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一転



     一 転


きらきら輝いていた光
どこからやってきて
どこに消えたのか
ひとすじの道知る辺

なにかぼんやりとした
かたまりが浮きながら移動している
たたずむ者はすこし濡れるが
過ぎ去れば痕跡は残らない

梅の花が咲き誇る公園には
ゆっくりと歩いている老人や
元気のよい子供のいる家族連れがいる

やや肌寒く冷たい雨粒も落ちてきそうだ
きのうは青空に紅梅が映えていたが
明日に向けて光は隠れる見込みだ





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by nambara14 | 2010-02-26 11:57 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

季節の変わり目




         季節の変わり目


コートを脱げば 関わりもはがれる 季節の変わり目

内向きの 思いを返して日向を行く かびが落ちてすべすべ

まっさらの自分となれば 背筋を伸ばし おおまたで歩く

工事中の掲示あり みつまたの花は しばらくは見られない


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       (注) 575系(俳句系)で書こうと思ったのだが、書いているうちに

  上のようなものになった。

       おそらく自分の中にある575系への愛着と嫌悪がこんなかたちでの

  決着を呼び寄せたのではないか、と自分では思う。


  
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by nambara14 | 2010-02-25 11:15 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

春のスケッチ



     春のスケッチ


眠っていた猫が ぐいーんと 伸びをする
窓際で 日差しをいっぱいに浴びながら
隣の猫のことを思っていたのか
おなかがすいたので目が覚めたのか

気づかぬふりで部屋の掃除を続ける
ぶいーんと 掃除機を フローリングに滑らせる
洗濯物が窓の外で翻る
白い下着 ピンクのシャツ オレンジのバスタオル

ソファにすわると 猫がすりよってくる
みゃーと 鳴く声の向こうに
すこし淫らな視線がちらついている

日が暮れて きいきいとベランダで鳴いていたのは
子供のコウモリだったのだろうか
はるか下の地面に落ちていったのだったが・・・

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by nambara14 | 2010-02-24 14:15 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

無心



      無 心   

地虫をじっと見る
小さくて黒くて転々とするもの
細長くて半ば地中に隠れているもの
逃げ遅れるとくるりと丸まってしまうもの
地虫に食われている微生物
微生物に食われる原生類
空を見上げることさえ忘れて
小さな地面を見続ける
列をなして歩いてゆく地虫が見えなくなる
闇の中にかすかに動く虫がいる
遠くでドローンが爆弾を落としているらしい
倒壊した瓦礫の下に生き埋めになった被害者のうめき声が
かすかに聞えてくる
ケシ畑には原色の花が咲き乱れているらしい
地虫より図体がでかすぎるのを除けば
無心



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by nambara14 | 2010-02-23 11:59 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

かゆい



       かゆい


心因性のストレスを吸着して排除できる薬剤が開発された
どろっとしたゲル状の薬液を一日一回服用することで
一週間はゆったりとした心持で過ごすことが出来る
咳が出たときは胸に膏薬をはればさらに効果が上がる
湿疹が出たときは塗り薬を塗ってうすく伸ばせばよいらしい
鼻炎がひどいときは鼻腔いっぱいに噴霧薬を吸い込むといいらしい
いままでなにごとにも集中できなかった男も
実にすがすがしい気持ちと体調で
企画から開発から生産まで一貫した仕事をこなし
めきめき業績を上げて昇進し収入も倍増した
この前向きの姿勢は生まれて初めて経験したものだ
女性にも出会いが増えて婚約もした
はじめて買った宝くじにも当たった
笑いがとまらない男

ある朝 男はおおきなくしゃみをして目が覚めた
背中がかゆい 起き上がると 咳き込んだ
かゆい かゆい
手当たり次第に 薬を飲み塗り吸い込んだ
これでよしと思って出勤の支度をしようとしたが
いっぺんに襲ってきたかゆみと咳はおさまらない
妙薬が効かないのはなぜか?
のたうちまわる男の問いかけはあたりに響いたが
だれも見向きをするものはなく
気絶寸前の男だけが体中をかきむしるのだった


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by nambara14 | 2010-02-22 11:32 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

うさぎのダンス



    うさぎのダンス


手を差し出す
差し出す手と 引っ込める手

足を踏み出す
踏まれるままの足と 引っ込める足と
踏み返す足

頭突きをする
気絶する

目が覚めると だれもいない
リベンジだ

声を上げる 走り出す
何の当ても無いが
じっとしてはいられない

町外れ
日が暮れて おなかがすいた

敵の顔も ぼんやりしてくる
とぼとぼと 帰る

影同士で あいさつする
おやすみ

夜が更けて みな寝静まる
夢の中で うさぎがダンスをする
手をつないで輪になって踊る

朝が来れば うさぎは消える
うらみもしかえしも 
もうなんにも覚えていない


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by nambara14 | 2010-02-17 14:59 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

至極超異的



       至極超異的


とことん考え抜いた痕跡は足元の土を掘れば容易に採取可能だ
化石や骨や岩盤など 隠しようもない手がかりを与えてしまう
わずかの想像力さえあれば この惑星の歴史を遡ることができる
問題は語り手の観察に基づく記載であることだろう
彼はなにを見 なにを聞き なにを理解できるかうすうす感づいている
肉眼では見えないものでも機械を使えば見えたと同様の解析が可能だ
五体を失ったときから観察は停止した
狭義の歴史は空無となり無機物の現象が流れるままになった
だれも時を計測しないので過去も未来も区別が困難になった
そればかりかここがどこかということさえ確定されてはいなかった
あるせまい場所と時間が与えられて初めて理論は構築されたのだった
止まることのない時間を止めて作った幾何学
ひとつの宇宙ですら鶏のように追っ手をかわしてしまう
もし万物が同時に勝手な方向に異なる膨脹率で伸縮したなら
急ごしらえのちゃちなスケールでは測れなくなる
仮定を山のように積み重ねて近似値をえいやっと継ぎ合わせて
おおざっぱな世間はこのうえなく便利になったが
どこに袋があるか トンネルがあるか 異界があるか
砂漠の中の一粒の砂金よりも 見当のつきようもなく
目隠しされ 羽交い絞めされ ぐるぐる回されて 放り出されて


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by nambara14 | 2010-02-16 15:34 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

極超異的



     極超異的


どうにも感受しえない宇宙があるとしたら
まったくなんの関係もなく生きている別の時空
なにかのきっかけで接触して消滅するとしたら
警戒を怠ってはいけないが回避する術はない
考え付かない時空 物理の法則の当てはまらない
想像もつかない素粒子 生物と無生物 存在と無
遺伝子 DNA 細胞 再生産 生老病死
一切をリセットして 否定して かき消して
虚空 虚無 虚仮へと 空無 空疎 空へと
おそらく固有の時空から生成する素粒子ごとの法則があり
それぞれの構造にそって理解が可能になる
滅茶苦茶を突き詰めようとする数学者から落伍は始まり
非 不 未 余 逸 無 奈奈 耶 苦 渋
凶器を手にして 乱射する群衆が 湧き出して来る
わけがわからないことを明らかにしようとする流行性感冒
逃亡を許さない看守たちさえ朦朧としてとどめがたい形
下手な考えを積み重ねて取得した博士号を見せびらかす物理学者の
作り過ぎた表情のみが無限大に広がるのを尻目に
アイデンティティを喪失した穴はまたすぼみねじれ飛び去り 
予想できない次元にまっさらな穴が出現するというような時空のゆらぎだけが
確かなものに見えてくる



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by nambara14 | 2010-02-15 19:44 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

超異的



      超 異 的



第一霊界の一万年 地獄さえ退屈を紛らせえぬ
すべての感覚が不変であることで 住人どもには
耐え切れぬ 見る無限 聞く無調 触れる無辺
切望されて 創造された第二異界への 入界資格
三回サイコロを振って 目の合計がゼロになった上
阿弥陀くじで はずれを引いた上 
百回のじゃんけんで 一度も勝てなかった者のみが
隠滅の契機を与えられる
夜明けの頃合に 餓鬼どもの寝静まった寝床をそっと抜けて
永劫の瀑布の滝壷へと落下する
背中に張りついた妬ましい視線を拭い去るようにして
第二異界へと行き着くと
おお、言葉には尽くせぬ様相の 迎えの者が待っている





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by nambara14 | 2010-02-13 16:21 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)

微分



       微 分



岩角を かする北風 尖る乳

片目ずつ 望遠鏡と 顕微鏡

肉感を 霊感に着せ 外出す   



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by nambara14 | 2010-02-12 15:39 | 五七五系短詩 | Comments(0)