浄 化


  この曲を作曲した人は生涯にわたって人種差別をし続けたり
  多くの女性と愛し合ったり借金を踏み倒したり
  反政府運動で亡命を余儀なくされたりしながら
  壮大な音楽世界を作り上げ独自の音楽劇を高く評価する人々の支持によ
   り
  専用の劇場の建設さえ進めることができるほどに
  聖俗を併せ持つ圧倒的なパワーの持ち主だったらしい

  こうして長大な作品を聴いていると
  作曲家の傲慢にも思える自尊心や滾る血潮が濾過されて
  天国の調べとなって地上に流れてくる至高の賜物に思えてくる
  汚れた手と濁った血に苛まれるわが身に静かに寄り添って
  弱いこころを慈父のように励ましてくれ
  気が付けば涙のようなものがとめどなく溢れ出している
  歓喜と悔悟が一体となって声を上げて泣き出す自分を止めることができな
    くなる

  この音楽がいつまでも終わらないようにと願いながら
  すべてのものにははじめと終わりがあることを知らないわけではない
  自分はこれまで平々凡々の日々を送ってきてしまったが
  なにか人々のこころを清澄にさせるものを生み出すことができるだろうか?
  この作曲家のような激情を持ち合わせてはいないし
  犯罪や悪事というほどのものにも縁がなかったが
  自分のことをあれこれ思いめぐらせるのをこの上ない幸せだと思えば
  その浄化作用の神技を感じ取れたことになるのだろうか?
  
  

  
  
   
  
  
  

[PR]
by nambara14 | 2016-05-02 18:55 | 新作詩歌(平成28年) | Comments(0)