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ひとはいかに生きるか?



ひとりの男の子の誕生
産声をあげる
力の限り泣き叫ぶ
母乳を与えられ
眠り
むずがり
お尻をよごし
また泣く

じっと観察していると
この赤ん坊の行く末が
気の遠くなるくらいの
未来であると感じる
インフルエンザや難病に
かからなけりゃいいが・・・

立てるようになると
変なところに落ちなきゃいいが・・・
毒物を飲み込まなきゃいいが・・・
包丁で怪我をしなきゃいいが・・・

台風で家を流されても
いのちは助かるだろう
地震で家を焼かれたら
いのちは助かるだろうか・・・
津波で一瞬にしてからだをさらわれないだろうか

無事小学校に入学できたとする
教科書を音読する
体育の時間になんとなくからだを動かす
どんどん背が高くなり
塾に通い
私立中学校への入学試験を受ける

そのとき隣国からミサイルは発射されないだろうか
生物兵器はばらまかれないだろうか
核兵器はとどめをささないだろうか

無事に中高一貫校を卒業して
大学を受験する
かろうじてどこかの大学に合格する
学問研究に没頭し
スポーツを楽しみ
コンパにも参加する
ガールフレンドもできるかもしれない
さまざまな欲望に振り回されるかもしれない

大学を卒業してとある会社に就職できるかもしれない
初任給をもらって感激するだろう
仕事も覚え 地位も上がり
結婚を考える
直感で気に入った女性と一緒に暮らし始め
やがてできちゃった婚ということになる
いつのまにか子供が生まれ
世代が一巡する

このようにありふれた人生にも
連続した長い時空がかかわっている

戦争に征かずにすんで
交通事故にもあわず
災害をも潜り抜け
殺されもせず
襲われもせず
不治の病にも罹らず
五体満足に生き延びる

人生80年時代だ
老衰でやすらかに息をひきとるまでには
無数のステップがある

世の中はそういう無数のステップの安全を保障することが必要だ
国家というのもはそういう重要なシステムであり
元首はそれを的確に運営する責任を負っている

そのように個人の人生と
国家というものの関係を
きちんと整理して理解するようにさせることが
教育の基本だろう
国民に対する義務だろう

そして個人もまた
真剣に学ぶ義務を負っていることを
認識すべきだろう














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by nambara14 | 2006-04-24 15:12 | 新作詩歌(平成18年発表) | Comments(0)

額縁



藤田嗣治の偉大さに今まで気がつかなかった自分がなさけない

さすがに美術の専門家は藤田の正確な評価にたどり着いたようだ


戦争画をたくさん描いたという


おそらく死ぬか生きるかのぎりぎりの状況でうみだされるものが

人間の真実に近いような気がする

藤田自身も最高傑作だという自負をもってたらしい

帰国した藤田が従軍画家としての義務を果たしたことを責めることはできないだろう


戦争責任を引き受けるかたちで祖国を去った藤田はそのとき64歳

フランスでは、「亡霊が帰ってきたと報じられたそうだ」

田舎に引っ込んだ藤田を訪ねてくるのは近所の子供たちだけだったそうだ


やがてカトリックの洗礼を受け

小さな聖堂を建てそこにフレスコがを描いた

多くを語らなかった藤田だが

そのフレスコ画のかたすみに藤田自身を描き込んでいた


おそらく偉大な画家の描いた絵の前に立つとき

壁も額縁もキャンバスも すべてが消えうせ

生きたまま絵の内容が立体化して中空に飛び出してくるのだろう

藤田は晩年子供たちの絵を描いた

かつて乳白色の女たちを描いてパリの画壇の寵児となった画家が

やすらかなメルヘンの世界にたどり着いたのだろう


その絵を見ていると

たしかに子供たちは思い思いに藤田のまわりで過ごしたかと思うと

あっというまにそれぞれの家に帰ってしまうのだ

キャンバスは真っ白で呆然と立っている

また明日子供たちが遊びにくるのを待っているのだろう














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by nambara14 | 2006-04-10 15:59 | 新作詩歌(平成18年発表) | Comments(0)