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カテゴリ:未刊詩集「しずかな夜」( 1 )

しずかな夜



未刊詩集「しずかな夜」(ぼくが30代前半に書いた詩篇をまとめたもの)から抜粋

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    しずかな夜


わたしは聴いた。数十億年後の宇宙のこと
太陽が滅び地球が冷え切った日々のことを

わたしは聴いた。この翅の有る昆虫のこと
数千万年前の地球上をそれらの祖先が飛び回ったことを           

わたしは聴いた。病巣がいのちを蝕むこと
数十年のいのちが今息絶えようとしていることを

わたしは聴いた。目や耳や手が届かないところのことを
晴れわたった空や小鳥のさえずりのこと

わたしは聴いた。囁き合い抱き合う多くの人びとを
互いにそねみ合い憎しみ合う者たちを

わたしは聴いた。物質を運ぶ音を
武器や弾薬 食糧や衣服 薬や包帯

わたしは聴いた。たった今発射されたミサイル
予め計算された弾道 確実に飛び続ける時間を

わたしは聴いた。ほとんど聴きとれない鼓動
しずまりかえった夜 耳を寄せて間近に等身大の寝息を

いつまで続くともしれぬ静けさをいとおしみ
そのためにかえって騒がしくなるわたしの内部を―――

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(注):上の詩は、個人誌「アレーテイア」創刊号(昭和56年(1981)刊)に発表したものを少し手直ししてあります。

by nambara14 | 2007-06-26 22:11 | 未刊詩集「しずかな夜」 | Comments(0)