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ある日



  ある日ざわめく心の影がすっと外部へと延びていくのに気付いて
  あわててそれを引き込もうとしたが つかみどころのないゴムかク
  ラゲのようにぐんにゃりして手におえない。 こんなに薄汚く役に立
  ちそうもない無用の長物など一刻も早く回収しなければならない。
  わき目も振らず無駄にも思える作業を続けてみたが 成功の糸口さ
  え見いだせぬまま時間だけが過ぎて行った。 ふとかたわらに何者
  かが立ち止まりこちらをじっと見ているのに気付いた。 視線の片隅
  には感じたものの知らぬふりをしてさらになんとかしなければとの
  思いが募り徒労のような作業を継続した。 時間さえ長物に溶け込む
  かと感じられるほど長い時間がたったと思えた。かたわらの者はあま
  りにじっと見続けるのでついそちらに目をやったとたんにすっとその者
  (たぶん女のようだったが)が駆け寄り長物に身を投げた。次の瞬間
  その者の姿は消え 続いて長物がしゅっとかすかな音とともに引っ込
  んだ。だが 心はそれからいっそうさわがしくなり これから襲ってくる
  であろう身震いのするようないまわしい光景にうなされはじめた。  
by nambara14 | 2012-11-07 10:55 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)