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えもいわれぬ



     えもいわれぬ


絵にも描けない街のずっと入り組んだあたりを
騒音が空耳を消してしまうあたりを避けて
深く入り込んでいく路地のどんづまり
細い道には劣化したコンクリートの階段があり
その両脇に不ぞろいな家々が立ち並ぶ中に
階段の途中という名の画廊があった
ぎしぎしと音を立てるドアを開けて
そっと中を覗いてみるがだれの気配もない
なにかに惹かれるように中へ入ると
奥は意外にふくらみのある空間で
壁に掛けられた絵だけが目立って見える
一枚目はまさにこの画廊を描いた絵に見える
二枚目は画廊の玄関
三枚目は画廊の内部
四枚目はまさに一枚目の絵
五枚目は二枚目の絵
全体で十枚ほどしかない絵を見ていくと
途中でどうしてもめまいがしていくる
どこから見ても混乱してしまう
しだいに息苦しくなるが
画廊の中にはいつまで経ってもだれも現れない
ひざがふるえて歩けなくなる
目の前の絵が相互にダブり立体的に動き出す
とにかく逃げるに越したことはないという
本能にしたがって
死に物狂いで外に飛び出す
走り出す拍子に階段で転んで
したたか脛を打ち腕をすりむいた
血のにじむ傷口に追い立てられるように
盲滅法駆け回るうちに
ぽんと開けた場所に飛び出した
よく見ると十枚目に描かれた場所ではないか
えもいわれぬ


by nambara14 | 2010-11-30 16:19 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)