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2014年 06月 03日 ( 2 )

最近の詩集評(6)

吉田隶平著「彼岸まで ふたたび生まれ来ぬ世を」。人生経験に裏付けられた穏やかで澄んだ心境を短い言葉で表している。箴言集と言ってよいと思うが、著者は、詩でも箴言でもないと言う。「死ぬというのは 椅子はあるのに いつもそこに座っていた人が居ないということだ」(椅子)。

「大田美和の本」。歌集「きらい」「水の乳房」「飛ぶ練習」「葡萄の香り、噴水の匂い」全篇、詩篇、エッセイを収録。女性の強さ、弱さ、身体と感情の大きな変化、率直な愛と性、生活に根ざす確かな目と言葉への限りない愛情。歌人にして英文学者の体当たりの生き方が、多彩で奔放な表現を生み出した。

山田兼士著「萩原朔太郎《宿命》論」。30年近い年月にわたって書いてきた詩集「宿命」についての論考のすべてを収録した労作。現代詩の父とも言える偉大な詩人への深い愛情と尊敬に根ざした類まれな洞察と読解と評価は、朔太郎の全詩業に対して新たな視座と再評価への契機を与えるものとなっている。

富沢 智詩集「乳茸狩り」。森に係わる詩が何篇かある中で、「タイトルポエム」は、里山の送電線や積乱雲や熊の風景の中でのキノコ狩りの思い出が活き活きと描かれている。ノスタルジックな思いが肩肘張らない表現の中でやさしい風のように吹いてくる。「ローマの肉屋」のユーモラスな描写も魅力的だ。

渡辺めぐみ詩集「ルオーのキリストの涙まで」。息苦しくなるような緊迫感に満ちた詩篇群。過剰とも言える感受性が生と死をとらえるとき、強靭さと脆弱さのアンビバレンツが、安易な要約や結論を許さない。矛盾に満ちた人間存在、犬や馬や外界との関わり、更には光さえも、答えは宙吊りになっている。

秋亜綺羅詩集「ひよこの空想力飛行ゲーム」。焼酎が好きだったじっちゃんとの思い出(「かわいいものほど、おいしいぞ」)、校長だった父が人生の節目に息子である自分に語った言葉や自分の危機を救ってくれたエピソード(「秋葉和夫校長の漂流教室」)など、柔らかなタッチから深い詩情が感じられる。

秋川久紫散文集「光と闇の祝祭」。美術、詩歌・文学、音楽、映画、時評その他、幅広い分野についての切れ味の鋭い文章が収められている。美術が26篇と最多で、詩歌・文学が17篇。批評の真価は、批評対象もしくは「本当に大切にすべきもの何か」に対する愛を感じ取ってもらうことにこそあるとする。

長嶋南子詩集「はじめに闇があった」。巧みな語り口に乗せられてどんどん読み進むと、ユーモアの陰にある人間の生の恐ろしさや言いようのない哀しみに出会ってしまう。生きることと死ぬことが共存しているかのような奇妙な感覚を、母や息子や猫等身近な存在を通してリアルに描き出す。卓越した表現力。

野村龍詩集「Stock Book」。メタファーのカタログとでも言えるような徹底した技法へのこだわりが、ときおり、現実感に満ちた呼びかけによって休息を得る。たとえば「手紙」は、Rainer Maria Rilkeと関連付けられながら、ひとりの女性への初々しい想いが素直に述べられる。

海埜今日子詩集「かわほりさん」。テーマも表現スタイルも非常に意識的でオリジナリティに富んでいる。現実と幻想、日常と非日常の境目(たそがれ的な場所)で、言葉をつづる。かわほりさん(コウモリ)は、その最も象徴的な存在であり、特別な親しみをこめて描かれている(「たそがれのばしょ」)。
by nambara14 | 2014-06-03 19:45 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)

練習

単一の光
プリズム
おびただしい画素
まったくの抽象
幾何学模様
翻す風
突き詰める具体
言い換える顔
手 足 身体
フラッシュ
分解写真
総天然色
翻す手
高速度撮影
カシャカシャ
超照度
カシャ
超暗黒
単一の闇
by nambara14 | 2014-06-03 13:54 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)