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大谷選手の結婚を祝って


  『大谷選手の結婚を祝う』

春匂う ビッグ・ヴァレーの ファンファーレ
そっと寄せたい 祝いの言葉
ある線を 超えればひとり 彷徨いて
疎外のグラフ 手探りで描く
感覚は 説明不能 デリケート
依拠するものは ほかになければ
ただひとり 粋に感じる 色合いを
頑なまでに 守る筆先
冬去りて 裏の細道 ぶらつけば
ここから先は 春のきらめき
湧き出づる 秘密の泉 水汲めば
憂さを忘れて 力漲る
溺れ谷 涸れ谷魔谷 隠れ谷
ビッグ・ヴァレーに 谺が響く
月移住 一日一週 一月は
どんな暦に なるのだろうか
予想外 降り出す雨は 春雨と
傘もささずに 男を気取る
無口でも 黙り続ける 胸中は
すっからかんの 食料置き場
激流の 小舟に乗って 下り行く
映像の主 リアルの自分

# by nambara14 | 2024-03-01 13:10 | 南原充士の短歌(五七五七七系短詩) | Comments(0)

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# by nambara14 | 2024-02-21 12:20 | プロフィール | Comments(0)

冬と春のスパイラル


   冬と春のスパイラル


酔い覚めの 唯我独卑か 春の夢

世捨て人 眠る孤底の 水ぬるむ

夢先の 湖底に眠る 春の魚

飛び出して 名のみの春に すくむ足

冬の海 魚人となりて ひれを打つ

嘘ばかり 尽誠を吹く 春一番

化石似の アンコウ鍋に 時忘れ

疑似涙 仮病しりごみ 春芝居

身は魚類 心は春の 夢遊病

姿なき 命の声か 春霞

深海の 暗き淵より 春の泡

氷山の 真冬を染める 活火山

着て脱いで ゆるく立ち去る 冬の影

下手な比喩 春の嵐を 引き起こす

虚飾捨て 身を捨てて吹く 春の風

四月並 嫌う言葉よ 今二月

季節感 言いようのない 四季を去る

昨日春 今日は冬かと 確かめて

寒暖の 上り下りは 冬外れ


# by nambara14 | 2024-02-17 19:08 | 南原充士の俳句(五七五系短詩) | Comments(0)

2024年の詩集評

田中啓一詩集『愛の挨拶』。前詩集『弥生ちゃん』から2年余り。5年前に亡くなった妻のことが生き生きとだが寂しさと共に描かれる。ここまで一人の女性を愛し続ける気持ちにはただただ耳を傾けるしかない。ピアノの教師と生徒としての出会いから結婚した二人。「愛の挨拶」はエルガーのバイオリン曲。

吉田隶平詩集『青い海を見た』。人生の終わりを意識しながらも紡ぎ出される言葉はおだやかだ。静かに自分の人生を振り返りさまざまな出会いや出来事を思い出す。「何かをしなくてはいけないか//森の木が/陽の光を浴び/風にそよぐように//ただいるだけでは/いけないか」(「時を忘れて」全篇)。

# by nambara14 | 2024-01-15 13:15 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)


山田兼士『谷川俊太郎全《詩集》を読む』。昨年亡くなった著者の御夫人と御子息による刊行。谷川俊太郎という偉大な詩人の全詩集をコンパクトに紹介するという画期的な試みはいかにも著者らしい緻密で情熱溢れる努力の賜物で深い感動なしにページを繰ることはできない。改めて著者のご冥福を祈りたい。
# by nambara14 | 2023-12-28 11:08 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)