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サーフィン




    サーフィン


光降る海 浮き沈むボディ 
饒舌を飲み 喧騒を打たせ
熱線を きっぱりと跳ね返し
すべての音を消し去って

手前から向こうへ 潮は引く
向こうからこちらへ 思いは寄せる
サーファーの体重移動
沈黙のナイフが波を切る

呼びかける声は掻き消え
大きく振る手は水平線をつかむ
ズームアップされる顔は陰り

瞳だけが光を放つ
しなやかに反転するサーフボードから
あらゆる言葉がこぼれて



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by nambara14 | 2010-05-31 22:09 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

撫子



      撫 子


公園から聞こえてくるこどもたちの声
つややかな髪をはねあげて走り回る
ローラーの付いた靴で滑ったりして
タッチしようとする手と逃れようとする腰つき

ゆっくりと傾いていく日差しの下で
子供たちの影も長くなる
遠くから見守っていた親たちが
そろそろ迎えに来る頃だ

この子の頭をなんど撫でてきたことだろう
こんなに大きくなってしまって
もうじきその母と並んでしまいそうだ

すっかり暗くなった家路の先に
ふと子供が見つけた小さな花の名を
母は教えてあげられるだろうか




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by nambara14 | 2010-05-30 18:11 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

口筋運動


  てねてな


てねてなとっても

てててがほっても

わらわらきっても

よなゆなががって

はらひれほらふれ。


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by nambara14 | 2010-05-28 19:33 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

つぶやき



      つぶやき


薄く漉く 紙の繊維の 寄り合いて 強き力を 挫かんとせり

つぶやきも 積もれば思弁 ありがたき 香をたきしめ 座禅に耽る

一枚の 木の葉拾って 栞とす 今日の日記の 白いページに

風のまま 吹かれ行く羽根 人工の 翼を知らず 渦巻いて落つ

プランタン 髪をなびかせ セロファンの 透き通る先 空に消え行く 


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by nambara14 | 2010-05-27 10:58 | 五七五七七系短詩 | Comments(0)

なくて七癖



     なくて七癖


陰になる 道に引かれて 忘れ草

七癖を 八つ九つ 十曲がり

花咲いて 散り落ちしこと  記憶せず


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by nambara14 | 2010-05-26 13:35 | 五七五系短詩 | Comments(0)

光る朝




      光る朝


きのうは深夜放送に夢中になったので
寝たのはすいぶん遅かった
眠りの園はあいまいで毎夜ちがった国に行くみたいだ
自分の意志を持たない自分が飛び飛びのシーンに現れる
例によって何者かによって断崖絶壁に追い詰められる
盛り沢山の料理も食べようとすると消える
長い放尿は終わることがなさそうだ
目の前の唇もなかなか触れ合えない
場所を確かめようとするともやがかかり
時計は見当たらない
色彩は記憶されず
感情は混沌としている
前に見た場面に
じわっと空中へ浮き上がる
スーパーマンスタイルの自分が接続される
飛行態勢に移る自分が見える
突然乱れはじめ真っ暗になる画面
まぶたをくすぐる光が朝への出口を示す


 
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by nambara14 | 2010-05-21 11:02 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

帰らない色



    帰らない色    


ここにあったバナナどうした
そこにあったカステラどうした
あそこにあったマンゴージュースどうした

ここには黄色い影が落ちている
そこには褐色の匂いが落ちている
あそこには黄褐色のしみが落ちている

思い出された色が形を呼んでいる
思い出せない感触が温度をたしかめている
忘れてはいけない音が警鐘を鳴らしている

風が強まり雨が落ち川は増水した
逃げ遅れたペットが玄関の戸を叩く
ここにもそこにもあそこにも何色も帰って来ない



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by nambara14 | 2010-05-20 21:18 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

虫の領分




     虫の領分


いまどき ハエがリビングルームに舞い込むと
いてもたってもいられずに なにかをつかんで
追い払おうと空を切り空を切り思わず
台の上の高価なガラスの置物を叩き落してしまう

もうなにも分からなくなって むきになって
もっと大きなほうきのようなものはないか
物置まで行って古いテニスラケットを引っつかみ
引き返すと夢中でハエを叩こうとする

思い出すのは遠い昔にちゃぶ台を囲んで
食事をしている家族の間に揺れるハエ取紙
ちょっとした拍子に髪がくっついて
わめきながら風呂場で何度も洗っていた妹のこと

そういえばあの誘いへの返事はきていないし
あのメールは見てくれたのかあるいは
このまえそちらのほうが不機嫌になってしまって
とにかくなんだか音信が途絶えていて





 

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by nambara14 | 2010-05-18 10:49 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

お口の運動



    お口の運動


あえいうえおあお
かけきくけこかこ
ざぜじずぜぞざぞ

がーんといけ
どんくさ

ばばーんと張り倒せ
やっちまえ

わやや

らんざつしごく
ま、このへんにしとけ

やいややいやよ
らりらりらーん
わいわいわおあお


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by nambara14 | 2010-05-17 13:19 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

鏡の沼




    鏡の沼
    

ぬぐってもぬぐっても
浮き出して来る染み
鏡の底にはいくつものひびが走り
目をそらそうとしても
金縛りにあってむしろ見入ってしまう
ひび割れは加速し
見る目はますます微細化する
重力が沈み込む鏡の沼
繊毛がふいに膨張しはじめ
血を吸った蚊の群れが
数億万匹の唸りを上げる
極微な目の記憶は消えることはなく
身体はすでに死亡していても
鏡に魅入られた意識は血の色に染まって
爆発というよりは拡散あるいは蒸発に近い仕方で
六十兆個の部分がさらに細分化され
曇り切った鏡の破片に朦朧と写る幻影に
かすかな血の匂いを嗅ぎとる




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by nambara14 | 2010-05-13 21:38 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)