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カテゴリ:新作詩歌(平成24年)( 94 )

よいお年を!


           みなさまよいお年を!


 今年一年、「きままな詩歌の森」をご愛読くださったみなさまありがとうございます。

 詩作はてさぐりでするものという思いを強めながら、書き続けています。
次はどんな作品が生まれるのか自分でも予想できないところにスリルがありますね。

 今年は、自分にとって試練の年でした。
 健康に重大な問題が見つかったり、身内がなくなったり、怪我をして入院したりと相次ぐ不幸が重なって、窮地に陥ることが一再ならずありましたが、なんとか立ち直ってきました。

 詩をはじめとする文学の意味や役割についても自分に問い直す契機となりましたが、答えは簡単に見つかりません。

 ただ、どんな苦しみの中でも、文学をやめられないということだけは再確認しました。

 同時に、不幸を嘆いているだけでは未来は開けないこと、楽しみや面白みを見つけいかなければ生きていけないことにも気づきました。

 来年も、自分なりに命懸けで文学にかかわっていこうという決意を新たにしていますので、みなさまどうぞよろしくお願いいたします。

 どうぞよいお年をお迎えくださいね!

                                    平成24年12月31日


                                        南原充士
by nambara14 | 2012-12-31 18:59 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

好きです


    好きです


どうも苦手なひとがいる
職場で席がとなりだから
避けるわけにも行かず
毎日会社に行くのが憂鬱だ
ちょっとした連絡の言葉さえ
耳に障るし
こちらを見る視線は
爬虫類のように見える
キーボードを叩く音さえ
神経を苛立たせる

ある日 いつも見かける占い師に
思い切って相談した
そのアドバイスに従って
その夜 家に帰って
嫌いだと思わないようにしようと思った
翌朝 なにも変わりはなかったが
毎日 同じように思っていると
ふと好きだと思ったらどうかなって
思うようになった
そうして日にちが経つと
好きですって
言葉に出してみたらどうかなって
思うようになった
寝て起きて
会社に行って
好きですと心でつぶやき
家に帰ると
好きですと言葉に出した

ある日
となりのひとが風邪で休んだ
好きとか嫌いとかから離れて過ごした
次の日 そのひとは出勤した
時折咳き込んだので
だいじょうぶですかって
はじめて普通に声をかけた
そのひとは
軽く頷いただけだったが
こちらは妙に感情が動いた
好きですとそっと心で言ってみた
好きですと小声で言いそうになったので
あわてて口を押さえた
好きですって
言うか言わないかくらいの
あいまいなところで
ひとに接するのが
いいんじゃないかなって
その日家に帰って 
思いながら
好きですって
思わず言ってしまった
自分に戸惑った
by nambara14 | 2012-12-31 18:24 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

雨の日



       雨の日


冷たい雨が降る中を歩いて駅まで行き
吹き抜けのホームで少し待ってから
めずらしく空いている電車に乗った
若い母親に抱っこされた女の子が
降ろされて座席に立って外を見ながら
よくわからない言葉を叫ぶ
ちょっと離れた座席に
父親らしい男が傘を二本かかえて
無表情に座っている
見るともなしに見ると
女の子は母親似で顔立ちが整っていて
動きがはげしく騒がしい
母は女の子がなにを言っても
愛おしそうに顔を見つめる
なかなか愛くるしい若い母親だ
鷹揚そうに見える父親だって
家の中では冗談を言ったり
娘と風呂に入りたがるかもしれない
妻につきまとうかもしれない
すましているからといって
淡白だという保証はない
大きな川をすぎたあたりで電車は地下へ入る
雨模様は変わらないようだ
これからすることを確かめながら
手帳にメモし始めると
斜め向かいの席の学生風の女性が
携帯でしばらく話し続けているのに気づく
待ち合わせ場所や時間の確認をしているらしい
そろそろ降りる駅が近づいてきたので
席を立ってドアの前まで行く
電車を降りて歩き出すと
さきほど乗り合わせたひとたちのことは
忘れてしまうはずだが
数時間後に用を足して
家に帰ってきてからも記憶が消えない
折しも親類から悲しい知らせが届いたが
雨が降り続く空の下で
無数のひとびとがなにかを濡らしながら
おたがいに無関係に
まったく別々に日々を過ごしているとしても
なにかの拍子で
影響しあうこともあるのかもしれないし
わけもなく澱のようなものが
心の底に積もることだってあるのかもしれない
おそらく明日になれば
雑然とした景色の中に
向き合うべき場所が見えてくるだろう
見届けなければならないひとびとの顔も
ぼんやりとかもしれないが
浮かび上がってくるだろう
こういうことが相次いで起こっても
だれを責めることもできないと
自分に言い聞かせることで
なんとかやり過ごさなければならないのだろう
by nambara14 | 2012-12-30 23:54 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

忘年会

 

    忘年会


みんな今年を振り返る
思いつくことはテレビで
見たことばかりだが

温かい料理を
囲んでいれば
気持ちはほんわかして

ふと思い出す入院中の家族や
失業中の知り合いのことも
一瞬忘れてしまう

景気はどうなるのかな
ちょっぴり気にかかることを
口にしてしまうが

来年はいい年になるよ
なにがあっても
助け合って切り抜けようね

あたりさわりのないことを言いながら
いろいろ問題をかかえていたって
乾杯すれば

今年はつつがなく過ぎていき
来年が迎えられるような
気がしてくる

やがて鍋の湯気が
おたがいの顔を
もうろうとさせ

お開きになった店から
上機嫌で出てきて
それぞれの帰途につかせる


by nambara14 | 2012-12-22 21:50 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

古いビデオテープ


   
     古いビデオテープ


たまたま目に留まった古いビデオテープ
今の機器では再生できないので
うっちゃっておいたが
あるときどうしても中身を見たくなって
業者のところへ持ち込んだ
けっこうお金はかかったが
好奇心の代償としてはまずまずだと思った
DVDの再生装置に入れると
テレビ画面に浮かび上がってきたのは
まったく見覚えのない場所での
見ず知らずのひとたちの
ごくふつうの日常生活を撮影した映像だった
つまらないのですぐ切ろうと思いながら
一時間も見てしまった
結局なんの思い出のよすがも見いだせずに
全部を見たわけだが
DVDを引き出してみると
なんという無駄だったかと後悔の念に苛まれたが
決着をつけるということはこんなことだと
自分に言い聞かせて
DVDをゴミ箱に捨てた
それからしばらくして
こんどは一箱ものビデオテープが見つかり
こちらのものは
なんとなく記憶があるような気がしたので
絶対に見てみたいという思いが強まった
業者はたんたんとDVD化をしてくれ
何十枚ものDVDを受け取って
何時間も再生してみた
今はない祖父母や親類や
ずっと会っていない友人知人や
今も一緒に暮らしている家族の
昔のようすが見えてきた
なんどもくりかえして再生しているうちに
なつかしいと感じた気持ちが
ふと寂しいへと変わり
さらには悲しいから空しいへ
そして感情が洪水のようにあふれて
自分のこころとからだが根こそぎ
流されてしまう恐怖にとらわれた
とっさに再生を止め
すべてのDVDをはるばる遠くの川に
捨てに行った
by nambara14 | 2012-12-17 15:22 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

身代わり



     身代わり


重い病の娘の息を
一気に吸って吐き出せば 
ぱっちり目を開け起き上がる

恋に破れた男の心
謎の気体を吹き込めば
ピンクの形が踊りだす

月が足らずに流れた胎児
時間の川を遡り
元気な体と入れ替わる

あの世へと渡りきれない船頭に
水先案内あちらに着いた
今更帰るに帰れない

星の動きを読めない子供
学芸員が先回りして
ブラックホールに落っこちた
by nambara14 | 2012-12-12 17:23 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

ある日



  ある日ざわめく心の影がすっと外部へと延びていくのに気付いて
  あわててそれを引き込もうとしたが つかみどころのないゴムかク
  ラゲのようにぐんにゃりして手におえない。 こんなに薄汚く役に立
  ちそうもない無用の長物など一刻も早く回収しなければならない。
  わき目も振らず無駄にも思える作業を続けてみたが 成功の糸口さ
  え見いだせぬまま時間だけが過ぎて行った。 ふとかたわらに何者
  かが立ち止まりこちらをじっと見ているのに気付いた。 視線の片隅
  には感じたものの知らぬふりをしてさらになんとかしなければとの
  思いが募り徒労のような作業を継続した。 時間さえ長物に溶け込む
  かと感じられるほど長い時間がたったと思えた。かたわらの者はあま
  りにじっと見続けるのでついそちらに目をやったとたんにすっとその者
  (たぶん女のようだったが)が駆け寄り長物に身を投げた。次の瞬間
  その者の姿は消え 続いて長物がしゅっとかすかな音とともに引っ込
  んだ。だが 心はそれからいっそうさわがしくなり これから襲ってくる
  であろう身震いのするようないまわしい光景にうなされはじめた。  
by nambara14 | 2012-11-07 10:55 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

うねうね



     うねうね


田んぼに実れ 稲の穂よ
黄金の頭 垂れるほど

葡萄畑に ふさふさと
露を浮かべて 吊り下がる

柿の木は 登っちゃいけない
渋柿は 甘くしてから 

栗の実は 素手じゃとれない
いがの奥から 実をとって

知らない畝を たどるとき
にわかに思う 里の秋

たらふく食って 眠り込み
起きたら 蛇の腹の中
by nambara14 | 2012-10-11 18:58 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

あきのみのり


   あきのみのり

あ 木の実の 利
空き の身の 離
飽きの 御法
開きの 箕の裏
秋のみの 理
by nambara14 | 2012-10-10 16:39 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

三人

     三 人


ひとりは平らな床に寝ころんで眠ってしまった
ひとりは体の関節を外せるだけ外して崩れてしまった
ひとりは四肢を切り落としてだるまのように揺れはじめた

ひとりはすっきり目覚めて気分よく出かけてしまった
ひとりは崩れたまま放置され続けた
ひとりはいつまでも揺れ続けた

ひとりはとことん自由気ままになれた
ひとりは関節をはめる技を身に付けた
ひとりは揺れを利用して生きる道をさがした

ひとりはなにも考えずに生き続けた
ひとりは縄抜けのマジックで好評を博した
ひとりは縁起物になってよく売れた
by nambara14 | 2012-10-05 20:14 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)