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鏡の沼




    鏡の沼
    

ぬぐってもぬぐっても
浮き出して来る染み
鏡の底にはいくつものひびが走り
目をそらそうとしても
金縛りにあってむしろ見入ってしまう
ひび割れは加速し
見る目はますます微細化する
重力が沈み込む鏡の沼
繊毛がふいに膨張しはじめ
血を吸った蚊の群れが
数億万匹の唸りを上げる
極微な目の記憶は消えることはなく
身体はすでに死亡していても
鏡に魅入られた意識は血の色に染まって
爆発というよりは拡散あるいは蒸発に近い仕方で
六十兆個の部分がさらに細分化され
曇り切った鏡の破片に朦朧と写る幻影に
かすかな血の匂いを嗅ぎとる




by nambara14 | 2010-05-13 21:38 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)