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ふわふわ


目をつぶって片足立ちをする
何分そのままでいられるか
数を数えるうちに膝がふるえはじめる
体が傾き始める
手を広げたりしてなんとか踏みとどまろうとする
ふくらはぎの筋肉が痛くなればおしまいだ
なにもしないのになにかが蓄積され
同じ姿勢を保たせない
目標に達しなかったので再挑戦する
おしいところで足をついてしまう
何度もくりかえしているうちに
乳酸のたまった筋肉はこらえきれなくなる
記録達成を断念してぶらぶらと歩きはじめると
弥次郎兵衛が空に浮かんで見える
よく見ると無人飛行機のようだ
あんな重いものがバランスをとりながら
支えもないのに安定した角度で空を飛ぶのか
いつのまにか自分の体も浮き上がるように感じる
自分の分身がふらつくこともなく空高く昇っていくのを
じっと見上げる

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by nambara14 | 2014-09-18 15:19 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

最近の詩集評(7)

          
伊藤浩子詩集「Wanderers」。女性の生理に根ざしながらも様々な知的操作を通して鮮明に描かれる悪夢のような情景は、生の謎を解き明かすこともできずに彷徨い続ける人間の宿命なのか、あるいは不条理に満ちた現実を詩によって再構成することによるカタルシスなのか?鋭く問いかけてくる。

森山恵詩集「岬 ミサ曲」。妖精の物語の世界に誘われたかと思うと、とてもシリアスな現実世界が現れたり、宗教的な厳粛さを感じさせたり、水底にひそんだり、言葉遊びが繰り返されたり、心象風景がめまぐるしく変化するが、それらを通じてひとの生きる姿や思いが不思議な透明感をもって描き出される。

北爪満喜詩集「奇妙な祝福」。父や母や祖母と過ごした過去の情景が、いとおしむように丁寧に描かれる。視線は自己の内面へと向けられ、なつかしさと同時に喪失感にとらわれる。ヘアーサロンでの美容師との会話で他者とのつながりを感じるデリケートな感性。わたしの誕生を祝福したのはだれだったのか?

海東セラ詩集「キャットウォーク」。行分け詩、散文詩、ひらがな詩、ビジュアル詩など様々なスタイルを試みる。鋭敏な視覚が対象の動きやかたちや色彩を精密にとらえる、点描画やモザイクのような手法が印象的だ。言葉の印象派と言えるだろう。客観的な描写の陰にほの見える人間の感情が確かに感じられる。

石原明詩集「パンゲア」。エロスと死がシュールレアリスティックに描かれる。愛し合う男女の体も解体されて絡み合う。タランチュラ、アンドロメダ、ラフレシア、サラマンドラ、アンドロギュノス、ブラックホール、パンゲア等想像力を刺激する多くの言葉やイメージや技法が独自の詩の世界を生み出した。

石原明詩集「雪になりそうだから」。だれかに話しかけるようなやわらかな文体で語られるのは、結局は人間の生であり恋であり死であり答えのない問でありノスタルジアであるようだ。ラプラタ河の土手の小さな穴からこの世界に目を見張っている仔ウサギ。そのような視点から丁寧に紡がれた物語だ。

有働薫詩集「モーツァルトになっちゃった」。モーツァルトの音楽に惚れ込み、その生涯をたどりつつ、後世のモーツァルト観もとりまぜた、熱狂的なモーツァルト讃歌となっている。恋人を見つけてはしゃいでいる詩心がほほえましくもありうらやましくもあるが、同時に、生きることの悲しさも感じさせる。

野田新五詩集「月虹」。満を持して刊行された第一詩集。父母や友人知人など今は亡き人々の思い出がしみじみと語られる。どこかさびしそうで人懐こそうな著者が、さまざまな人物のようすやしぐさや口調などを、親しみを込めつつユーモラスに描写すると、いつのまにか読者も深い共感にとらわれてしまう。

中村不二夫著「戦後サークル詩論」。「サークル詩」について、膨大な資料をもとに、戦後における活動を詳細にたどり、多くの詩誌、詩人、作品を紹介する研究書。ハンセン病や結核などの療養所、国鉄等の職場における詩的活動は、政治や社会との関わりにおいて文学を捉えようとする運動だと位置づける。

結城文詩集「夢の鎌」。太陽、月、庭木等を見ると自分が今日まで生きてきた過去を思い出すとともに不確かな未来を思う。若かった父母との思い出、ともに暮らした家族との情景、引越しの時に移植した木々のことなど、花鳥風月を思わせる穏やかな筆致の中で、「夢の鎌」は限りある命の大切さを痛感させる。
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by nambara14 | 2014-09-13 10:28 | 詩集・詩誌評等 | Comments(0)

プラクティス


あたまのてっぺんに芳香を醸し出すジェルを載せると
すこしずつ体の線に沿って落ちてくる
顎から首筋へと 胸からへそへと
下腹部から太ももを経て脛、足首へと
その間に体中の凝りは取り除かれ
やがてジェルは蒸発してしまう

これを何度も繰り返すと
ただジェルを想像しただけで
頭頂からゆっくりと垂れ落ちる感じがする
このごろ肩こりがひどいので
しばしばジェルを思い浮かべる
心の準備が不足していたり
集中力が足りなかったりすると
ジェルの量も少なく爽快感も不十分だ

きょうはいつにもまして体が重い
ゆったりとした椅子に腰かけて
できるだけ心を落ち着けて
何度も深呼吸をして
無念無想にリセットしてから
静かにジェルを思い浮かべる
はたしてうまくジェルが頭に載り
順調にからだを伝ってくれるだろうか?

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by nambara14 | 2014-09-09 10:52 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)

変換


泣きじゃくる子供の群れに向かって
キーを押す
病室から抜け出して後ろ姿しか見せない人に
キーを押す
ずいぶん昔のことを忘れられずにいる人に
キーを押す
今にも事切れそうなひとのそばにいるひとに
キーを押す
ページはめくりきれない
それでもキーを押す
乱雑に投げ出されてあるおびただしい枚数の写真が
一斉に裏返るように
錯覚でもいいと思いながら
なぜか笑い声が聞こえたと思えた箇所で
キーを押す

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by nambara14 | 2014-09-06 19:51 | 新作詩歌(平成26年) | Comments(0)