<   2015年 03月 ( 10 )   > この月の画像一覧

飛行船


詩集「思い出せない日の翌日」から、もう一篇、ご紹介します。

           *
 
          飛行船


空を見上げると ぽっかり浮かんでいる物体が目に入る
そののんびりしたようすが見る者の気持ちを和ませる
ふと目をそらしている間にいくつかのビルの間を移動している
見る者はただ数歩歩いてまた見上げただけなのだが

昨日の夜は眠りが浅く偏頭痛がきりきりと頭皮を突き上げた
取り越し苦労だなんて言われそうだとは思うのだが
ずっと借金に追われて夜逃げを繰り返してきた
気が付けば自分のまわりにはだれもいなくなっている

体の具合も心の調子の悪さに比例して低調に推移している
想像の世界に逃げ込もうとしても悪夢のような現実が妨げる
満員電車でもみくちゃになってくたくたになったぼろきれみたいに
ひととひとの隙間から放り出されてまた急ぎ足の群衆の間を歩く

あちこちが汚れているので早く体を洗えるところへ行きたい
汗ばんで悪臭が隠せない者同士が視線を避け合う路上にいて
ただひとつ浮き立つような思いにさせてくれるものが見つかった
ふと自分が空に浮かぶ飛行船になっているのだと思えてきた


[PR]
by nambara14 | 2015-03-29 16:54 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)

思い出せない日の翌日


タイトル・ポエムです。

          *

  思い出せない日の翌日


日記をつけ忘れて一週間も経つ
なんだかんだと仕事に追われ
身内の面倒を見たり
自分の体調がすぐれなかったり

患いが切れ目なしに襲ってきて
わずかな時間の切れ端すら
空白の行に向かうことを
許されなかったと言えば

嘘になるぐらいの世過ぎだが
一昨日の記憶があやふやになっている
あるいはその前日のことだったか
前々日のことだったか

日付だけつけて詳細は書かずに
日記帳を閉じる
もし今日も日記をつけなければ
明日は思い出せない日の翌日になる





[PR]
by nambara14 | 2015-03-28 20:02 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)

ふうっ


詩集「思い出せない日の翌日」から、冒頭の詩をご紹介します。

                  *


    ふうっ      

ふうっ
隣からも ふうっ
顔さえ知らない

町外れで ふうっ
野原を過ぎて
山道で ふうっ
丘の上から
港が見える
大型船は
南半球へ向かう

急に曇ってきて
今にも雨が降りそうだ
わき目も振らず
下り始める

気がつけば 月
星も見える
こんなにたくさん
夜空に輝いている

瞬いて ふっ
流れて ふっ
この方向を
じっと見ることは
過去を見ることなんだね

視線が届くはずの頃には
どこにいるんだろうね



[PR]
by nambara14 | 2015-03-27 14:37 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)


水仁舎の北見俊一氏が、ブログで,詩集「思い出せない日の翌日」の装幀について写真付きで紹介してくれている。→本造りの水仁舎

[PR]
by nambara14 | 2015-03-25 11:12 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)



花咲いて 歳歳年年 変わりゆく 樹木の下の 人相似たり

人は人 花には花の 命あり 散るを知るとや 咲き誇る今

悲しみの 色は美し 喜びの 花咲く時を 輝かすとや



[PR]
by nambara14 | 2015-03-24 10:13 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

作戦

 

道行けば 春の嵐を 避けきれず

作戦は 練り直しても 花咲かず

離れ来て ひとり思えば 水ぬるむ

見えぬまま 去りゆくひとの 後ろかげ

なんのため すれ違いゆく 花の下



[PR]
by nambara14 | 2015-03-24 09:42 | 五七五系短詩 | Comments(0)


詩集「思い出せない日の翌日」の目次は、以下のとおりです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『目次』

ふうっ
和紙
移ろい
甘味
翌日
相似形
翩翻
同朋

雪の日の翌日
曇りの日の翌日
春一番の翌日
思い出せない日の翌日
戻らない日
顔のある日
生きている過去
週末
なにかを踏んだ日
なにかがわかった日
自分の中にいる自分
未来から見る今日
突然の知らせを聞いた日
キムチの範囲
違う言葉を話すひと
ベビーカーを押す母親たち
すれ違い
一難去ってまた一難
潮騒
代役
非常ベル
怒りの日
あきらめない日
睡魔
記憶

飛行船
共同生活者

古い家
丘の上から
今日の翌日
いつか来る日


[PR]
by nambara14 | 2015-03-22 19:32 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)

水仁舎のこと



 今回上梓した詩集「思い出せない日の翌日」の制作をお願いした水仁舎の北見俊一氏は、詩人でもあり、造本の専門家でもあり、本造りへのこだわりは半端ではない。控えめな人柄なのであまり知られていないようだが、類まれな芸術的センスの持ち主である。

 北見氏は、詩学社で多くの詩集制作に携わった経験があるとのことで、詩集作りのプロフェショナルと言ってよいだろう。そのブログ「本造りの水仁舎」はこちらである。→本造りの水仁舎

 北見氏の方針もあり、詩集「思い出せない日の翌日」は、ISBN番号をつけていないので、Amazonなどを通じて購入することができません。ご関心があれば、お気軽にわたしあてにお問い合わせください。よろしくお願いいたします。






[PR]
by nambara14 | 2015-03-22 10:43 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)



       『お知らせ』

 このたび、水仁舎より、詩集「思い出せない日の翌日」を刊行いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。水仁舎の北見俊一代表は、詩人であり、造本のプロでもあります。控えめながら、上品な仕上がりになっていると思います。日常のしみじみとした思いを記した詩集です。ご興味があれば是非ご覧下さい。

 お問い合わせは、小生(南原充士)あてにお気軽にお願いいたします。

                                          平成27年3月20日

                                              南原充士


[PR]
by nambara14 | 2015-03-20 23:03 | 詩集「思い出せない日の翌日」 | Comments(0)

激突



駅の階段を上ろうとしたとき
下りて来た乗客の眼鏡が
自分の額に激突した
眼鏡はがきっという音がして吹き飛んだ

男は「痛っ」と叫んで眼鏡をさがそうとした
混雑する乗客の足の間に落ちているのを
すばやく見つけてかけてみたが
フレームがかなりゆがんで見にくそうだ
幸いレンズは割れなかったようだが

一瞬立ち止まっていた自分を見た男は
急に体を低くして体当たりをしてきた
無防備な自分は大きくよろめいて
その場に転倒した
ようやく立ち上がったときには
男はすでに電車の中に消えていた

いつも冷静でいようと思っていたのに
思わず「このやろう」とつぶやいた自分がいた
もし今度こんなことが起きたら
どんなふうに対処したらいいか
階段を上りながら考えてみたが
なかなか答は見つからなかった



[PR]
by nambara14 | 2015-03-06 12:29 | 新作詩歌(平成27年) | Comments(0)