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秋の気配



    秋の気配


十五夜の言葉に夏をすこし忘れて
月の出る時刻には家に帰って
小芋という和菓子を薄茶とともに
味わいながら季節の移ろいを眺めてみよう

よきひとがやや遠慮がちな居住まいで
影のように慕い続けてきたものは
数百年前から受け継がれてきた
わびさびの感覚のように見えても

内にはどれだけの炎を燃やしているのか
とうに思い至らない穏やかな日々を過ごし
上辺の泣き笑いの表情やしぐさだけで

それ以上聞くこともねだることもしないで
月影が明るくふたりの顔を照らし出すとき
戸惑う気持ちを募らせるのは秋の気配



by nambara14 | 2010-09-22 14:09 | 新作詩歌(平成22年発表) | Comments(0)