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秋詠




    『月の知恵』

たそがれの おじさんだって 秋が好き

食欲の 秋は来たれり メタボ行く

デザートは スモールポーション 小さい秋

見上げても 止まない秋雨 まぶた濡れ

どうせなら ほめておくれよ 秋の月

率直も いいよ褒めるが 月の知恵

中秋の 名月ひとつ 人ひとり



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by nambara14 | 2007-09-28 20:31 | 五七五系短詩 | Comments(2)

コスモスを愛す


    コスモス畑


四十万本のコスモスの花を 秋の雨が濡らす
農地から転用された花畑で 一面のコスモスが風雨に揺れる
赤や紫やピンクや 色とりどりの花が不揃いに咲いている迷路の中を
泣き濡れて 走り過ぎていくのはだれだろう

はしゃぎまわる子供たちは 雨に濡れるのを気にしない
杖をついた二人連れを追い越し 犬をつれた女性を追い抜き
赤ちゃんを抱いた家族連れをかわして どんどん前に進んでいく
それでも ひとびとの後姿はどこまでも続いている

走り過ぎていくひとは コスモスの葉群れに 姿が見えなくなる
どこかに隠された通路があって 見えない入り口があるのだろうか
一瞬 お花畑が傾き 迷路のどこかが大きく開いたように見えた

七年前に亡くなったひとの面影が浮かんでくる
幽明の境に紛れ込んだのだろうか いつしかコスモス畑は四次元となり
彼もまた透明の気配となって 生者と死者の再会を遂げたのだろう


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by nambara14 | 2007-09-24 15:03 | 新作詩歌(平成19年発表) | Comments(0)

弁慶橋


      弁慶橋


都心に架かるこの橋は 浮世絵に描かれたような様式が目を惹く
だが実は昭和の終りにコンクリートと鉄で造られたものだそうだ
橋のかたわらにある目立たない立て札には
この橋の生い立ちが詳しく記されているのでそれとわかる

その前には木の橋だったそうだ
別の川に架けられていた橋の部材を使って架けられたらしい
橋の名前は三代にわたって引き継がれてきた
高層ビルと高速道路が入り組む中で いくつかの時代が接木されている

川は流れ 人はすれちがい 時は過ぎて行く
地図は書き換えられ 読み取れない地名は過去に眠る
掘り起こした化石や土器のかけらはなにを語るのか

いま台風が来て 水かさはどんどん増していく
見上げる視線と 見下ろす気配が交差するところに立つ橋
溢れそうになるのは一体何なのだろうか

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by nambara14 | 2007-09-13 16:07 | 新作詩歌(平成19年発表) | Comments(0)

スポボイダム老人の臨終


    スポボイダム老人の臨終


アンコール曲も終り 会場は万雷の拍手で満たされた
ピアノの巨匠はやや猫背で 子ねずみのようにステージを行き来する
ブラーヴォが叫ばれ スタンディングする者も相次いだ
熱狂はいつまでも鳴り止まないと思われたが・・・

老人は目をつぶったまま 演奏されたソナタの情景を想い起こしていた
( どこか田舎町で自分よりずっと年下の少女に恋して破れたり
夜更けに月の光の差し込む部屋でラブレターをしたためたり
狂おしい熱情を抑えきれずに嵐の中をさまよったり・・・ )

そのとき何者かが老人に声をかけた 老人は何も答えなかった
さらにその者は老人の肩に手を触れ すこし揺さぶりながら声をかけた
次の瞬間 会場には小さな悲鳴が聞こえ 何人かの者が走り出した

( 最後のソナタには名前がない この自由闊達な心境にふさわしい曲名は
「自由奔放」か「解脱」か「悟り」か なにがいいだろう・・・?)
・・・老人はそのとき既に息を引き取っていた (後でわかったことだが)


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by nambara14 | 2007-09-06 13:22 | 新作詩歌(平成19年発表) | Comments(2)

夏の終り


   つくつくほうし


八月もおわり。 
小雨まじりの昼。 
いつもの散歩コース。 
おやおや 蝉の声。 
 
見上げる枝のなかほど。 
小柄な胴体。 
透明な翅。 
わが目がめずらしく姿をとらえた。
 
写メでは写らない大きさ。 
鳴き声なら写りそうだが・・・。 
それでもシャッターを切る。
 
声を見、姿を聴き、 
飛び去った先を思う。 
《つくづく 放心。》 

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by nambara14 | 2007-09-01 19:53 | 新作詩歌(平成19年発表) | Comments(0)