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2016年 03月 10日 ( 1 )

抗体


どうして穏やかなふりをして吹いてきた風に棘が隠されていたのか
春の野辺に寝転んでまどろみが導くままに鳥となって自由に飛び回っていたのに
いま無数の棘が刺さった体は耐え切れない痛みに襲われ血が滲み出している
応急手当でとりあえず包帯を巻いて静かに室内のベッドに横たわっているが
いつまた次の災厄が襲ってこないとも限らない いやかならず襲ってくるのだ

不安によって精密な生体の機能が狂いだし悪循環の生理異常が繰り返される
何種類もの薬を飲んで一時しのぎはできても 飲むたびに徐々に抵抗力は失われる
薬物を使わない療法を施してくれるという民間施術師を半信半疑で訪ねてみれば
殺風景な小部屋の中で体操着を着た若者が静かに迎え入れてくれる
黙ってこちらの訴えを聞き精神と身体の不調について詳細にメモをした

それからフロアに横たわらされて はじめは手足にふれ
やがて頭から胴体へと全身をくまなくさすりもみ押したり曲げたり伸ばしたりした
その合間になにやらつぶやいたりなにげない質問を投げかけたりするので
ぽつりぽつりと答えていると時間はあっという間に過ぎて行った
気が付けばすこし眠ってしまっていたようだった

これでだいじょうぶだと思いますがすこしようすをみてみましょう
施術室を去ってしばらくしたが状態に大きな変化は感じられなかった
だが 一晩寝た後たしかに体が軽くなっているのに気付いた
食事やトイレも調子を取り戻してきたように思えた
よくわからなくてもなにかに耐える力を与えてくれるものがあることを信じたいと思った





by nambara14 | 2016-03-10 10:33 | 新作詩歌(平成28年) | Comments(0)