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2010年 01月 11日 ( 2 )

はじめての町



    はじめての町



南口は開けてはいるが路地が入り組んでいて
駅から一歩入るとはじめて訪れた者はとことん迷い込む
地図など役に立たず 
区画整理を拒み続けてきた住民の町がそこにある
曇り空がしだいに雨模様になり今にも降りだしそうだ
自分の中にある迷妄を流し去れそうだ
冷たい風が破れ新聞紙を翻す
海の臭いが鼻を突きくしゃみがとめられない
街角で背を丸くして洟をかむ者同士が
ちらっと視線を交わして行き過ぎる厳寒日
なんの用で男はこんな殺風景な町に来たのか
再開発の最中でだだっぴろい空地が広がる北口へと回り込んでいく
薄ら寒い空の下で映画のシーンを下見するかのように
ひたすら憂鬱な表情を作ってみせる
アンバランスな町の南北を
なんの味もかもしださない男が歩き回る
迷いながらだんだん地理が飲み込めてしまうと
はじめての町がなじみの町に変ってしまう
違和感を失ってはいけない
迷いを失ってはいけない
放浪する足つきを演じながらでも
生爪をはがし鳥肌を立て続ける
男が薄暗い町の空に見ているものは
きっと巨大で殺風景な広告板のはずだ


by nambara14 | 2010-01-11 21:19 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

CD



     CD


たしかに聞こえた音がもう聞こえない
いちど届いた音波は減衰して消えうせたように見えても
小さな振動は残りいつまでも細胞膜をふるわせるにちがいない
こんなにも受け入れた音が完全になくなるなんてありえない
特にこのヴァイオリンのこすれるような音は胸にしまっておきたい
この曲を作った作曲家がどんなひとかはよく知らない
ただ音の高低とリズムの変化だけが聞こえる
どこからどこまでかはわからないままCDをかけると
無数の素粒子がざわざわと波立ち始める


by nambara14 | 2010-01-11 01:42 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)