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若奥様=詩



    若奥様

 
再開発の進む都心には
不ぞろいな建物が並ぶ
 
囲いの中ではクレーンが
あっという間にビルを壊し

更地は掘り下げられて
深い基礎が打ち込まれる

右を見ても左を見ても
高層ビルがそびえるが

ますます窮屈になっていく一隅には
小さな蕎麦屋がある

暖簾をくぐれば江戸の名残り
細い桟の入った障子が見える

細面の若奥様のよよとして
機敏な動作が目に入る

毎度同じ品を注文しては
店の中を見回してみる

常連らしい老若男女
せまいテーブルで舌鼓を打つ

こしのある蕎麦は歯ごたえがいい
秘伝のつゆはこくがあってうまい

勘定を払って店を出るとき
若奥様に見送られた

秋の日はやがてかげろい
蕎麦屋が日陰に落ち込んでも

後味のよい蕎麦屋の店に
客足の途絶えないように

若奥様がさりげなく
浮世絵の女に見えるように


by nambara14 | 2009-10-15 11:18 | 新作詩歌(平成21年発表) | Comments(0)