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2009年 08月 31日 ( 1 )

向かうところ敵なし=詩



          向かうところ敵なし


 刀は男の腰にぴたっと張り付いていた 重さも長さも感じさせないほど
 町行く足取りは軽くしなやかで 縫うように人ごみを抜けていくとき
 だれも殺気だった気配を感じ取るものもなく 気にもとめなかった
 数人の男の叫び声 そして殴りあう音 倒れる音 いよいよ出番か
 気合一発 引き抜かれた刀の斜めの軌跡 切っ先を危うくよけて
 男は物騒なところをいち早く察知して 迂回路をたどってゆく
 地名がつぎつぎと変わっていくにつれて迷路にはいりこんで
 先行き不透明だなあ あっしゃあしがねえ素浪人ってとこで
 すると絵に描いたような雨が降り出しつんのめった急ぎ足に
 高速の人間模様が浮かび上がる 唐傘が開いて 粋だねえ
 すれ違いざま刀の鞘が当たってしまったのはなんの手違い
 柳に風と受け流し ひょっと身をかわして紛れ込むのが相場だが
 ここにはさっそうと飛び上がる跳躍台もなく飛び道具もない
 あれよあれよというまに男は踏んづけられねじ上げられて
 有り金全部奪われて放り出された 刀にすがってよろよろと
 身を起こした男の見得を切る姿なんざあ記録する絵師などいるはずもなく
 




by nambara14 | 2009-08-31 11:25 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)