2012年 07月 17日
境界線
泥にまみれて逃げ回った後
藁の寝床で脳がふやけるほど眠った
疲れはとれたが腹が減って動けない
ふらつきながら戸を開けると
畑があってなにやら実っている
気が付けばキュウリとトマトを齧っていた
だれかの声がして食べるのをやめた
野良仕事のなりをした男が銃を向けている
無意識に両手をあげて立ち尽くした
行けと言われれば行くしかない
わずかに満たされた飢えと渇きが
火をつけた空腹が視界をあやうくした
夜になって今度は違う畑へ行った
とうもろこしもすいかもなんでも食い漁った
そのときがさごそする音が聞こえたが
腹が満たされる快感には抵抗するすべがなかった
持ち帰るためにと手当たり次第もぎとっていたとき
近くで威嚇する声が聞こえた
腕に抱えたまま走り出したとき
轟音が響いた どうと倒れた
手には作物がしっかりと握られていた
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by nambara14
| 2012-07-17 15:55
| 新作詩歌(平成24年)
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