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額縁



藤田嗣治の偉大さに今まで気がつかなかった自分がなさけない

さすがに美術の専門家は藤田の正確な評価にたどり着いたようだ


戦争画をたくさん描いたという


おそらく死ぬか生きるかのぎりぎりの状況でうみだされるものが

人間の真実に近いような気がする

藤田自身も最高傑作だという自負をもってたらしい

帰国した藤田が従軍画家としての義務を果たしたことを責めることはできないだろう


戦争責任を引き受けるかたちで祖国を去った藤田はそのとき64歳

フランスでは、「亡霊が帰ってきたと報じられたそうだ」

田舎に引っ込んだ藤田を訪ねてくるのは近所の子供たちだけだったそうだ


やがてカトリックの洗礼を受け

小さな聖堂を建てそこにフレスコがを描いた

多くを語らなかった藤田だが

そのフレスコ画のかたすみに藤田自身を描き込んでいた


おそらく偉大な画家の描いた絵の前に立つとき

壁も額縁もキャンバスも すべてが消えうせ

生きたまま絵の内容が立体化して中空に飛び出してくるのだろう

藤田は晩年子供たちの絵を描いた

かつて乳白色の女たちを描いてパリの画壇の寵児となった画家が

やすらかなメルヘンの世界にたどり着いたのだろう


その絵を見ていると

たしかに子供たちは思い思いに藤田のまわりで過ごしたかと思うと

あっというまにそれぞれの家に帰ってしまうのだ

キャンバスは真っ白で呆然と立っている

また明日子供たちが遊びにくるのを待っているのだろう














by nambara14 | 2006-04-10 15:59 | 新作詩歌(平成18年発表) | Comments(0)