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言葉にならない


   
    言葉にならない一日


晴れた空を見上げる目には青だけが広がる
連続的な視野を途切れさすことも
スケッチすることもせずに
生まれたがる声を黙殺し
声の前のもやもやを消し去ることもしない
曇りはじめた空へと視神経は対応するが
覗き込んだ瞳の奥には空洞が広がっている
それを名づけたときから
暗黒へと葬られる未熟児の群れ
雨が降り出したから顰めた眉に
ふたたび色をつけたがる目が光る
限りなく細分化された細胞には
鼻をうごめかせる分泌物があって
くしゃみをしても澄まして
嚢疱がいすわるままにしている
こうしてとりあえず自分の見える範囲の事物を
記述するまえに描写することを言い張る者
手を施す前に観察することに固執する者
それがどんなに逆行であると指摘されても
ある種の原始学を軽視することは許されない
もう夕刻のためらいは過ぎ去り
夜も十分に更ければもはや睡眠以外に
記録者を手招きするものはない
こうしてたった一日にせよ
言葉の誕生を遅らせることに成功したことを
謹んで文学者諸君に報告しておこう


by nambara14 | 2010-07-31 23:18 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)