人気ブログランキング |

飛行船


詩集「思い出せない日の翌日」から、もう一篇、ご紹介します。

           *
 
          飛行船


空を見上げると ぽっかり浮かんでいる物体が目に入る
そののんびりしたようすが見る者の気持ちを和ませる
ふと目をそらしている間にいくつかのビルの間を移動している
見る者はただ数歩歩いてまた見上げただけなのだが

昨日の夜は眠りが浅く偏頭痛がきりきりと頭皮を突き上げた
取り越し苦労だなんて言われそうだとは思うのだが
ずっと借金に追われて夜逃げを繰り返してきた
気が付けば自分のまわりにはだれもいなくなっている

体の具合も心の調子の悪さに比例して低調に推移している
想像の世界に逃げ込もうとしても悪夢のような現実が妨げる
満員電車でもみくちゃになってくたくたになったぼろきれみたいに
ひととひとの隙間から放り出されてまた急ぎ足の群衆の間を歩く

あちこちが汚れているので早く体を洗えるところへ行きたい
汗ばんで悪臭が隠せない者同士が視線を避け合う路上にいて
ただひとつ浮き立つような思いにさせてくれるものが見つかった
ふと自分が空に浮かぶ飛行船になっているのだと思えてきた


by nambara14 | 2015-03-29 16:54 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)