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ただ 悲しみに 浸るために・・・


    ただ 悲しみに 浸るために・・・


ここにいることが遠くかすんで見える
静けさが深すぎて痛いぐらいに耳が冴える
手を伸ばして触れる葉群れの上の薄い氷
小さくくぐもる叫びに驚く自分の心音

いつだって今にしかいられないわたしたち
ビデオをまき戻すたびに見えるのは
昨日の空 去年の街角 昔の鉄道沿線
背中の丸い老人がこちらを見ながら歩いてくる

思わず呼びかける自分 あれはあのひとではないのか
過去に向かって走っていく列車に乗って
涙をこらえている者たちはたがいに見て見ぬ振りをし合う

乗客たちがみな眠りに落ちた頃 列車は透明なトンネルを抜ける
思い切り涙を流した夢が覚める頃 彼らはみな
未来行きの列車への乗り換えホームに降り立っている









by nambara14 | 2008-01-26 16:20 | 新作詩歌(平成20年発表) | Comments(0)