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2026年詩集等評


日原正彦詩小説『風子2』。教師の爽は教え子のともなが亡くなった後、動物病院で看護師の風子と知り合い親しくなる。ふたりは生命哲学者宙一郎の著書を読んで「生きてることは意味でも無意味でもない」と納得する。著者の詩小説という独自の美しい物語世界が魅力的に描かれる。

日原正彦詩小説『風子3』。生命哲学者宙一郎の講演会で知り合った風子と爽とさや。ふたりを含む四人がさやの詩劇公演『神の行方』に招かれて感銘を受ける。人間、生命、死、宇宙、神、永遠といった大きなテーマを取り上げながら親しみやすい詩的な物語として作り上げた著者の力量に称賛を送りたい。

大家正志小説『沌』。商業デザイン事務所で働いている主人公が仕事やプライベートの付き合いで経験する日常の雑多な出来事を、身近な場所や登場人物を巧みに操作することによっておもしろい小説に仕立てている。いつもながらの味わい深いストーリーテリングの手腕に感心した。

近澤有孝訳『ダンバー詩集』。1872年オハイオ州デイトン生まれのポール・ローレンス・ダンバー。黒人差別の残酷さと矛盾に触れた作品群のほかに繊細で素朴な面を持つ作品もある。近澤氏は忘れられつつある天才詩人ダンバーの詩に魅せられ、情報収集に戸惑いながらも遂に本邦初訳の偉業を達成した。

# by nambara14 | 2026-03-21 17:51 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)

(参考) 南原充士(なんばら・じゅうし)プロフィール

                    2026年3月現在 

1949(昭和24)年2月7日生、茨城県日立市出身、川崎市在住

1972(昭和47)3月 東京大学法学部卒

日本詩人クラブ会員

◇既刊小説9冊:

『エメラルドの海』『恋は影法師』『メコンの虹』『白い幻想』『血のカルナヴァル』『カンダハルの星』『喜望峰』『奇跡の歌声』(以上、Kindle版)『転生』(BCCKS)

◇既刊詩集17冊:

『散歩道』『レクイエム』『エスの海』(以上、私家版)

『個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方・ほか』(近代文芸社)『笑顔の法則』(思潮社)『花開くGENE』『タイムマシン幻想』『インサイド・アウト』『ゴシップ・フェンス』『にげかすもきど』『永遠の散歩者  Permanent Stroller』(以上、洪水企画)『思い出せない日の翌日』(水仁舎)『時間論』『滅相』(以上、Kindle版)

『レジリエンス』(思潮社)『遡及2022』『伝言』(Kindle版)

◇既刊訳詩集1冊:

『シェークスピア ソネット集』(洪水企画)

◇既刊句集1冊:

『魁』(Kindle版)

◇既刊歌集1冊:

『果てしなき空』(Kindle版)

◇ブログ:*『きままな詩歌と小説の森』 https://nambara14.exblog.jp/

     *『続・越落の園』https://jushi14.hatenablog.com/

Amazon著者ページː https://www.amazon.co.jp/stores/author/B00UBG2BMI

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e-mail: nambara25@hotmail.com


# by nambara14 | 2026-03-11 20:33 | プロフィール | Comments(0)

歌集『果てしなき空』紹介文

 この歌集『果てしなき空』は、わたしの初めての歌集であり、この二十年余に書いた短歌二千数百首を収めたものである。
 わたしは十代から詩を書き始め、三十代で小説に手を染め、五十代で俳句と短歌も試みるようになった。
 詩集は十七冊、小説は九冊、句集は一冊(電子書籍を含む)を既に出しているが、このたび歌集の出版にこぎつけることができた。
 わたしにとって短歌は微妙な位置づけにあり、日本の伝統的文学としての重みと魅力は否応なくわたしの心をわしづかみするものであると同時に、五七五七七という定型的韻律や歴史的仮名遣いや言葉や感覚の現代社会とのずれなどが抵抗を感じざるを得ないものであった。そのため、自分としてはできるだけ自由奔放に自分の書きたいことを書きたいように書こうとしてきたので、わたしの書いた短歌は短歌の枠をはみ出したものも多く含まれているかもしれない。(自分の書く物は、短歌というより短歌系と呼びたい気持ちもある)
すなわち、
できるだけ歴史的仮名遣いを使わず、現代口語を用いる。
五七五七七の各句の間を一字空けた表記とする。 
例(少年は 質問し忘れた 腐った蜜柑の すべてを捨てるべきか 一部をか)
言葉遊びやユーモアや現代用語を活用する。
 などを念頭に作歌に取り組んでいるので、伝統的な短歌のスタイルを尊重する歌人や読者にとっては戸惑いを感じるものとなっているかもしれない。
 そのような懸念は抱えながらも自分の信じるところに向かって書き続けてきた自分の短歌は現代の感覚をリアルに反映した言語表現となっていると思えばこそ、多くの現代人に読んで頂けることを願ってここに歌集を出版することにしたのである。
 なお、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中で多数の死者が出たという悲しい出来事はこの歌集においても特別の重みを持っていることを断っておきたい。
 是非一人でも多くの方々にこの歌集を開いていただいければ著者にとって無上の喜びである。

                                    南原充士

# by nambara14 | 2026-03-09 18:26 | 歌集『果てしなき空』 | Comments(0)


歌集『果てしなき空』無料キャンペーンのお知らせ

皆さま、このたびKindle版で初の歌集『果てしなき空』を発売開始しました。

2026年3月8日()17:00より3月13日()16:59まで無料キャンペーンを実施します。

この機会に是非無料ダウンロードしてくださるようよろしくお願いいたします。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0GRMV654B

                       南原充士


# by nambara14 | 2026-03-07 20:44 | 歌集『果てしなき空』 | Comments(0)

 

『エルヴィン・シュレーディンガー詩集

    恋する物理学者』宮岡絵美[訳・編]―――を読んで(感想)


 量子力学の基礎理論を構築したシュレーディンガーは、シュレーディンガー方程式やシュレーディンガーの猫の思考実験で広く知られているが、詩集を一冊出版したことはあまり知られていない。

 宮岡絵美は若い詩人で学生時代は生物系を専攻したそうだが、物理学にも興味を持っていろいろな書物を読む中でシュレーディンガーが詩集を出していることを知り、読んでみると濃いコーヒーやお酒を嗜むような心持で彼の詩情を楽しむことができ、本邦初の日本語訳に着手したとのことである。

 この詩集は1949年、シュレーディンガー62歳の時に出版された。二度の世界大戦を越え、激動の人生を歩んだ彼の作品は、一篇の中でさえ起伏に富んでいて、時に気高く高邁で、時に絶望を含む爛熟したポエジーを表現している。宮岡は、それをできるだけ簡潔な表現に映すように心がけたつもりだと述べている。


 この詩集は、ノーベル物理学賞の受賞者とは思えない甘く切なく物悲しくもある恋人への思いを率直に表した恋愛詩集となっている。

 第1章27篇はドイツ語で、第2章の7篇は英語で書かれたとのことだが、訳文はシュレーディンガーの抒情味溢れる恋心を見事に表現した翻訳詩となっている。ドイツ文学者吉川千穂、英語文学研究者滝口智子、インド哲学者金菱哲宏諸氏の協力を得たことで、この日本語訳が可能になったそうである。


 詩集に収められた詩篇はいずれも心を惹かれるものであるが、特に印象に残ったものは以下のとおりである。

「若い愛」

  あなたによってすべての世界が再び美しくなる(第1行)

「寓話あるいは放物線」

  願望や思考は

  もはや、我々が自然を究明するための実験のうちにある(第5~6行)

「蝶」

  朝、目覚めると

  恋人は穏やかに

  わたしの腕のなかにいて…(第2連第5行~7行)

「仮面舞踏会」

  彼女は今、ベールを押しやって

 蝋燭のほのかなきらめきのなか

  まっすぐに私のくちびるにキスをした――(第3連第1行~3行)

「報われる」

  計算するより、韻を踏みたい

  今、わたしは報われる(第3連第3行~4行)

「恋する者の秘密」

  無限の空間に散在する星々

 彼方にあって汝らは

 誰にもわたしの秘密を漏らすことはない

  ――その人の名は、ドロシー(最終連)

 

 


# by nambara14 | 2026-02-01 15:51 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)