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液体



     液 体


あとからあとからあふれてくる液体
念入りに拭き取っても滲み出し
流れても流れやまない

逃れることはできないと
開きなおったつもりの夜更け
突然高熱と悪寒に襲われた

こんな辛苦には耐えられません
死んだほうがましです
さかさまに落ちる長大な物体の影

ここにはなにが生息しているのでしょうか
無意識の底にうごめく爬虫類のぬめりを
沈めよ沈めよ

艱難はだれかを玉にしたのでしょうか
乾いた光が届く窓辺に
多くの容器が液体をためていた
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by nambara14 | 2012-06-30 17:30 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

シャドー・プレイ



     シャドー・プレイ


朝一番でなぐりこみ 
我慢のならない野郎たち
ウサギみたいな口元で
もぐもぐしながら飛びこんだ

通りすがりの配達人
やまほど荷物を積み込んで
飛び出す重石に当てられた
すたこらさっさ逃げるだけ

あっという間に片付いて
戸口に並ぶ血だらけの
捨て置かれたままだれひとり
気にも留めずに日が暮れる

夜明けが来てもなにひとつ
変りはなくてふつふつと
リベンジ魂こみ上げて
シャドープレイに精を出す
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by nambara14 | 2012-06-30 16:52 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

記憶



     記 憶


空気のように包んでくれた
小さな声で呼びかけてくれた
先に立って道を作ってくれた
遠くから見守ってくれた

きれいな文字のカードをくれた
忘れがちでも気にしなかった
深い事情は知らなかった
あからさまにはしなかった

引っ越し先はわからないまま
取り残された庭には
雑草がおいしげるように
おびただしい思念がはびこった

風がいくつもの記憶をゆさぶる
あまりに鮮明なので胸が痛くなる
今頃どこにどうしているかさえ
知る立場ではなくなってはいても
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by nambara14 | 2012-06-28 19:08 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

シャーラップ



    シャーラップ


シヤッター下ろせ 紫外線
シャッターを押せ 赤外線

しゃしゃり出るやつぁ しゃくのたね
しゃべくる口は シャーラップ

シャットアウトは しゃらくさい
写楽を見切って すりきれて
しゃれにもならない しゃれこうべ
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by nambara14 | 2012-06-27 10:16 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

不死鳥

  

     不死鳥

 
動きやまない風紋 とどまる塵 時折の豪雨
突然 オアシスが現れる
素性の知れない鳥類が眠りから覚める
さえずるくちばしでキスを交わす

円錐形がどこまでも広がり
まったく交信できない次元との境界線を描く

大きな葉が舞い上がる
乱れた気流に乗ってもみくちゃになるが
どこかの稜線に着地する
葉脈が読み取られる

今は昔、と唱えながら
流星群の流れ落ちる天空
どこまでも翼を広げて
一羽の不死鳥が飛び立つ
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by nambara14 | 2012-06-26 22:28 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

流れのダンス



     流れのダンス



      濫觴に口をつけ

   よみがえった蝶は たちまち舞い上がる

      不規則な曲線を描いて

消え失せた方へと 後を追って 鱗片が飛び始める

水は波紋を成して 歌い始め 飛ぶものを導く

   雨粒が落ちて 小川の面を打つ

      なめらかな川底から

   薄緑の苔が生え 流れのままになびく

大きく蛇行するはずみに 川べりはえぐられ 水は跳ね出す

      たっぷりとした水量で

   魚もすばやく泳ぎ回り タニシやザリガニも憩う

      もちろん針の先がぼんやり浮かんだり

   甲高い声とともに ひるがえる小さな手もある

逃げようとするとき 流れは二つに分かれて 分岐点では戸惑う

   ふと大きなアゲハチョウが ゆったりとした模様を描くのが目に入る

風がひゅうひゅう 流れを波立てて 呼びかけるさなかに

      やがていくつかの川が合流する地点にさしかかる

溢れ行く水がうねりながら だれにともなく手を振り 蝶は再び見えなくなる 
   

  
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by nambara14 | 2012-06-22 18:02 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

振り子



   振り子


振り子が揺れる
眠気が襲う
振り子が止まる
眠気はとれない

振り子が踊る
地が揺れる
振り子が回る
空が飛ぶ

振り子が切れる
放物線
振り子のひもは
波打って

振り子の記憶は
揺れ続け
振り子を見た目は
夢の中
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by nambara14 | 2012-06-20 11:17 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

睡魔



    睡 魔


だれかが訪れる
舞いを舞うように
なにかが現れる
敷居を越えて

動きを追おうとする
追い切れない
正体を見ようとする
見きれない

ここを立ち去ろう
眠気を覚ますために
迷路に誘い込む
入り口から遠ざかるために

もがいているうちに
夢の切れ端がつながる
ふらつく足元が
海藻のようなものにからまる
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by nambara14 | 2012-06-19 16:30 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

MRI



MRI


ひずんだ視野であっても
補正することでまっすぐに
見ることができる

補聴器を調整して
すこしは声を
聞きわけることができる

手は知らないうちに
頭を叩き 過ぎ行く時とともに
猛スピードで数を減らしている

あまりの空腹で
食事を提供してくれたひとの顔も
涙ににじむ

あれはいつのことだったか
このまえ行ったのはどの病院だったか
薬の種類が多すぎる

磁気共鳴画像には
すかすかの脳が映っている
ここにもそこにも出血の跡があるという

現在の医学では
再生の可能性はゼロです
えっ、これはだれの脳だったの?
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by nambara14 | 2012-06-18 20:34 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)

あきらめない日



     あきらめない日


大きな熱気球がいくつも浮かぶ空を見上げる
草原には子供連れの家族も集まってくる
派手だねえ すこし離れたところから声が聞こえる
赤紫と藍は自慢の配色なのだ

風はやがて強まるとの予報だから
レースの駆け引きも見ることができるだろう
ゴンドラの中では汗まみれの時間が過ぎても
下からはふんわりと漂うように見える

飛び込め 背中から声がかかる
川にはすでに仲間がつかっていて
手を動かして促すしぐさが見える
震える足がどうしようもない

記憶の中のだれかがあきらめている
滑走路を走り出したグライダーに
いつかは乗ろうと思っていた少年
くすぶったまま時が過ぎてしまった

あしたは帰らなければならない
見納めと思ってしっかりと
空を見上げた時 脳裏をよぎった
そうだ熱気球をやろう
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by nambara14 | 2012-06-15 11:18 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)