南原充士の『きままな詩歌と小説の森』
2024-03-01T13:10:39+09:00
nambara14
自作の詩歌の発表の場としたい。感想をいただければ幸いです!
Excite Blog
大谷選手の結婚を祝って
http://nambara14.exblog.jp/33864478/
2024-03-01T13:10:00+09:00
2024-03-01T13:10:39+09:00
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nambara14
南原充士の短歌(五七五七七系短詩)
『大谷選手の結婚を祝う』
春匂う ビッグ・ヴァレーの ファンファーレ
そっと寄せたい 祝いの言葉
ある線を 超えればひとり 彷徨いて
疎外のグラフ 手探りで描く
感覚は 説明不能 デリケート
依拠するものは ほかになければ
ただひとり 粋に感じる 色合いを
頑なまでに 守る筆先
冬去りて 裏の細道 ぶらつけば
ここから先は 春のきらめき
湧き出づる 秘密の泉 水汲めば
憂さを忘れて 力漲る
溺れ谷 涸れ谷魔谷 隠れ谷
ビッグ・ヴァレーに 谺が響く
月移住 一日一週 一月は
どんな暦に なるのだろうか
予想外 降り出す雨は 春雨と
傘もささずに 男を気取る
無口でも 黙り続ける 胸中は
すっからかんの 食料置き場
激流の 小舟に乗って 下り行く
映像の主 リアルの自分
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著書宣伝
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2024-02-21T12:20:00+09:00
2024-02-21T12:20:36+09:00
2024-02-21T12:20:36+09:00
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プロフィール
冬と春のスパイラル
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2024-02-17T19:08:00+09:00
2024-02-17T19:08:00+09:00
2024-02-17T19:08:00+09:00
nambara14
南原充士の俳句(五七五系短詩)
冬と春のスパイラル
酔い覚めの 唯我独卑か 春の夢世捨て人 眠る孤底の 水ぬるむ夢先の 湖底に眠る 春の魚飛び出して 名のみの春に すくむ足冬の海 魚人となりて ひれを打つ嘘ばかり 尽誠を吹く 春一番化石似の アンコウ鍋に 時忘れ疑似涙 仮病しりごみ 春芝居身は魚類 心は春の 夢遊病姿なき 命の声か 春霞深海の 暗き淵より 春の泡氷山の 真冬を染める 活火山着て脱いで ゆるく立ち去る 冬の影下手な比喩 春の嵐を 引き起こす虚飾捨て 身を捨てて吹く 春の風四月並 嫌う言葉よ 今二月季節感 言いようのない 四季を去る昨日春 今日は冬かと 確かめて寒暖の 上り下りは 冬外れ]]>
2024年の詩集評
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2024-01-15T13:15:00+09:00
2024-02-24T15:33:06+09:00
2024-01-15T13:15:41+09:00
nambara14
詩集・詩誌評等
吉田隶平詩集『青い海を見た』。人生の終わりを意識しながらも紡ぎ出される言葉はおだやかだ。静かに自分の人生を振り返りさまざまな出会いや出来事を思い出す。「何かをしなくてはいけないか//森の木が/陽の光を浴び/風にそよぐように//ただいるだけでは/いけないか」(「時を忘れて」全篇)。
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山田兼士『谷川俊太郎全《詩集》を読む』
http://nambara14.exblog.jp/33756384/
2023-12-28T11:08:00+09:00
2023-12-28T11:08:49+09:00
2023-12-28T11:08:49+09:00
nambara14
詩集・詩誌評等
山田兼士『谷川俊太郎全《詩集》を読む』。昨年亡くなった著者の御夫人と御子息による刊行。谷川俊太郎という偉大な詩人の全詩集をコンパクトに紹介するという画期的な試みはいかにも著者らしい緻密で情熱溢れる努力の賜物で深い感動なしにページを繰ることはできない。改めて著者のご冥福を祈りたい。]]>
泪橋
http://nambara14.exblog.jp/33752084/
2023-12-26T15:29:00+09:00
2023-12-26T15:31:19+09:00
2023-12-26T15:29:42+09:00
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南原充士の短歌(五七五七七系短詩)
泪橋
泪橋 こだわりの店 用水の ほとりに立ちて 順番を待つ
付けたのは ホルター型の 記録計 臨床検査 技師の言うまま
寄る辺なき 川虫けらの ため息に おのれの呻き 重ねつつ病む
不覚にも 頭部裂傷 脳震盪 幻と見る 現世の揺らぎ
運命を 聴きつつこなす 雑用に 苛立つナイフ 切り刻む神
急流に 流される危機 乗り越えて 年の瀬を今 危うく渡る
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小川三郎詩集『忘れられるためのメソッド』
http://nambara14.exblog.jp/33615299/
2023-11-21T12:03:00+09:00
2023-11-21T12:05:29+09:00
2023-11-21T12:03:19+09:00
nambara14
詩集・詩誌評等
小川三郎詩集『忘れられるためのメソッド』。
一見とっつきやすそうだが、よく読むと様々な仕掛けが凝らされていて深く研ぎ澄まされた詩篇であることがわかる。世界認識はニヒリスティックであったり反語的であったりするが、一方で、他者や自然を冷めた目で見ながらも現実をあるがままに受け入れようとする心理もうかがえる。そのアンビバレンツが独特のシュールレアリスティックでユーモラスな表現を生み出しているのだろう。常識的な見方やありふれた表現を超えた意外さや逆説的アプローチが他に類例のないおもしろみと快感を与えてくれる。「忘れられるためのメソッド」とはなにか?そんな難解ささえ読み返すうちにほどよい抵抗感と化すのである。
以下に、印象的な個所をいくつか引用してみたい。
「幸福がなにかということをたぶん私は知っている。」(「日課」最終連)
「山も川も枯れきって 空もすっかり 枯れてしまって そんな景色の中にいるのに 私の心は どきどきしていた。」(「冬」最終部分)
「蝶は花に顔を突っ込み何もないのかもしれない と思っている その様子をまた別の蝶が見ている。」({連弾}最終部分)
「泥道が乾きはじめ 雨の匂いが消えてしまうと 男は身を起こし なにもなかったように 家に向かって歩き出す。 私もほっとして 穴に帰る。」(「穴」最終部分)
「世界は誰かが置いていってずっとそのままになっている。」(「重要性」中程)
「そして死が 理由なく訪れることを それをほんとうにできることを 私たちは樹の上に向かって 何度も何度も願ったのだ。」(「樹上」最終部分) そしてもっとも衝撃的な詩篇は「産卵期」であり、ホラーとブラックユーモアに満ちた母と子の姿は驚くべきで発想と展開と描写で読者に迫ってきて恐ろしささえ感じるほどだ。
「逆さになった母を 手で押してぶらんぶらん揺らす。 すると狂っていたバランスが 遠心力でうまく整い 女優みたいに きれいな顔の母になる。」 「誰も彼もが羨むような めくらの親子になれますように 今後も努めてまいります。」(「産卵期」中程)
この詩集を開くと読者はいつのまにかぐいぐいと超絶技巧の小川ワールドへと引き込まれていく。これこそ詩を読む醍醐味を存分に味わえる稀有な一冊だと言えるだろう。
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詩集の感想
http://nambara14.exblog.jp/33535558/
2023-10-20T20:59:00+09:00
2023-10-20T20:59:01+09:00
2023-10-20T20:59:01+09:00
nambara14
詩集・詩誌評等
珍しく、拙詩集を読んだ感想を寄せてくれた読者がいたので、嬉しくなりました。
「詩集『インサイドアウト』
→ハードボイルド的な鋭い文章に感じました。人間の感覚を文章にしているような、難しい表現を纏めているような、たぶん南原さんならではの表現なのかも・・・と 思いながら読ませて頂きました。
詩集『にげかすもきど』
→ユニークな表題でした。オノマトペ的な面白い表現が多いと感じました。谷川さんの「音韻の遊び」という表現も分かりやすいですね。
詩集『笑顔の法則』
→昭和の人ならではの表現が多かったように思います。鉄腕アトム、鉄人28号など、南原さんの時代ですね。短い文章の中に長文が凝縮されているように感じました。私の頭脳では付いていけない部分もありましたが、南原さんワールドが満載のように思いました。」
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秋の収骨
http://nambara14.exblog.jp/33535463/
2023-10-20T20:40:00+09:00
2023-10-20T20:43:18+09:00
2023-10-20T20:40:42+09:00
nambara14
南原充士の俳句(五七五系短詩)
―母(2023.10.6逝去)と義弟( 2023.10.11逝去)―
Born alone,Dies alone,In the late Autumn.
ひとり来て ひとりで帰る 秋の暮れ
人により 顔を違えて 秋の風
冷涼は 我が世の秋か 野辺送り
Putting a piece of the cremated bonesand remains of the deceased into an urn,With two pairs of chopsticks held byeach couple of the mourners,Their hands and fingers are darkened bythe shade of the Autumn.
収骨を 重ねる指に 秋翳る
戸頭に 晴れ男焼く 秋煙
人仕舞 徐々に消え去る 秋の暮れ
傷心を かする秋風 とげありて掌返す ひとの声調
ありふれた この世の縁の すぐ向こう決して帰らぬ 片道の舟
魂は 彼我の境に 彷徨える迷子となりて 悲歌に聴き入る
相次ぐは 霊の力か 超常か谷に引き込む 磁力に勝てず
秋晴れに 染み入る涙 耐えかねて目を閉じて待つ しばし乾くを
筋書きの ないドラマとは 悲話のみか連鎖断ち切れ 魔気に負けるな
運命は 意地悪過ぎる 電話口姪の口の端 震えに耐えず
わが母の 葬儀予定の 前日に義弟急死の 知らせ来たりぬ
久方の 光射し来る 秋の日に白寿の母は 永遠に眠りぬ
頬に触れ 手を取り声を しぼれどもまどろむままに 母は答えず
思い出は 川の流れか まどろみか帰らぬ時を 遡る舟 ]]>
母に
http://nambara14.exblog.jp/33511484/
2023-10-12T20:55:00+09:00
2023-10-12T20:56:25+09:00
2023-10-12T20:55:35+09:00
nambara14
南原充士の短歌(五七五七七系短詩)
久方の 光射し来る 秋の日に白寿の母は 永遠に眠りぬ
頬に触れ 手を取り声を しぼれども
まどろむままに 母は答えず
思い出は 川の流れか まどろみか
帰らぬ時を 遡る舟
2023年10月6日 16:45
母、桑原登美が99歳で亡くなりました。
本日10月12日、告別式を執り行いました。
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『目礼』(短歌系((2023.7~8)
http://nambara14.exblog.jp/33305058/
2023-08-07T00:29:00+09:00
2023-08-07T00:31:05+09:00
2023-08-07T00:29:12+09:00
nambara14
南原充士の短歌(五七五七七系短詩)
『目礼』(短歌系)(2023.7~8)
仮初の 目礼であれ 電流の かすかな励起 促すよすが
不機嫌の 飽和の街に 居づらさも息苦しくて こすれる心
一瞬も 消えぬ体を 消え去ると感じる心 まだらにゆらぐ
じーじーの 鳴き声弱い なにゆえに今年の蝉の 油が足りぬ
振り返る 反省もする 禊して清らかになる 透明になる
ようやっと ひとつゴールが 見えてくる五里霧中にも かすかな光
自らを たいせつにして さりげなく他者を敬う ひとの通い路
きみの詩に 恋してしまい 熱くなる覚めても恋は 輝きの星
どの本に ぐっとくるかは 未知数のはらはらどきどき 恋に似ている
マイペース ひとり楽しむ 心境をさぐる指先 かすかにふるえ
ユーモアと 言葉遊びは 気の薬笑い飛ばせば 命永らう
ひねくれた 同士とは言え 無理解の罵詈雑言は 無用に候
勘違い 度忘れ増えて 躓きの足を鍛えて 夏坂を越す
七月の 終わりの日には 剣が峰 来光拝み 息災祈る
このところ 笑い忘れて 苦虫をかみつぶす顔 鏡に映る
交々の 日々の思いと 出来事に嬉し悲しの 波動関数
明日知れぬ 身のはかなさに 気づいては夜更けに一人 ため息をつく
お休みと だれにともなく 言う夜の穏やかなれば 安らかに寝る
世の中に 絶望しても 心身に折り合い付けて だましつつ生く
短詩系 ウォーミングアップ 口唇の動き滑らか 中枢刺激
衰えが 諍いになる 罪な事いたわり合って 補い合おう
衰える あれもこれもと わずらいのとりわけ進む 記憶の劣化
むらむらと 村人立てば ちまちまと待ち人座して 到着を待つ
ひとりでも その目に留まる 僥倖を願って今日も 喜望を鬻ぐ
はめられて たまるか悪しき 挑発の言辞爆弾 青二才発
谷を抜け 山を迂回し 往く道の険しくあれば 一休みする ]]>
夏の夢
http://nambara14.exblog.jp/33274810/
2023-07-25T15:57:00+09:00
2023-07-25T15:57:57+09:00
2023-07-25T15:57:57+09:00
nambara14
南原充士の俳句(五七五系短詩)
夏の夢
青い鳥 消えてX 夏の夢
燃える都市 ひとり木陰で 夕涼み
独断を 避ける夏影 やや大に
酷暑にも らんまん見れば 心浮く
この夏は 途切れ途切れの 油蝉
諍いに 油を注ぐ 蝉の声
仕切り屋の 指先舞えば ミラクルの
悪の砲撃 かわし損ねる
なり沈む 深く潜れば 花鏡
顔を映して 浮かぶ水泡
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半夏生
http://nambara14.exblog.jp/33220533/
2023-07-04T16:52:00+09:00
2023-07-04T16:52:39+09:00
2023-07-04T16:52:39+09:00
nambara14
南原充士の俳句(五七五系短詩)
半夏生
我流にも 手応えあれば 夏に沿う
いっぱしの 夏の装い 風来坊
地図もなく 迷い続ける 在の夏
せせらぎに しばし涼とる 奥平
敏感を 色に染め分け 夏の川
遠雷に 読みふけりしは 夏の夜
夏の午後 うつらうつらの 綿入子
お互いに シカとしあって 夏ゆらり
生体の 交感かすか 夏の午後
七月の コーヒーの午後 やや苦く
夏という くくれぬ混合 季節感
きょうもまた 大谷コール サマータイム
魔術師の 弟子にもなれぬ 夏季講座
諤々と 脳かまびすし 熱帯夜
食欲を 失くす恐怖は 夏の罠
眠れない 七月初め 青動悸
錯乱の ただなかにある 呵々の夏
落ち着けと 自らに言う 夏の月
大小の 異変抱えて 夏半端
卵割れ 気を取り直す 夏の宵
紙本を 棚上げにして 避暑地行
夏の山 木陰に開く 電子本
夏の海 こころ溺れる 身は流る
酷暑にも 一日一楽 唱えつつ
富士の山 登らぬままに 年重ね
短冊に 書いて消したる 高望み
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詩集『個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方・ほか』
http://nambara14.exblog.jp/33215671/
2023-07-01T20:59:00+09:00
2023-07-01T21:01:37+09:00
2023-07-01T20:59:31+09:00
nambara14
未分類
詩集『個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方・ほか』 (平成13年刊)より抜粋
================================「個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方」より0涙でぼやけた瞳に映っている風景に読みとれる 奇妙に小さな表面積と曲率観察に余念のない いわゆる冷徹な洞察眼というもの生まれつきの涙液の乏しさがとらえきれない焦点をあわせられない心を秘めてすこし鼻炎ぎみの文化人を気取ってなーに なにひとつ覚えちゃいねえやっちゃいな 後悔しないように没頭!さて 捨て去った明晰な論理・思考力の向こうに見えてくる ただの地肌というもの歩けば足のウラに不快な石ころや草の葉水辺は汚れきって 空はくもりはじめるただこうしているだけではズダブクロのような□□をいっぱいにしてやれない個人的な□□も晴れた日の昼下がりなら飼い犬がさがしだしてきたスペアリブのようなものでお茶をにごすことができるかもしれないーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「力みすぎた肩をもつホモサピエンスのための断片的なエスキス」より2 疾走また疾走の少女Kいつのまに軌道を外れてやつれた女になったようだぜおみなえし虫鳴くときにおとはなしバイクに乗せて走ったものだぜふじばかまゆうべの夢は消え残り一瞬の光にたとえることもできるあるいは一瞬の闇にもふと目を閉じ再び目を開けたときに元の世界があるなんて思わないことだ通いなれた道すじで突然刺されたりくつろいだ小春日和の午後にガンを宣告されたりする間近に笑みを交しあい肩をたたきあった同士がいつのまにかこの世を去っているタイムマシンを動かすつもりで遡ればみるみるビルは消え 人は幼くなり 世代がちがっている時を下れば年老いて 身寄りも失って 見知らぬ街がみえてくる人が死んだら星になる星が死んだらブラックホールになると信じる「素粒子が引き合う力」というような次元で考えるつもり「遺伝子を組み替える実験に成功した」つもり巡航ミサイルの性能が向上したつもりほとんどブラックホールのようなアプローチーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「少年の部屋」より春日しょうしょうと笛が鳴る春霞の王朝楽部の足元に砂煙が立つ青く引きつれた仮縫無限はひとすじ切長の眼を閉じ花びらは絶間なく散り落ちるにじみだす沈黙と見果てぬ夢とだれか壷のようなものを抱えてぼくの庇をたどっていくああ間遠な牛車の転がりが聞こえてくる長き日のぼくの透明。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。落胆その物の重さとそっくりそのままの力でその物は持ってやりたまえ強すぎも弱すぎもしない握力がその物と溶け合うような気がするだろうちょうど寒天がその甘い溶液の中で輪郭を失うようにそのようにその物の漲る表面にそっと手を触れてみるがいいこの手の中で今にも割れそうなその感じその物のひっそり落胆する内空に至る感じ粉々に砕けていくその物はいま癒えるという語彙から無限に遠くわたしのどこか古い細胞ばかりでできた中心に硝子の細片のように突き刺さってくる
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詩集『エスの海』から抜粋
http://nambara14.exblog.jp/33197949/
2023-06-23T19:55:00+09:00
2023-06-23T19:58:19+09:00
2023-06-23T19:55:36+09:00
nambara14
詩集「エスの海」
詩集『エスの海』(昭和58年刊)より抜粋
第三詩集『エスの海』も私家版につき、ほとんどご覧になった方はいないと思います。
わずか10篇を収めた詩集ですが当時としては新しい書き方にも挑戦しています。
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旧街道
特異な体質を利用して闇に紛れ去ろうとするもの
暗さは冷たさを育て烈風の往来から還り来る
着換えはめまぐるしい
肌は幾たびも洗われ
剥きだされるのは熟れ切った虚のからだ
つかみかかる手は群雲から突き出され
盲滅法夜の裸体をまさぐる
過ぎ去る時は花の中の白骨
握ろうとすれば粉塵
恋人よ わたしは見ている
広大な原野を疾駆する馬を
限りない強さで打ち込まれた楔
巨木を一気に電撃する眼で
恋人よ わたしは断ち切る
痛い土につまずき なお進み行くのが
だれでもないただわたしのからだであると
雨は降り注げ
傷つきさすらうわたしの頭上に
とどまることも知らずに ぬかるみを
旅ではない ただ行き過ぎる日々となって
わたしはかぎろい 空を逃れて急ぐ道行き
この痛みに溢れる血は常に洗われ
花を咲かす間もなく 根絶やしにされ
ゴムびきの合羽のごときものを纏って
一切の淫らな体液の記憶を踏みにじる
旧街道
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