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カテゴリ:新作詩歌(平成26年)( 50 )

病院で

いらっしゃいませ、とは言わない
ありがとうございました、とも言わない
黙ってカードを受け取る
こんにちは、が聞ければベストである
待たされても仕方がない
自分の番が来るまでじっと我慢である
それでどうされましたか?
〇〇で××が△△しまして・・・
では検査をしましょう
来週また来てください
どこか悪いのでしょうか?
検査結果を見ないとはっきりしたことは言えません
なにか重大な病気の可能性がありますか?
今日のようすではそれほど心配することはないと思いますが
念のためきちんと調べておいたほうがいいと思います
わかりました
おだいじに
会計をすましても
おだいじに
病院はなにかを売るのではなく
診療投薬検査処置手術入院などへの対価を受け取る
病院には行かないのが一番でも
患者がいなければ病院は成り立たない
それでも医は仁術だから
単なる金儲けじゃなく社会貢献の面もあるから
サービスの提供をしながら
半ばは奉仕し半ばは報酬を請求する
人間の命をめぐって
医師、看護師、検査技師、事務員、経営陣と
施設、医療機器、薬剤と
巨大なシステムが作られている
病院での言葉遣いは
きっと生と死の狭間でうごめく人間の関係が
うみだしたものだと思う
by nambara14 | 2014-05-31 11:28 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

金縛り

時が進んでいくのが
おれには見えない

おれがここにいるとき
時間の船がおれを連れて行くのか

あるいは時間が空間に鑿を加えるのか
それとも自分にとっての今が時空の一単位としてあって
過去は消えうせ未来は刻々と今になるのか

過去が今に残した痕跡とは
次々に更新されて新しい過去に変わるのだろうか

時計を見ながら時間を見届けようとすると
なんだか金縛りにあうような気がする
by nambara14 | 2014-05-21 15:05 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

随意・不随意

自分は自分の体を思い通りに動かせる
週末にはフィットネスクラブでトレーニング
筋肉も発達し素早く動けて疲れも知らない
快眠快食快便ですっきりした日々を過ごしている

ときには空腹なままひとっ走りしたり
慣れない土地でスタンプラリーに挑戦したり
行きがかりでトレッキングに参加してしまっても
有り余る好奇心が枯渇する気遣いは無用だ

すべては自分で考え判断し行動する
食事に気を付け適度な休養を取り運動をする
定期的に健康診断を受け異常があればすぐ処置する

人間にできることは食うこととトイレに行くことぐらいだ
あとは自分のあずかり知らない生体が勝手にやっているのだ
たまたま乗ってしまった車みたいなものだというやつもいるのだが・・・
by nambara14 | 2014-05-21 12:57 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

原因不明

朝起きてみたら体に力が入らず立ち上がれない
昨日は元気に一日働き食欲もあった
寝ている間も熟睡していて不快なことはなかった
なにも思い当たらないのにどうしたというのだろう?

とりあえず病院に行って医者に診てもらうしかない
だれかに支えてもらわなければ動けないし
食事もとれそうもないしとても外出もできない
救急車を呼ぶほど激痛や震えや呼吸困難や嘔吐はないが

診断の結果は脳神経系統の異常だろうということで
MRI検査を受けたら一部の血管に梗塞が見られた
緊急入院ということになりベッドで安静にしているように指示された

麻痺が進まないように注意しながらのリハビリも始まり
血をさらさらにする薬も処方された
人一倍健康には注意してきたのにどうしてこんなことになるのか?
by nambara14 | 2014-05-13 14:17 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

ある歴史

ぼくはだれもにくまない
ぼくはなにもほしがらない
だれもぼくをたたかない
だれもぼくをだましたりしない
あなたはどうしてげんきなの
あなたはなにをしたいの
かれらはそのへんにとどまるだろう
かれらはあなたをみやるだろう
ながいじかんがたって
みんながいりみだれてしまった
にくみあい
うばいあい
ころしあった
そうしてだれもいなくなった

by nambara14 | 2014-05-07 14:13 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

発語以前

「・・・」と言おうとしてとどまる
「・・・」というイメージが浮かんだが
それは言葉を伴っているのか
それとも言葉と離れて存在しているのか定かではなかったので
言葉を発するにいたらなかったのか
あるいは言葉が含まれていなかったので
言葉になりようがなかったのか

なにも思わず口から言葉が出ていくことがある
無意識に発せられた言葉が
イメージを与えることがある
たとえば「仮にだ」と呟いてしまってから
カリニダードトバゴと追いかけるように言うことがある
するとトリニダード・トバゴはどのへんにあったっけ
世界地図が見えてくる

きっと意識は無意識と行き来し
かたちは色と融合し
なにかの物体は感触を引き出し
だれかの肌はかすかに匂うだろう
わかちがたい悲しみも喜びも
みな一緒になったり離れ離れになったりするのを
言葉だけですくい上げることは不可能ではないか

・・・と思いながら
ずいぶん多くの言葉を発してきてしまったなあ
発しきれなかった言葉とそれにまつわる気配や状況や思いや感情や事実を
発語以前というものがあるはずなのになあと
思いながらも 
やっぱりフライング気味に言葉にしてしまう自分に戸惑う

by nambara14 | 2014-05-03 18:28 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

書きぐせ

なにかを思えば書き記したくなることもあるし
そのままにしておきたいこともある
自分の中に欲求の仕組みがあって
手の届かないところでなにかをしたいとか
したくないとかを感じさせているのだろう
書きたくないときは無理に書こうなどと思わずに
ぶらぶらと歩いてみるに限る
自分の内部に向かいがちの気持ちを反転させて
外界へと五感を解放させてみる
風が頬や首筋を撫で髪を乱す
少し肌寒い外気の中をかまわず歩き続けると
道端に草木が息づきときには花咲いているのに気づく
雀の鳴き声が車の走る音に混じって聞き分けられ
ベビーカーを押した若い母たちに纏わりつく幼児が見える
動きやまない街のようすを見るともなく見ながら
ふと思い出す昨日の予想外の体調異変
垂れ篭める雲に陰る未来を予感せざるをえない
随分歩き続けて喉の渇きを覚え靴ズレさえ感じはじめて
最寄りのカフェに入って休息をとると
一瞬空白になった脳が急速に色彩を取り戻すのがわかる
光が差して言語中枢を刺激したせいだろうか
言葉があふれてきてなにかをつぶやいてしまう
それは書くことのできる言葉となって
記憶のページに書き付けられる
急ぐこともなく帰途についたが
ちょっとした足の痛みだけはつきまとって
それが言葉を生み出すのだった
書きたいという意欲が生まれてくるような気がしたが
どうしても書き記したいという衝動に達しなければ
放置しておくに限る
むやみに書くなどということはすべきではないと
まだら模様の意識とともに
気の向くままの歩行を続けてみる

by nambara14 | 2014-04-26 22:28 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

絶対的

混み合った電車の中で
背の高い若者や小柄の中年女性や
加齢臭のきつい老人や
大きなバッグを足元に下ろした学生や
スマホにすがりつく女子高生や
多くの乗客と押し合いへしあいしていると
この乱雑で臭いのある居心地の悪い現実は
永久に続くような気がする
けれどもしばらくしてから
最寄りの駅に行ってみれば
閑散としたありようで
電車はがらがらに空いている
沿線を眺めれば
薄の原が広がっている
あの群衆はどこに行ってしまったのか?
ひとりひとりの来し方行く末はフォローしようがないが
目の前に見える景色は
ありふれた空の移ろいと気温の変化と
多くのひとびとの常住坐臥と生業を映し出して
存在を頑丈な形態として現出させているように見える
絶対的に明日も目覚める現実があるように思い
絶対的に目覚める自分がいるように思って
飲みすぎたはずみで馬鹿笑いをし
飽きもせず同じ冗談を繰り返して
豪快な気分に身を任せてしまうが
二日酔いで胃液をとことん吐いてみれば
暗転するフィルムみたいに
しょんぼりしてしまう自分が見えてくる
この体も心も極端に危うい細胞でできているんだなあと
思い至ってちんまりした自分が見えてくる
不確実な存在であることこそ絶対的なんだと
気づいてしまうあられもない自分の心持が見えてくる




by nambara14 | 2014-04-22 10:14 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

Baton Syndrome


Baton Syndrome

A very small baton emerges from somewhere
It smells badly and adheres to anywhere easily
The medical authority announced that
A new disease broke out and spread fast
Especially in the central area of the city
It is not fatal but irritating
Furthermore the baton which causes those symptoms
Is invisible
No sensor is effective enough
No device can measure the size and shape
Though medical researchers have been trying to find a good way
For a long time
To protect you from the baton syndrome
People only feel uncomfortable
When it come s and adheres to your skin
Now people begin to complain that
The authority is to blame for the problematic situation
They also begin to doubt if there is any disease caused by such a baton
But no remarkable progress has been made so far
Maybe because the priority is not high
How itchy it is!
Basically most things are a mixture of truth and falsity
If you could not prove that the baton exists really
Then this part should be tentative
What is sure?
It smells and adheres doubtlessly
You can say “A baton!”
If the Baton Syndrome is an infectious disease


by nambara14 | 2014-04-18 14:16 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

橋の上

橋の上から光る川面を眺めていると
しだいに小型の遊覧船が近づいてくるのが見える
屋上部になんにんかの人影があり
みなひとりの女性に注目しているように見えた
カメラを向けているひとがいた
なにかの撮影に違いない
船は橋の下を潜り抜けていく
橋の上にいるひとたちがそれに気づいて
橋の一方から他方へと移動する
女優の顔を確認しそこなっているうちに
船はすぐさま遠ざかってしまう
ドラマの一場面だろうか?
状況もセリフもわかりきれなかったが
普段ほとんど目撃することのない撮影現場に遭遇して
得をしたという思いは着実に育っていった
無線機から声が聞こえて
なにかの連絡がなされようとしたのだろうが
通信手段でつながっていない者たちには
手を振るぐらいしか思いつかなかった
詮索はやめようという声が聞こえて
ぼんやりと遠くを見ていると
もはや船の姿は見えなくなり
自分もそこから去ってしまったが
橋の上はひっきりなしに
犬を連れて歩いてくる年老いたひとや
ベビーカーを押して歩いて行くひとなどが
行きかい続けている
by nambara14 | 2014-04-15 15:45 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)