは天国へのわが30回目の年だった

そこはそのとき夏の真昼だった

ただ下に広がる街では木々の葉が十月の血の色をしていたのだったが

おお、年の改まるとき この高い丘の上で

わが心の真実がいまなお歌われ続けることを!



Poem In October


- Poem by Dylan Thomas


It was my thirtieth year to heaven
Woke to my hearing from harbour and neighbour wood
And the mussel pooled and the heron
Priested shore
The morning beckon
With water praying and call of seagull and rook
And the knock of sailing boats on the net webbed wall
Myself to set foot
That second
In the still sleeping town and set forth.

My birthday began with the water-
Birds and the birds of the winged trees flying my name
Above the farms and the white horses
And I rose
In rainy autumn
And walked abroad in a shower of all my days.
High tide and the heron dived when I took the road
Over the border
And the gates
Of the town closed as the town awoke.

A springful of larks in a rolling
Cloud and the roadside bushes brimming with whistling
Blackbirds and the sun of October
Summery
On the hill's shoulder,
Here were fond climates and sweet singers suddenly
Come in the morning where I wandered and listened
To the rain wringing
Wind blow cold
In the wood faraway under me.

Pale rain over the dwindling harbour
And over the sea wet church the size of a snail
With its horns through mist and the castle
Brown as owls
But all the gardens
Of spring and summer were blooming in the tall tales
Beyond the border and under the lark full cloud.
There could I marvel
My birthday
Away but the weather turned around.

It turned away from the blithe country
And down the other air and the blue altered sky
Streamed again a wonder of summer
With apples
Pears and red currants
And I saw in the turning so clearly a child's
Forgotten mornings when he walked with his mother
Through the parables
Of sun light
And the legends of the green chapels

And the twice told fields of infancy
That his tears burned my cheeks and his heart moved in mine.
These were the woods the river and sea
Where a boy
In the listening
Summertime of the dead whispered the truth of his joy
To the trees and the stones and the fish in the tide.
And the mystery
Sang alive
Still in the water and singingbirds.

And there could I marvel my birthday
Away but the weather turned around. And the true
Joy of the long dead child sang burning
In the sun.
It was my thirtieth
Year to heaven stood there then in the summer noon
Though the town below lay leaved with October blood.
O may my heart's truth
Still be sung
On this high hill in a year's turning.


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by nambara14 | 2016-08-14 00:10 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)


 祈祷者の会話


             ディラン・トマス

                 南原充士 訳


ベッドに行こうとする子供と階段の上にいる男によって

いままさに交わされようとする祈祷者の会話

男は上の部屋で死を迎えつつある恋人のほうへ昇る

彼が眠りの中でだれのほうへ近寄ろうとしているのか気にしないひとと

彼女が死ぬのだと思って涙でいっぱいのひと


その声による暗闇の中での交代が、彼らの知るとおり、生じるだろう、

緑の大地から 階段の上の男とベッドのそばの子供から

呼応する空へと

安全な土地における眠りと死につつある恋人のために
二人の祈祷者によっていままさに口にされようとするその声


それと同じ悲しみが飛び行くだろうか、かれらはだれをなだめようとするのだろうか?

その子供は傷つかずに眠るだろうか、あるいはその男は泣くだろうか?

いままさに交わされようとする祈祷者の会話

生者と死者の交代、そして階段の上の男は

今夜は生きていて温かいこと以外 死ぬことなど見出すことはないだろう

火のような彼の心配の中で上の部屋にいる恋人、

彼がその祈りをだれに唱えるか気にしない子供は

彼が掘った墓のように深い悲しみにおぼれ、

そして眠りの目によって黒い目の波を記し、

死んで横たわるひとのほうへと階段の上の彼を引きずり上げる



   The Conversation Of Prayer


- Poem by Dylan Thomas


The conversation of prayers about to be said
By the child going to bed and the man on the stairs
Who climbs to his dying love in her high room,
The one not caring to whom in his sleep he will move
And the other full of tears that she will be dead,

Turns in the dark on the sound they know will arise
Into the answering skies from the green ground,
From the man on the stairs and the child by his bed.
The sound about to be said in the two prayers
For the sleep in a safe land and the love who dies

Will be the same grief flying. Whom shall they calm?
Shall the child sleep unharmed or the man be crying?
The conversation of prayers about to be said
Turns on the quick and the dead, and the man on the stair
To-night shall find no dying but alive and warm

In the fire of his care his love in the high room.
And the child not caring to whom he climbs his prayer
Shall drown in a grief as deep as his made grave,
And mark the dark eyed wave, through the eyes of sleep,
Dragging him up the stairs to one who lies dead.


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by nambara14 | 2016-08-11 00:33 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)


    そして死に支配させはしない


                     ディラン・トマス

                         南原充士 訳


そして死に支配させはしない

裸の死者 かれらを風と西の月の中にいる人間と同じにする

かれらの骨がきれいに拾われて きれいな骨がなくなったとき、

かれらの肘と足に星たちを付けてやろう

かれらの気が狂ったとしても 正気に戻してやろう

かれらが海に沈んでもふたたび浮かび上がらせてやろう

恋人たちが失われても愛は失われない

そして死に支配させはしない


そして死に支配させはしない

海のうねりの下で

長く横たわっているかれらを風にさらされて死なせることはしない

筋肉が壊れるとき棚の上でねじれて

車輪に巻き込まれても なおかれらは壊れない

かれらの手の中の忠誠は二つに裂け

そして一角獣の悪魔たちがかれらを走り抜ける

すべてが分裂してもかれらは割れることはない

そして死に支配させはしない


そして死に支配させはしない

カモメがかれらの耳に鳴きかけることはもうあるまい

あるいは波が岸辺で音を立てて砕けることもあるまい

風に吹かれるところでは

花は吹き付ける雨に対して頭をもたげることはない

かれらの気が狂い釘のように死んでいても

先頭の文字たちはヒナギクの花を叩きながら通り抜ける

太陽が滅びるまで太陽に侵入せよ

そして死に支配させはしない



  And Death Shall Have No Dominion


- Poem by Dylan Thomas


And death shall have no dominion.
Dead man naked they shall be one
With the man in the wind and the west moon;
When their bones are picked clean and the clean bones gone,
They shall have stars at elbow and foot;
Though they go mad they shall be sane,
Though they sink through the sea they shall rise again;
Though lovers be lost love shall not;
And death shall have no dominion.

And death shall have no dominion.
Under the windings of the sea
They lying long shall not die windily;
Twisting on racks when sinews give way,
Strapped to a wheel, yet they shall not break;
Faith in their hands shall snap in two,
And the unicorn evils run them through;
Split all ends up they shan't crack;
And death shall have no dominion.

And death shall have no dominion.
No more may gulls cry at their ears
Or waves break loud on the seashores;
Where blew a flower may a flower no more
Lift its head to the blows of the rain;
Though they be mad and dead as nails,
Heads of the characters hammer through daisies;
Break in the sun till the sun breaks down,
And death shall have no dominion.


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by nambara14 | 2016-08-05 11:19 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)

 

    ディラン・トマス英詩について


 英語の詩をそれほど多く読んだわけではないが、若いころいくつかの英語の詩集を手に取ったなかでは、ディラン・トマスが心に残っていた。

 何十年も経って、最近ふとしたことから、ディラン・トマスの詩を翻訳してみようと思い立った。
 彼は1914年生まれで1953年没とあるから、活躍したのはずいぶん前のことになる。

 しかし、今読んでも「現代詩」のようなインパクトを感じることができる。

 言葉の使い方が独特でイメージもとらえにくいので、翻訳するのは容易ではないが、不思議な魅力があるから、挑戦してみたくなるのだろう。

 とりあえず10篇訳してみたが、あと数篇で一区切りをつけようと考えている。

[ディラン・トマスの詩の和訳は、とりあえず以下の10篇です]

 
1. 緑のヒューズを通って花を咲かせる力が
2. 十月の風が傷めつけるときはとりわけ
...
3. 愛の最初の熱狂から疫病へ
4. はじめに
5. おれは眠りと仲良くなった
6. おれは自分の起源の夢を見た
7. 複雑なイメージの中でおれは
8. あなたはおれの父親になってくれませんか?
9.じっと待て、カッコーの月のこれら古代の分よ
10. その文書に署名をした手は


 お読みになった方がいらっしゃったら、ぜひ感想やご意見をお寄せいただきたい。

 よろしくお願いいたします。

なお、ディラン・トマスについては、こちらをご覧ください。

 →ディラン・トマス

 

                              平成28年7月

                                南原充士

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by nambara14 | 2016-07-22 13:20 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)



 その文書に署名した手は


            ディラン・トマス

               南原充士 訳


その文書に署名した手は街を破壊した、

五本の君主の指は息をするのにも税金を課し、

死者の天体を二倍にし、国家を半分にした

これらの五人の王は一人の王を死に至らしめた


力強い手は傾斜した肩に続く

指の関節はチョークによって挟まれる

鵞ペンは話し合いに終止符を打った殺人に

終止符を打った


その条約に署名した手は熱狂を生んだ

そして飢饉が広がり、イナゴが襲来した

偉大なのは

走り書きした名前で人間を支配する手だ


五人の王は死者を数えるが

かさぶたのできた傷をやわらげることも額に手をあてがうこともない

手が天国を支配するように手は憐れみを支配する

手は流すべき涙を持たない



The Hand That Signed The Paper


- Poem by Dylan Thomas


The hand that signed the paper felled acity;
Five sovereign fingers taxed the breath,
Doubled the globe of dead and halved a country;
These five kings did a king to death.

The mighty hand leads to a slopingshoulder,
The finger joints are cramped with chalk;
A goose's quill has put an end to murder
That put an end to talk.

The hand that signed the treaty bred afever,
And famine grew, and locusts came;
Great is the hand that holds dominion over
Man by a scribbled name.

The five kings count the dead but do not soften
The crusted wound nor pat the brow;
A hand rules pity as a hand rules heaven;
Hands have no tears to flow.


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by nambara14 | 2016-07-21 14:57 | 翻訳詩(ディラン・トマスほか) | Comments(0)