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カテゴリ:新作詩歌(平成20年発表)( 48 )

女と花びら


     女と花びら


小鳥が 盛りを過ぎた花の枝を揺らした
花びらが ひらひらと舞い落ち
樹下を歩いていた女の髪にとまった
女は 気づかずにそのまま家に帰った

着替えをするとき 女は
鏡の中に 小さな花びらを見つけた
《よくまあ 落ちずに ここまで来たものだわ!》
花びらは ほっそりしたグラスに浮かべられた

留守中 ペットの猫がグラスを倒した
水に濡れた床に 花びらは落ちた
そよ風が吹いてきて 乾いた花びらを飛ばした

帰ってきた女は グラスを拾い上げ 花びらをさがした
だが 花びらは どこにも見つからなかった
花びらの影が焼きついたはずの 瞼の陰も見えない



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  散歩中に目撃した光景をもとに創作した。
 古風な美意識へのこだわりがあらわになりすぎてすこし照れくさい・・・。
by nambara14 | 2008-04-11 13:53 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

宴の後



     わけもなく・・・


桜が咲く前から 心は騒ぎ 足はうごめき
視線は泳ぎ 手は所在なげで 空気は乱れた
桜前線の北上のニュースが流れるごとに
食い入るようにテレビの画面を見つめた

花びらが ひとつふたつ開くと それがまた
わくわくする胸の思いに 拍車をかけた
とある神社の標本木に五、六枚の花びらが咲けば
とあるお役所により桜の開花宣言がなされる 

ことしは早めに咲いて あとからの雨風にも負けずに
一週間以上も見ごろが続いた なんども花の具合を見定めた
ひとびととの間でも とにかく桜の話で持ちきりだった

いま染井吉野は終わり 枝垂桜が咲き 八重桜がほころびはじめる
あの驚くべき喧騒と熱情は なぜか 遠い過去のように見えてくる 
そして 上気したはずの自分の顔を花からそむけたいような気がしてくる・・・




by nambara14 | 2008-04-07 13:28 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

花に誘われて・・・



(花に誘われて…)


花よ花よ 咲いた花よ
ひとびとは来る

開いて散って 花びらは舞う
風が吹いて 花は移る

花よ花よ 涙を隠せ
去り行くために

花よ花よ ありがとう
想い出は消えない


by nambara14 | 2008-03-27 14:52 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

ずっと続いている


    ずっと続いている


この道はずっと続いている
そう思って歩いてきたのに
大きな壁が聳え立ち行く手を妨げる
愕然として壁面の冷たい石に手を触れる

この川の流れはどこまでも続いていると
そう思って舟を漕いできたのに
一瞬真っ暗な滝をくぐると
やがて源泉の岩に乗り上げてしまった

ひとびとの命はいつまでもあるなどと
そんなことを思ったわけではないが
親しいひとの臨終に立ち会うと惑乱する

この世界にも始まりがあり 終わりがあるのだろう 
そうして 世界はまた始まって 終わって
また始まって・・・ずっと続いていくのだろうか?



by nambara14 | 2008-03-11 15:25 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

Step Up



    ステップアップ


跳び箱一段 飛びました
跳び箱二段 飛びました
跳び箱三段 飛びました

一気に十段 飛べるかな

助走をつけて 思い切り
飛ぼうとしたけど つまずいた

やっぱり身長足りません
筋力なんかも不足です

川沿いの道 走ったり
マシンを使って鍛えたり
スイミングなんかもとりいれた

ステップアップはこわいけど
ステップアップしなければ

高いところが見えません

きっとその日がくるだろう
わくわくしながら 空高く
舞い上がるような心持

転がり落ちることなんて
忘れてしまう 気持ちよさ

そんな気がする
そのときまでは

体を鍛えておきましょう

ステップアップできるかな


by nambara14 | 2008-03-06 20:49 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

インコの詩


   

    エリスのために


目をつぶっていてね エリス
口真似しすぎて ぼくの肩から落ちないように
《どこでもドア》で ひとっ飛び
ほらね ここは 日本だよ

ジャングル育ちのきみは きっと
雨季と乾季しか 知らないだろう
赤い羽根と 緑のとさかと 黄色いくちばしで
いろんな種子や虫を食べたのだろう

いま 日本は 春が始まったところ
虫が穴から顔を出し 水がぬるむ季節
桃が咲き 間もなく 桜が咲くよ

温帯地方の空気は 霞んでいるだろう エリス?
この淡い色合いの着物を見てご覧 
よければこれを熱帯に帰るきみへの土産にしよう!


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 上の詩は、SNS「なにぬねの?」のメンバー田中エリスさんの問いかけに応じてたわむれに書いてみたものです!
by nambara14 | 2008-03-06 20:43 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

ひとり笑い



(ひとり笑い)


含み笑い 泣き笑い 嘘笑い 作り笑い 馬鹿笑い

思い出し笑い 大笑い 苦笑い 嘲り笑い 噴出し笑い 

自嘲 哄笑 微笑 笑々 笑止千万 噴飯もの 笑いこらえて 

 ・・・さまざまな笑顔 千変万化



by nambara14 | 2008-03-06 14:58 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

タイムマシンの錠剤


    タイムマシンの錠剤/南原充士


最近 あるピンクの錠剤が爆発的に売れているそうだ
その錠剤の商品名は「タイムマシン」
効能書きによれば 一錠で三分間のタイムトリップを楽しめるという
はたしてどんなトリップが経験できるのか興味がわいてきた

錠剤は入門コースと スリリングコースと二種類あるようだ
「入門コース」は 透明人間となって行きたい時空を見て回るだけ
「スリリングコース」は 今の体のままその時代に飛び込むので
その時代の警察官に逮捕される危険を伴う
といっても 一種のヴァーチャル・リアリティだから
三分間たてば薬が切れて またもとの現実に戻るはずだ

錠剤は さらに新製品として ペア用、グループ用も売り出された
いっしょに錠剤を飲むとペアでタイムトリップに行けるという
ペア用錠剤は 恋人たちに爆発的に売れているらしい
四、五人で恐竜アドベンチャーを味わえる錠剤は 若者に人気があるようだ

錠剤には 一日に一錠だけにしないと害をもたらすおそれがあるとの警告が付されていた
だが その警告を無視して 何錠も服用する者が相次いだ
中には錯乱状態に陥る者や自殺しようとする者まで現れた
当局は事態を重く見て 直ちに「タイムマシン」錠剤の発売禁止の措置をとった

錠剤は非合法化したが アングラで出回り続け 価格は高騰した
一体そんな危険まで冒してなぜそんなに「タイムトリップ」をしたがる者がいるのか
多数の脳科学者たちが呼び集められ 徹底した研究がなされた
それでも謎は解けなかった
「錠剤は多数の神経伝達物質を配合しプログラミングした精巧な製品で
天才的な発明である 
ただし 飲みすぎると脳機能に障害が出るおそれがある」
というのが衆目の一致するところだった

ある常習者によれば
「両親が生きていたころの我が家へ戻って いっしょに夕食をとるのが
たまらない幸福感をもたらしてくれた
なにげない過去ほど自分を慰めてくれるものはない」ということだった
常習者によって飲む理由は異なるだろうが

タイムマシンの研究は今も続けられているという
アングラで流通する錠剤は 今後取り締まりの強化によって 根絶されるのだろうか 
先行きは不透明だ
一説によれば 常習者は増え続けているといううわさもあるようだが・・・



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  上の作品は、「SPACE78」(平成20年3月)に発表したものです。
  最近、タイムマシン、タイムトリップ、タイムワープといったテーマに取り組んでいます。
  リアリティを失わないようにするのに苦労しています。



by nambara14 | 2008-03-02 18:13 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)

レクイエム



    レクイエム


じっと耳を澄ますとどこからかかすかに聞えてくるものがある
まるで聴力テストのヘッドホンから聞えてくる音のようだ
徐々に大きくなったり小さくなったり
高くなったり低くなったりする

やがて音は小さなメロディーになり
川の流れのように 音量を増していく
穏やかな音楽が奏でられ始める
そしてついにはひとつの組曲となって大海に注ぎ込む

いつか聴いたことがある軽やかな主旋律
長調でスタートする舞曲のいくつかの楽章 
それが わたしの心の奥 体の芯を 確実にとらえて揺さぶる

ぼんやりとした田園地帯でだれが弾いてくれたのだろう?
あるいは 母の胎内で聴いた海鳴りだったのだろうか?
自分自身で選ぶべき音楽 わたしの最期のための

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 上の詩は、抒情的な詩風にこだわって書いたものです。
 やや古風な雰囲気だと思いますが、ぼくには必要なスタイルのひとつです。
by nambara14 | 2008-02-28 19:59 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)


    ただ 悲しみに 浸るために・・・


ここにいることが遠くかすんで見える
静けさが深すぎて痛いぐらいに耳が冴える
手を伸ばして触れる葉群れの上の薄い氷
小さくくぐもる叫びに驚く自分の心音

いつだって今にしかいられないわたしたち
ビデオをまき戻すたびに見えるのは
昨日の空 去年の街角 昔の鉄道沿線
背中の丸い老人がこちらを見ながら歩いてくる

思わず呼びかける自分 あれはあのひとではないのか
過去に向かって走っていく列車に乗って
涙をこらえている者たちはたがいに見て見ぬ振りをし合う

乗客たちがみな眠りに落ちた頃 列車は透明なトンネルを抜ける
思い切り涙を流した夢が覚める頃 彼らはみな
未来行きの列車への乗り換えホームに降り立っている









by nambara14 | 2008-01-26 16:20 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)