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突然の知らせを聞いた日



     突然の知らせを聞いた日


新緑がまぶしい山道を
鼻歌を歌いながら歩いていた時
携帯が鳴って
知った声が
早口で告げた言葉は
理解するより早く
感じ取れた

これは言葉でしかないだろう?
取り消せるだろう?

一瞬にして色を失った景色の中を
呆然とさまよいながら
あとからあとから浮かび上がってくる
映像を処理できなくなって
立ちくらみ
うずくまり
目をつぶる

言葉は事実を告げた
これからはじまる未来を暗くする
入れ替わりのきかない配役
リハーサルのない本番
逃げられない

山を下りると
下から影が登ってくる
突っ切ってふもとへ着くと
すっかり夜だ

旅館をキャンセルして予約のない特急に飛び乗る
頭の中は大騒ぎのまま
しなければならない事柄をメモする
となりの席では缶ビールといかのげそで
大声で話す男たちがいて
後ろからはなにやらぼりぼり食べながら
甲高い声で笑いこける女たちの気配がする

窓から見える外と内の景色は重なり合い
ごーっと闇を突きすすんでいく

明日の約束はキャンセルだ
なにもかも突然起きた
予想はしても覚悟ができないから
そういうことにしておく
by nambara14 | 2012-05-07 19:36 | 新作詩歌(平成24年) | Comments(0)