<   2011年 12月 ( 13 )   > この月の画像一覧

パルス


   
    パルス


ガラスを拭く
軍用機のパルスだろうか
花が散っているように見える
汚れが人の顔に変わる

磨けば向こうの屋根がくっきり浮かぶ
隠密裏にも消しつくせない
うすぐらい土に白く降り積もる
笑っているのか泣いているのか

いっせいに風景が流れ始める
かろうじて濁流を逃れて
焦点を合わせきれないまま
画像は無のアーカイブ

ひとりぼっちの部屋で溺れる
任務遂行の報告を目指して
加速度は過ぎ去る
接触したのは夢ではなかったと


[PR]
by nambara14 | 2011-12-30 17:57 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

焼失



     焼 失


顔を洗えばのっぺらぼう
静電気が指先に痛い
はがれない吸盤
接着できないプラスティック

書きつける百面相
黒焦げの髪が臭い
とどめをさして食っちまう
さらさらとしたためる遺書

取り違える赤ん坊の泣き声
レバーの操作はだれがした
突然の腹痛にもんどりうって
なにひとつ貴重品はない

一枚の肖像画が燃え
類焼はまぬかれず
紅蓮の中でのた打ち回り
跡形もなく消え失せた


[PR]
by nambara14 | 2011-12-26 16:10 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

覚悟



    覚 悟


一か八か
武士に二言はない
三途の川を渡る覚悟だ
四の五の言うな
六でもない冗談はよせ
七転び八起きで
九死に一生
十把ひとからげ
一〇八の煩悩を捨て
一千万といえども我行かん




[PR]
by nambara14 | 2011-12-21 13:13 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

バトンタッチ


    バトンタッチ


かんたんには見えないように作ってある
見せてもすぐ引っ込めたり
見えないものが隠れていたりもする
作為すら証明できないのだから
疲れたら目を閉じて
タッチ

かすかな光の中に浮かび上がるクリオネ
ただよう流れに乗ってさまよい続ける
氷が割れる隙間に見え隠れする妖精
限りなく透明な歌声が聞こえるような気がする
うっかり見逃してしまった行方を追って
タッチ

突きつめれば望遠鏡の届かない領域の
時計が作動しなくなった時間帯の
甘いか酸っぱいかもたしかではない舌状の
雌雄が区別できない極小の
途切れる呼吸の先の蜻蛉のような目玉に
タッチ





[PR]
by nambara14 | 2011-12-20 13:13 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

舌先三寸


    舌先三寸


引っかかる無名類
引っかける鉤 
吊るし柿 
吊り橋を揺らして
とっかえひっかえ
好事魔多し
攻守所を変え
伸び続ける嘘八百
引き抜け舌を
タンシチュー 無料
大盤振る舞い




[PR]
by nambara14 | 2011-12-19 14:43 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)


        反



目の前で父が刺殺されるのを見ても
少年は成長する

物心つく前に母が駆け落ちしても
少女は成熟する

桜が咲いても鶯が鳴いても
弁当屋の前には長い列ができる

はじらいながら抱擁しても
眠気が切り離す

満月の明るさに
盗人は舌打ちをする

雪の夜を歩き続けて
名もなき者が倒れる


[PR]
by nambara14 | 2011-12-16 13:30 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

相似形


       相似形


木の葉の上の朝露がきらきらと輝く
風に揺られて葉は翻り
丸い水滴が下に落ちる
地面に浸み込んだ水は見えない流れとなり
遠く離れた岩の隙間より湧き出す

そこに鳥が集い水を飲んでは
またどこかへ飛び立つ
鳥が落としたしずくは
運の悪い旅人の頭に命中する
泉の水を汲んで洗い流す

下流の集落から水を汲みに来た娘が
よその村から狩りに来た若者と出会う
獲物をさし出されて戸惑い
水桶を倒したまま走り去る
若者はもう飲めないというほど水を飲む

ずっと時は下りすっかり開発された街に
おしゃれなひとびとが行きかう
ショーウインドウからポーズを決めているマネキン
広いブールバードを飛ばすスポーツカー
一級河川沿いに高層マンションが立ち並ぶ

河口付近で並んで流れを見やるカップル
どこからか見ている気配がある
だれかが空の上から見下ろしているのか
かすかな振動音がふたりをふるわせ
見上げた視線の先に虹が浮かぶ










[PR]
by nambara14 | 2011-12-15 14:16 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

シズル


     シズル


あたたかなご飯とみそしる
脂ののった鮭の切り身
ぱりっとした海苔
卵焼きに野菜サラダ
食べるしかない

最新流行のデザイン
えりすぐられた素材で
丹念に作られたスーツ
気品あふれるアクセサリー
ぴったりマッチしたバッグ
買うしかない

環境にやさしい電気自動車
まだまだ開発段階でも
ひとに先駆けて乗ってこそ
カーライフのだいご味がある
少々の出費は覚悟で
買うしかない

広大な土地に建つ瀟洒な一軒家
有名建築家に設計を委嘱した
インテリアは 飛び切りセンスがよく
相性のいい同居人が仕上げた以上
住むっきゃない

勢いがつけばなんだって
手に入り思い通りに手を加えられる
あれもこれもと思いつく限りの
趣向をこらしやりたい放題をしたあとは
巨万の富は膨らみ続ける
全額寄付するっきゃない





[PR]
by nambara14 | 2011-12-14 13:21 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

自粛


      
    いい加減


節電 しなくっちゃ
節水 しなくっちゃ
節約はみんなのモットー

ごみを減らし
排水を減らし
排ガスをきれいにする

カロリーも抑えて
車はひかえて
買い物も最小限にする

旅行も安近短
地味婚 地味葬
無理無駄ムラなし

おやおや活気がなくなった
みんな元気がなくなった
よろめかないのがいい加減
 



[PR]
by nambara14 | 2011-12-14 11:12 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)

日々是好日


    日日是好日


いやあ貧乏暇なしでねえ 
悩んでいる暇もないんですよ
朝起きたら食事もそこそこに
お得意さんを回りはじめて
売れるにせよ売れないにせよ
ゆっくり昼食などとれずに
立ち食いソバなどすすって
午後の仕事に精を出す
夕方おそく事務所に戻って
あれこれ整理をしているうちに
もう夜もふけてしまいます
大衆食堂でビール一杯と
日替わり定食で夕食をすまします
終電間際に帰途につき
家に帰れば烏の行水で
布団に倒れこみ
気が付けばまた朝です
毎日こんな感じで過ぎていきますが
はたしてこれ以外の生き方が
自分にはあるのでしょうかねえ



[PR]
by nambara14 | 2011-12-13 11:53 | 新作詩歌(平成23年) | Comments(0)