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2015年 11月 23日 ( 1 )

あこがれ


     あこがれ


日々海へと注ぐ河口付近を歩くおれのふらつく足元と視線を
かろうじて導いてくれるあのゆったりとした海鳥の翼の動き
こうして毎日同じ場所を歩くことで重なり合う景色が脳内に満ち溢れ
自分という意識が消え失せることさえ不思議はないと思えるようになる
「いつだってヤドカリなんだおれは」と幼い頃から感じていた
精神と肉体のかたちのずれが奇妙なめまいを引き起こしても
治療法はなく踏みとどまるには不愉快な感覚を飼いならすしかないと
さまざまな耳学問がささやき巧みな説得術に納得させられてしまえば
日々うすれゆく視界を見定めようとしてあてどなく歩き続けるおれは
つきまとう記憶の影たちから逃げ延びることができれば御の字だ
いつも耳の奥に響く音楽の指で心をマッサージされながら
目の前にあるスカイラインをなんどもなぞってみると消失点が見えなくなる
もうろうとした筆致の描き出すキャンヴァスを上へとたどれば
終わりのない旅情に誘われて魂のようなかたまりがふわふわと浮かんでいく
おれの体を抜け出してかもめのようにゆったりと羽ばたいていけ
なにか惹かれるものがあればきっぱりとここから立ち去っていくがいい
雲のように不確かな実体であろうと志す方向があれば迷わず目指すがいい
たとえこの岸辺に黒々とした抜け殻が無造作に打ち捨てられるとしても


by nambara14 | 2015-11-23 00:46 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)