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詩集「ラブ・シンドローム」



 詩集「ラブ・シンドローム」(昭和57年、個人誌「アレーテイア」に掲載)から、抜粋。
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      ラブ・ダイビング


夏の海はまぶしくサーフィン乗りの男を輝かせ
女は見られたくて抱かれたくてうずうずする

求められたい女を 男が求め
おぼれたい男が 女に溺れる

それでよい かまうものか 
かまわないわ 遊びましょうよ

飛び上がった男のグライダー
タンクトップのよく似合う女をさがす

さて あの海岸通りをさっそうと歩いているのが
彼女だとすれば

男は敢然と扉を開け
一気に空中に飛び出す

ーーーどうか うまくパラシュートが開き
彼女の前にナイス・ランディングすることを!

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    画 布


真昼の光に挑まれて
絵筆を持つ手に力が入る
影はうすみどり
滑らかな壁にもたれる

はじらいもなく服を置くゆり椅子の上
そこにかすかに嗅ぎとれる移り香
女の手は腰にそってすべり
乳房は窓に向かってそりかえる

ナイフを持つ手に力が入る
真っ赤な塗布を切り裂いて
汗という汗は吹き出す
輪切りのレモンの空から一切れ
紅茶にそえて
わたしの真昼は休まぬ

春日たちまち不埒を覚え
このアトリエに血塗られる
おまえはわたしの生贄の画布







by nambara14 | 2007-07-01 16:32 | 詩集「ラブ・シンドローム」 | Comments(0)